ポケモンに似ている? 京都で動物彫刻の巨匠、ポンポンの可愛さに酔う
「ポンポン」。かわいい響き。しかし新種のポケモンやゆるキャラの名前ではありません。
フランソワ・ポンポン(1855年〜1933年)はフランスの彫刻家、特に「動物彫刻」の分野の巨匠と言われている人物です。
現在、京都市京セラ美術館で、日本であまり紹介される機会の無かったポンポンの展覧会が開催中です。
さっそく、彼の作品がこちら。
「ポンポン」の語感に違わぬ愛らしい、けれどもリアルなフォルムのシロクマの彫刻です。
フランソワ・ポンポン『シロクマ』1923-1933年
動物の毛並みを無くして単純化。そして身体の特徴をシンプルなラインで表現。遠くから一目見るだけでシロクマと理解できます。このシンプルさがポンポン彫刻の魅力です。
後部は野生のシロクマそのままの力強い後脚を表現。無駄を省いたシンプルな姿は、なんだかポケモンを連想させます。
「彫刻のような」と聞くとピタッと停止したイメージがあるけど、ポンポンの彫刻は非常にゆっくりと、目に見えないスピードで動き続けて、まるで息遣いが聞こえてくるよう。
動物の動きや息遣いまでも表現するテクニックは、ポンポンが長年動物園で動物を見続けてきた観察眼のたまもの。
動物たちもポンポンが来ると喜んで近づいてきたとか。
動物の脚や胴体など、身体パーツの寸法を細かく記したメモも展示してありました。
フランソワ・ポンポン『ヒグマ』1918-1926年
「見たまま・ありのまま」ではなく、余計な要素をそぎ落とし、「生きている」動物らしさを表現する。これは天性の才能ではなく、長年の経験と観察に基づいたポンポンだけの匠の技。
ポンポン作品のもう一つのポイントは、彼がこのシロクマ像を発表し、注目を浴びたのが67歳の時だったという事。
それまでの40年間、ロダンの下で下請け彫刻家として活動していました。「下請け」と書くと不遇に聞こえるけど、ロダン工房の工房長を務めるなどそのスキルは巨匠の折り紙つき。
オーギュスト・ロダン 『考える人』1902-03年
若い頃から人物像での成功を目指していたが中々注目されず… 博物館でみたエジプトや日本の絵画に影響されて、動物彫刻を作り始めたところ、直線的でシンプルなアール・デコの流行と、ポンポンの作品がマッチして一躍人気作家になりました。
最終的にフランス最高の勲章、レジオンドヌールも受章しています。
自分の「彫刻」のイメージは、上の『考える人』のような静的で重厚なもの。しかしこの展覧会で初めて「軽やかで愛らしい彫刻」を見ることができました。
会場にはクマだけでなく、カバ、フクロウ、トラなどおよそ90点のポンポンの彫刻が展示され、本当に動物園のよう。親子連れが多かったのも印象に残りました。彫刻をムズカシイ芸術と考えている方にこそお勧めしたい展覧会です。
『フランソワ・ポンポン展』
会期:2021年7月10日(土)~9月5日(日)※月曜休館
会場:京都市京セラ美術館
開館時間:10:00-18:00 (最終入館は17:30まで)
ウェブサイト:https://pompon.jp
京都以外にも巡回予定。お近くにお住いの方はぜひに。
名古屋市美術館
会期:2021年9月18日(土)〜11月14日(日)
群馬県立館林美術館
会期:2021年11月23日(火・祝)〜2022年1月26日(水)
佐倉市立美術館
会期:2022年2月3日(木)〜3月29日(火)