
2.3.計画された偶発理論に頼るべからず
キャリコンなら間違いなく、みんな大好き「計画された偶発理論」。もちろん、私も大好き♡です。
自分のキャリアをより良い方向に導いていくために、未来への計画や過去の価値観に固執せず、偶然の出会いを意図的に増やし、出会った偶然を前向きに受け止めることが重要、という理論ですね。「キャリアの8割は偶然で決まる」、という事実に基づいているこの理論、提唱者のクランボルツ博士が亡くなったのは本当に惜しまれます。
で、この理論の肝である、偶然の出会いを意図的に増やし、出会った偶然を前向きに受け止める。これ、そのままビジネス上の行動に適用したらエラい目に遭います。稼げるようになるまで相当な時間と労力を費やすことになるでしょう。
何も考えずにむやみやたらと行動しても、それが偶然の出会いとなる確率は相当低い、と断言しちゃいましょう。
計画された偶発理論の優れたところ
何が優れているところかと言いますと、それまでのキャリア理論における2つの問題点をクリアしているところです。
1つ目は、「計画に拘ることは問題だ、拘ってはいけない」としたところです。
最終的な目標とそこに至るキャリアプランを考えて、生涯を通じて実践していくのを良しとしていたのが従来のキャリア理論ですが、今の変化が激しい時代では例えば企業の事業領域も富士フイルムのように変わってきますし(カメラのフィルムからヘルスケアへ)、ビジネスモデルも成り立っている時間が短くなっているので(いきなりステーキとか)、キャリアプランという名の計画に則ってスキルや資格を取得しても、ある日突然仕事そのものがなくなる可能性があるので、計画に固執するのはいけないですよね。
2つ目は、「今の自分の価値観にあった仕事につくことが、自己実現や仕事の満足度につながることは問題だ、現実は決してそうとは限らない」としたところです。
人は様々な出来事と触れ合うことで、年を追う毎に価値観を変化・そして成長させていくのが現実です。従来のキャリア理論のように人の価値観は変わらないを前提としてはいけない、過去の自分の価値観を基にしたキャリアプランに固執すると、現在の「今、ここ」の自分の価値観とミスマッチが起こるという問題を指摘しています。素敵な理論ですね。
計画に拘ることはいけない
計画された偶発理論において、偶然の出来事をキャリアに活かすために5つのスキル・行動指針がありますね。①好奇心、②持続性、③柔軟性、④楽観性、⑤冒険心、が。
特に順番はないですが、敢えて私なりに定義するならば、①自分の好奇心を満たす物事に対して行動へ移し→④楽観性から例えそれが困難なことでもチャレンジしてチャンスを自ら作り出し→⑤行動への障害や困難さといったリスクも冒険心で取りつつ、②持続性としてやり抜く力・コミットメントを発揮して、③何かあっても柔軟性を持って臨機応変に対応していく。この5つのスキルを継続して発揮していくことで、自分の思い込みや拘りといった自己実現を邪魔するモノから自己を解放していける、新しい視点で「今、ここ」の現実を捉え、今この瞬間を大切に生きることができる。この繰り返しこそが自分のキャリアを良い方向に導いてくれるのです。
うん、ここまでの説明で【計画】って言葉はどこにもないですよね。柔軟性って言葉が入っているくらいだから、変幻自在でないといけないですよね。エンプロイアビリティ、あるいはプロティアンキャリアか。うん、計画は立てたとしてもすぐに変更できるように柔軟性を持つべし、との主張を私は計画された偶発理論から感じています。私だけ?
旅行とかもそうじゃないですか、観光名所をたくさん辿る計画を立てたところで、現地で美味しい名物料理を見つけたらそちらを優先してしまう、とか。この例え、何か違う?
では、首都圏から北海道へ旅行するとき、飛行機の予定で計画立てていたけれど、豪雪で欠航になりました。だから旅行を取りやめる、ではなく、新幹線という選択肢を取り得る、ならどうだ!
つまるところ、旅程の計画が大事でなはく、どこに行くのか、そこで何を感じるのか、という目的が大事なのです。
しかし目的には拘れ
計画された偶発理論においては、以上のように、とにかく行動することが求められますが、その行動の目的をちゃんと考えていますかね?
自ら◯◯しなければならないと、限定した目標達成とプロセスを何が何でもやり抜く、という柔軟性に欠けた発想ではいけません。ビジネスの組み立てに計画は必須ではない、と中小企業診断士っぽくないことを言い放ちますが、ビジネスをやる以上、目的は必須なんですよ。
それもただお金を儲けるため、という理由ではいけません。金儲けを目的としたビジネスだと、やりたくないことをストレス感じながらやってしまう、できないことをできると自分に言い聞かせて無理をする、と碌なことがないです。私のサラリーマン時代がそうでしたからね、働く理由=金を得るため。それ以外になし。こんな感覚でビジネスを独立や副業でやるのは、ちょっとかなりたくさん辛いと思います。
もし、経済的自由を手に入れて自分のやりたいことに時間を使えるようにしたい、が目的だったなら、その自分がやりたいことをビジネスにしちゃえばいいのです。働くって楽しいですよ!
そうはいっても、ビジネスや働く目的が分からない、あるいは、仕事は辛くなければならないという思い込みを持っている方には、こんな方法はいかがでしょう。
まず、何でもいいですから、今後考えているビジネスや仕事、キャリコンでもいいです、やりたいと思っていることを1つ宣言してみてください。次に、その宣言に対して自分でこう問うてください。
「それって一体、何のため?」これを最低3回やってみましょう。
例)「やりたいのは、キャリアコンサルティングで転職しようか悩んでいる人の決断を、その人らしい決断をする支援をしたいことです」
「そうなのですね、キャリアコンサルティングで転職しようか悩んでいる人の決断を支援したいのですね。・・・それって一体、何のため?」
「転職で困っている人を助けたいからです」
「そうなのですね、転職で困っている人を助けたいんですね。・・・それって一体、何のため?」
「私も過去に転職で悩んでいたので、同じ悩みを持つ方を救いたいんです」
「そうなのですね、過去のあなたと同じ悩みを持つ方を救いたいんですね。・・・それって一体、何のため?」
「・・・そうすると、過去の自分も救えるような気がするからです」
「そうなのですね、過去の自分を救いたいんですね。・・・では、どうすれば、あなたは過去のあなたを救えますか?」
と、目的の言語化とそれを達成するための行動を考える切っ掛けになります。いかがでしょうか?
このような自問自答をすることで、新たな気付きや発見をすることができます。狭い視野が開け、何をすべきかもハッキリしてくるはずです。あとは、勇気を持って行動という一歩を踏み出すだけです。
それでもハッキリしない方は、THREE MORE。あと3回やってみましょう。「それって一体、何のため?」
計画された偶発理論は計画的に
ご利用は計画的に、という昔のアコムCMに似ていますが。何が言いたいかといいますと、つまるところ計画された偶発理論って、結果論として使いたいんですよ、私の感覚では。
「それって一体、何のため?」はそのときの自分の価値観もハッキリしますが、日を変えて改めてやると、面白いことに同じやりたいことからのTHREE MOREでも回答が変わってきます。「今、ここ」を大事にするので、それはそれでOKです。
そうやってその時々の価値観という名の行動目的を明示化し、それを自己実現として達成するための行動をたくさん取る。すると、ある日を境に気付くのです。今の自分の立場や稼ぎは、今思えばあのときの偶然の出会いから始まったんだな、と。
私が師匠と出会ったのも、単なる偶然です。しかし、出会うための行動量は結構スゴかったと思いますよ、ものの1ヶ月間で起業コンサルタント20人と会うって。結果として、その出会いが私の成功(というとおこがましいですが)に結びついているわけですが、それも稼げるようになった今この時点で振り返ると感じることなんですね。
ああ、あの出会いはあたかも誰かが計画していた、神様に計画された偶然だったんだな、と。そして「稼ぎ方を身につける」という目的に沿った行動を取ったからこそ、計画された偶発理論が実証できた、と思います。
ですので、自分の行動量を褒めるといった自己肯定感のUPにも使われる計画された偶発理論ですが、そのご利用はあくまでも稼いだ、あるいは稼ぐ算段が付いたときの振り返りでビジネス上は使用しましょう。
いやいや、計画された偶発理論を実践するために頑張ってたくさん行動しているんです!とは決して言わないようにお願いします。偶然の出会いも後から「計画通り byデスノート」とニヤリとできるよう、目的に沿った行動を前提にお願いします。
ご利用は計画的に。そして目的に沿った行動を、ビジネスの最初の一歩として取っていきましょう。そうしたら、計画された偶発理論はあなたの前に現れるでしょう、必ず。