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Amazon Location Serviceが塗り替えるGoogleマップ一強の風景
昨年11月にβ版サービスとして静かに始まったAmazon Location Service(以下、ALSと表記)。今年6月頭から正式サービスとしてグローバルでの展開が開始されている。
このサービスは日本でも同時に展開されていて、東京リージョンで使用できると明記されている。
ALSのはEsriとHEREがデータプロバイダーとしてデータおよびバックエンドのサービスを提供しており、どちらを採用するかは、ユーザーが選択できる。(7月8日記述:「私が聞くところによると、日本で利用できるのはHEREのみ?で、Esriはそうではないらしい。ただそのことはALSのWebサイトには明記されていないし、実際にEsriも利用できてしまうので、詳細確認が出来次第、改めて報告したい。」)→7月13日に確認が取れ、現在はHEREとあわせて、Esriも利用できるようになっている。
Googleマップ一強を塗り替えるエポック
ALSの登場によって、AWSのエコシステムで利用できるジオロケーションサービスが出現したことになる。私は、このALSは、これまでのジオロケーションサービスの「Googleマップ一強」の風景を塗り替えるエポックになりうると予想している。
これまでの間は、地図表示、住所及び施設検索、経路検索やジオフェンシングなどのジオロケーションサービスをシステムに導入しようとすると、多くの場合がGoogleマップが採用されている。サービス開始が早かったGoogleマップは、ジオロケーションサービスの代表的な存在として幅広い顧客から認知されてきた。Esri、HERE、Mapboxなどのロケーションサービスに特化するプラットフォーマーは、Googleマップが提供できないニッチな機能を品揃えすることで差別化を図り、ジオロケーションセントリックな顧客層からの支持を得てきていた。
この構造が、今後根底から変わることになる。
クラウドプラットフォームレベルの戦い
AWSは世界で最大のクラウドプラットフォームである。こちらの記事によると、2020年第4四半期において、AWSが32%のシェアであるのに対して、Googleが展開するGoogle Cloud Platformは7%と大きく差が開いている。一方、Microsoft Azureはシェア20%と徐々にAWSの背中が見えつつあり、これら上位3社が総力戦を展開している。
AWSから見ると、GoogleにあってAWSの品揃えに無い筆頭格はマップだ(Microsoftは既にBing Mapsを展開している)。そして、Google Cloud Platformの特筆すべき強みはGoogle Maps Platform、つまりGoogleマップを統合しているところだ。このため、Googleマップの既存ユーザーが他のシステムやデータをクラウド移行する際には、わざわざAWSやMicrosoftを採用するよりは、全てのアプリケーションとデータをGoogle Cloud Platformに託す方が自然だろう。
こうしたクラウドプラットフォーマーのシェア争いの過程で、ジオロケーションサービスは、遅かれ早かれAWSが提供せざるを得ないものになっていた。
ジオロケーションサービスは、データを作成あるいは調達してからサービスにまで展開するためには、様々なプロセスが必要で、それぞれに必要とされるノウハウも異なる。しかも、地理的な多様性に対応するためのノウハウも欠かせない。従って、AWSが今回ロケーションサービスを提供するにあたって、既存のジオロケーションサービスプロバイダーと提携するというのは理にかなっている。
ALSの登場でGoogleマップに頼らなくても良くなる
今回のALSの特長としては、既に多数提供されているAWSのサービス群と統合して、ユーザーはAWSの中で、同じアカウントのまま、ジオロケーションサービスを比較的容易に組み込むことができる。技術面では、業界標準のMVT形式でのマップタイルの採用など、ディベロッパー側にとってオープンでカスタマイズ性の高い仕組みを採用していることが挙げられる。
既に、日本のジオ系ディベロッパーからの注目も集めていて、ジオロニアの人によるトライアル記事、MIERUNEの人によるQiitaの記事など、試した人がいくつかの記事を投稿している。今後、様々な企業や個人が取り組むようになると思われるので、Googleマップの顧客でAWSを利用している顧客達は、次第にALSに関心を持つことになろう。
普及には日本に対応したマップの表示スタイルが鍵
このように、ポテンシャルの高いALSであるが、現時点では日本国内向けに使うにはいくつかの問題が既に指摘されている。代表的なものとしては、詳細な道路や鉄道網が表示されない、文字が英語で表示されるなど、肝心の日本のマップ表示への対応に問題があることが筆頭に挙がっている。おそらく、北米や欧州ではそれほど問題視されないスタイルでも、日本では言語の問題がまずあり、さらにデータの構成や密度が異なっているのでフィットしないのだろう。
ALSのマップは標準提供のstyle.jsonをゴリゴリと追加編集していけばユーザーサイドでやれるので、私もHEREのタイルをベースに少しだけスタイルを書いてみた(下図)。ただ、この作業はかなりの経験値が無いと不可能に近いので、ALSが標準的にこのレベルのスタイルを提供するか、あるいは開発パートナー企業が提供するか、いずれかの対応が求められるとも思う。