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一葉の写真から (その2)

前の投稿からの続きになります。
一葉の写真が次の道へと誘ってくれます様子をお話ししましょう。
(前の記事をお読みになっていない方は、以下、ご参照ください!)


2023年秋

2023年秋、私は写真展の準備をしていました。
写真展とは、冬に始まる「ギャラリー冬青」さんでの個展です。
冬青さんは我が国のメジャーなコマーシャル・ギャラリーの一つであり
私にとってもご指名は名誉あること、ギャラリストさんと深く話し合い良きものにしようと意気込んでおりました。
 
ギャラリー冬青さんは、銀塩プリントや古典技法にこだわった運営をされています。得意分野なので、まぁ言ってみれば如何様にもなりそうなものですが、そうは問屋がおろさず。。。

一番の敵は私自身

古典技法。「熊野」のプラチナプリントで開催するのが最適かと。ただ、あいにくちょうどヨーロッパの大使館経由で海外大規模展示の話が進んでおりまして(後にこれは訳あってお断りすることになってしまった)。銀塩作品でまとまったシリーズは「沖縄」「バリ」と何度も発表したテーマばかりですし、未発表ならまだしも、これだと新鮮味もなくギャラリーにもご迷惑になそうな気がしてなりません。
 
思案の末、「熊野」シリーズをデジタルデータから銀塩バライタ印画紙へコンバージョンする方法はどうかとご提案。銀塩プリントの技術的なところは写真作家・森谷修の評価ポイントですし、新たな技術開発はやりがいにつながると考えました。了承いただき企画は無事にスタート。
 
が、アナログとデジタルには深い深い溝が。。。技術的にデータから銀塩プリントに焼き付けるのは古典技法をやる身からすると不安定要素が減る分だけやりやすい。しかし試してみて驚いたのが「綺麗だがパワーが激減」と言う現実。。。正確に言えば及第点を超える出来ではありました。パワーなどという謎の自分にしかわからない何かに囚われてしまい。自分というものは本当にめんどくさいものです。(パワー云々ですが、これは後に克服、溝の認識と解決法は別途記事に)
 
迫り来る残り時間、一定水準の美しさは表現できている・パワー不足というのは私だけが思うことかもしれない・このまま制作するべきだ、なのか、未発表別テーマでネガから暗室プリントをするか。。。

不意に目に入った一葉の写真


「これだ!」。
小さい頃から通い詰めた多摩川土手、新しいカメラやレンズを買うと必ず試写する場所、毎日通った保育園の送り迎えで通った河川敷、気負いのない自分の「らいしい」写真がたくさんある。未発表の銀塩ネガも多数あり、過去から今へ至る変化や逆に変わらぬものが浮き彫りになるかもしれないとの思いもありました。
 
私はすぐに「多摩川左岸、海から10km」そんなタイトルをつけ仮組みをしてみることにした。上記の写真が撮れていなかったら、展示をしようとは思わなかったかもしれません。どうしても「今」撮ったものを入れたい切なる欲求。ベクトルが未来に向かうことが、私にとってとても重要なのだと再認識です。

夏の日に、未来の世界を担う子どもたちが元気に自転車で走る、それはどこか過去の自分たちも想起させ、もっと言えば、眼前にいるこの子たちは実は幻だったのではないかという(白日夢の話につながる)思いもよぎります。
 
たった1枚、それが次の扉を開けることに。
 
さらに煮詰めて、ギャライストのお力も借りて開催に漕ぎ着けた写真展、
次回はその話を書こうと思います。
 

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森谷修_photographer
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