2021/12/27 コンサルティングのためのリベラルアーツ
【人生を変える!社会を変える!~これからのコンサルタントに必要な知識とスキル~】
12月10日に、『人生を変える!社会を変える!~これからのコンサルタントに必要な知識とスキル~』と題して、3人の理事が話した内容を3回にわたってご紹介します。
3回目は、越境を旨として、現場を大事にしているアルスコンビネーター・矢作邦彦さんの基調講演「コンサルティングのためのリベラルアーツ」です。
何でもありの時代だからこそ、何をやるのか、やらないのかを自分で決める自己決定力が重要です。
社会の仕組みと、自分の業界、自分が変えることができることの差を把握できているかどうかが大事です。今この社会でこんなことをするとこうなるということが分かっていないと大炎上につながります。
何が流行るか、何が炎上するかが、ここ最近変化しています。このような変化は、一つの業界にいると見えなくなるので、外部のコンサルタントに関わって、他の業界のことを知る方が良い時代になって来ています。
カウンセリングは過去に向いていますが、コンサルティングは未来に向いていて、今何ができるかを考えるんです。カウンセリングは1つの型に従えばできますが、コンサルティングはもっと柔軟に対応する必要があります。
今は物凄い速さで世の中が変わっています。戦後から20年くらい前まで、子供達がやりたい仕事の上位に野球選手が入っていましたが、今はユーチューバーやeスポーツの選手、公務員等が入り乱れています。
この変化、去年との差に気付くことがコンサルタントには必要です。
人類が誕生してから現在までを1年とすると、話し言葉が登場したのはクリスマス頃、そして文字が登場したのは大晦日の夕方頃なのです。音声言語の方がはるか前です。
インターネットやSNSには我々は対応しきれていなくて、色々な歪が生じているのです。今はデジタルとアナログのバランスを取ることが求められています。
強化したいことは日常のルーティンに組み込むのが一番です。繰り返すとこういう能力が身に付きますよということを伝えると、それは大きなやる気につながります。
一方で、場所を変えると頭を使うので、違う場所に行くといいことがあります。予定調和でない所で何をするか決定することが良いのです。パラレルキャリアは、従来やっていたことを究めるということと、別の場所で刺激を受けるということの両方が経験できるため、意味があるのです。
ワクワクと不安はバランスが大事です。分からないことが多過ぎると恐怖を感じ、分かっていることばかりだと退屈を感じます。
リベラルアーツとは、何か?
従来は世界の基本構造を知り、自分軸を持っていることと言われていましたが、最近では最新の世界観を知ることが加わりました。ローマ時代の話をされても自分事になりませんが、最新の世界観を知ることは自分軸につながります。
最近のニュースを題材にして話が進みます。「鬼滅の刃」前後で漫画はどう変わったのか?昔は省略の美というものがあったが、今は主人公が独白して共感してもらうことが大事になっています。努力する場面は盛り上がりません。初めから能力は備わっていて、いつそれを使うかが大事です。
年代によって、使うメディア、使う言葉が違います。10代は新聞を殆ど読みません。日経とニューズ・ピックスは、学校で教育に使ってもらおうという動きをしていて成功していますが他社はうまく行っていません。
1986年と2010年の入社式の写真を見比べると、1986年の方が圧倒的に個性があり、楽しそうです。2010年は皆同じ服を着ていて、表情が硬いですね。多様性が叫ばれている現代ですが、多様性がないから叫ばれているのかも知れません。昔は入社式に何を着て行くか迷ったら、昔は家族や先輩、友人に聞いたものですが、今はネットで調べます。そのため画一化された服になるのです。インターネットは多様化を促進するどころか、阻害しているのです。
1度何かを検索すると、そのことに関連した情報が、その人向けに繰り返し表示されるようになり、自分の意見と異なる意見に触れることができなくなるというフィルターバブル現象が起きています。エコーチェンバー現象は、自ら、自分と同じ意見以外は遮断し、皆自分と同じ意見を持っていると感じてしまうことで、両者とも多様性とはほど遠いのです。
新聞の強みは、自分とは違う意見や情報が掲載されていて、じっくり読める、俯瞰できる、セレンディピティ(思いがけない情報に出会えて越境のきっかけになる)、書き込みや切り貼りができるところです。
同じ記事を扱っても、新聞とはさみ、のりを使ってまとめた場合と、タブレットを使ってまとめた場合とでは、出て来る結果が違うことが知られています。身体と脳を分離できないことが人間の特徴ですから、身体を使うと必ず脳に影響するのです。赤ちゃんは、先ず身体があって、言語を獲得して行きますが、AIは逆で、プログラミング言語が先ずあって、その後身体ができるのです。
工業製品の設計をする場合、モックアップ(模型)から入った人と、最初からCADを始めた人とでは、成果がかなり違うのです。モックアップの場合、CADよりも修正が少ないそうです。
デジタル化の波によって取り残されているもの、例えばラジオはもう終わりかと思われた時期がありましたが、東日本大震災をきっかけに見直されたのです。声だけで情報が得られる、電池があれば聴けるのです。深夜放送に人が戻って来ています。このように、取り残されたと思っていたものが復活することもあるという視点は、コンサルに必要です。
人を見る場合も同じです。自分の中では終わってしまったもの、役に立たないものと思っているものでも使えるかも知れないのです。
(仲井圭二)
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