一葉の写真から (その1)
暑い暑い夏
2023年の夏は、leicaの古いレンズとともに過ごしました。
毎日とてつもなく暑くへばりそうになりながらも、カメラが1台入るだけのカバンを肩から下げ東へ西へ。
ライカ1台にレンズ1本、その日の気分でレンズを選び似合いそうな場所へと出かける日々です。
(たくさんの作品を撮影し、その一部はホビージャパン社から刊行されたムック本「Cameraholics extra issue Leica Lens Masterpiece」に掲載されています。
表紙はじめ、かなりのページ数に作品提供や文章を寄稿、機会があればご高覧賜りたく存じます)
難儀した超広角レンズ
空にモクモクと入道雲があらわれたある日、私は迷わず広角レンズをつけて家を飛び出します。
装着したレンズはLeicaのスクリューマウント時代の超広角レンズ・SUPER-ANGULON 21mm F4。対角90度、気持ちいいくらいに広々と写るレンズ。
シュナイダー社の設計で4群9枚構成、対象型の非レトロフォーカス。
この文言だけでマニアは痺れますね。言わずと知れた銘レンズでございます。
が、この構造がデジカメでは不利に働き、周辺部は極端な光量落ちとマゼンタ被りがひどい。また、現代レンズのようなハレーション耐性は望めず、真夏の炎天下では内面反射のフレアが薄くベールを作ることもありました。
その描写と、どこまでも直線は直線のままという驚異的なパースが織りなす世界は、ハマれば過ごすだぞという予感はあるものの、なかなかハマりません。非常に難儀いたしました。
不意に気付く非日常性
背面液晶に画像を表示させ、何枚かチェックをしてみルものの。。。やはり天候の違うタイミングで出直すかと考え始めたところで、ハッと気がつきます。
「遠くの一点に引っ張られていくような脅威のパース感」と、「ハイライトがふわっとする不思議な描写」、眼前に広がる肉眼で見た風景とは別の「白日夢」とも言うべき景色が写っているのではないだろうか。
こうした気づきは大切で、レンズを活かす、つまりオールドレンズとの格闘は新たな視座の獲得につながる訳です。
被写体は向こうからやってくる
「白日夢」と言うキーワードを得て、私はまた歩みを進めます。現実と何かの狭間、非日常的、過去と現在の壁が消え時間軸が歪むような、などなどつらつらと夢想しながら多摩川土手まで。
多摩川土手はいわば私のホームグラウンドです。光の在り方、見過ごされがちだが美しい場所、
自分の視座が定まりますと、自ずと被写体によく目が行くようになるものです。漠然としたものから無意識に上手な選別ができてくると申しましょうか。あとはいつそのチャンスが来るか、そして逃さず撮り切れるか、です。
その日は、偶然にも写真の神様が味方してくださいました。
時空を超えてやってきたような昔っぽい小学生たちが自転車に乗って目の前に!
来た!と私は目を輝かせます。ファインダーはのぞかず、ピントは目測、体に深く染みついたライカのスナップ法で一瞬をとらえます。
シャッターチャンスは逃さず、1ショット。