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ドイツ漫遊記28~ドイツのフランクフルトで、ヨーロッパ最古のジャズフェスティバルを体験 Deutsches Jazzfestival1~
歴史あるジャズの祭典
ふとした出会いの喜びというのは、意味もなく冷蔵庫を開けたときに美味しそうな食材を見つけたときの感覚に近い。そこにあった筈なのに、気づいていなかったことに気づく喜びとでも言おうか。とにかく、そんな出会いがあった。
たまたま入ったフランクフルトの観光案内所で、私はドイツ・ジャズ・フェスティバルの文字を見つけた。見れば10月23日~10月27日まで行われているジャズの祭典だった。調べてみると最初の開催は1953年であるから実に70年以上も行われているヨーロッパ最古のジャズ・フェスティバルであった。
早速、土曜日と日曜日のチケットを購入し楽しみに当日を待っていた。
テレビ局のような場所で行われたジャズ
会場へ着くと、ジャズをやるような雰囲気の建物ではなく、コンサートホールとも微妙に異なるような場所でジャズ・フェスティバルが準備されていた。
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場所はBertramstrase 8というところで、ラジオ放送局のhr3というのが併設されているようであった。私の想像していたコンサートホールの雰囲気とは異なり、椅子も備え付けではなく設置したような雰囲気であった。とはいえ、十分に音楽を楽しむ環境であることは間違いない。
ざっと周りを見渡してみても、私以外にアジア人は見当たらず年齢層も高めだった。
Jason Moran &hr-Bigband
19時からの開演で、第一部はJason Moranというピアニストと、地元のビッグバンドによる演奏だった。デューク・エリントンをリスペクトした曲群で、これが非常にクラシックなスタイルのジャズで、ほとんどの人がジャズと言って想像するスタンダードなジャズ演奏だった。
ライブの様子は以下から見ることができる。
演奏と、ジェイソン・モランの陽気なピアノが絡み合い、活気に溢れて溌剌としている初期ジャズのパワーが存分に感じられた。各パートに見せ場となるソロ演奏があったりと、集団であることの強みを活かした実にパワフルなライブだった。
会場の雰囲気も一気に熱気を帯び、年配の方々が聞き親しんだであろう曲たちに満足している様子だった。がっちりと観客の心を掴みながら、ジェイソン・モランのピアノが軽快に跳ねる。ボーカリストを呼んでのロマンティックなジャズ演奏も、ド定番というようなジャズの王道スタイルで観客も拍手喝采だった。
白眉はエリントン作の『Jeep's Blues』で、Bluesのリズムとメロディに酔いしれた。
Lisa Wuff Trio &Philipp Schiepek
第二部は緑色の服装がトレードマークのベーシスト、リサ・ウーフによるジャズ演奏だった。第一部とは打って変わって一気に現代音楽となり、年配層が多い観客は若干置いてけぼりの雰囲気があったが、果敢に自らのジャズを披露するリサの演奏は力強く、存分にメロディを紡いでいた。
第一部の王道ジャズからの流れとしては、私自身も急展開に付いていくのが難しかったが、コルトレーンが挑戦を続けたような雰囲気を感じ、次第にその音楽のパワーに飲み込まれた。いわゆるノリノリになれるジャズというのではなく、より複雑で混沌としているような中に、ジャズの可能性を追い求めるような激しさと情熱があるように感じられた。
演奏は以下から聴くことができる。
Bill Frisell FOUR
トリを飾る第三部では、長尺の演奏を繰り広げるジャズ・バンドBill Frisellが登場した。ギター、ドラムス、テナー・サックス、ピアノの構成で、スタンダードなジャズと現代音楽の中間のような演奏であった。
19時開演で、トリの登場が22時過ぎであったため、さすがに観客も疲れたのか、一曲目を聞いて退散する観客が多かった。確かに王道のジャズを聴き、現代音楽を聴き、さらに同じような路線のジャズを聴いたらお腹いっぱいになるのも無理はないだろう。おまけに一曲が20分近い演奏であったため、聞いている方としてもダレてしまうのも否めなかった。
それでも集中して聞いていると、実に緻密に演奏をしていることが分かる。特にギタリストのBill Frisellの一聴すると無作為に弾いているかのように思われる演奏も、高い緊張感とともに自由奔放に音と音の間を行き来する。曲における即興の中で、テーマに戻るまでの間、実に愉快に音を刻むのである。それはいわゆる分かりやすいテクニックに頼ったものではなく、ドラムスと会話するかのように紡がれるのである。
第一部で実に分かりやすい王道ジャズを聴いているだけに、ジャズの幅広さに慣れていない&長丁場に慣れていない人には難しかったかもしれない。
こちとらジャズはコルトレーンからエリック・ドルフィー、ビル・エヴァンスからセシル・テイラーまで幅広く聴いているジャズ小僧である。実に素晴らしい三組の演奏を存部に楽しんだ。
演奏は以下で聴くことができる。
ジャズはスーパー・エキサイティング
有体に言えば、ジャズは実に幅が広い。ぶっちゃけアーティストが「俺の音楽はジャズ」と言えば、それはもうジャズである。クワバタオハラがおったら、もうそこは大阪や。と同じである。
幅広いジャズについて語るのは、海の起源から世界中の湾とか川の説明に至るほど膨大であるため説明は避けるが、それぞれに好きなジャズを見つけて楽しむと良いと思う。
私はビバップが特に好きで、チャーリー・パーカーはもちろん、チャーリー・マリアーノやフィル・ウッズなどはオススメしたいアーティストだ。
また『Blue Giant』のような漫画も非常にJazzの魅力を表現していて面白い。Jazzはハマると、正に大海のように無限に音源があるので楽しみは尽きないだろう。
最高の一夜を終えてホテルに戻った。そしてさらなるジャズの最高体験が日曜日に待っているのである。