レヴェナント:蘇えりし物 ディカプリオとイニャリトゥ監督のアカデミータッグ
自然に対しての人間の業の小ささ
単純に復讐とサバイバルを描いたエンタティメント映画として見ても十分面白いのかもしれないが、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のイニャリトゥ監督がそんな単純な映画を作るはずも無く、いったい何が描きたかったんだろうと考察する。
主人公グラスは瀕死の重傷を負いながらも息子を殺したジョンを追う
舞台は西部開拓時代のアメリカ、季節は極寒の冬。
雪が降り積もり、かすかな太陽の明かりしか届かない風景は限りなく美しいが、人間にとっては厳しい季節。
ネイティブアメリカンはこの大自然の中で自然に寄り添いながら生きている。
主人公のグラスは息子を殺したジョンに復讐する為に、グリズリーに襲われ瀕死の重傷を負いながら、生還し幾度の危機も乗り越えジョンを追う。
とにかくグラスはここまで来るとこの人は何があっても死なないのではないか思えるくらい生き延びる。
そしてついにジョンを捕らえ復讐の時が訪れる。ところがどうした事か、とどめは刺さず、遭遇するネイティブアメリカンに委ねる。
ジョンは川に沈められ殺される。
グラスは前にネイティブアメリカンの娘を救った事があるため殺されずに済む。
しかし、グラスはジョンとの戦いで身動きが取れないほど負傷している。映画はこの後どうなるのかは分からないまま終わる。
人間の業の愚かさ
多分だが、止めを刺さなかったのは復讐の愚かさに気がついたから。ネイティブアメリカンに委ねたのは、人間同士が殺しあう事は愚かで自然の摂理の中で死ぬべき。そして、グラスはこのまま息絶えるのだと思う。人間は豊かな地球で、自らの欲の為に未だ自然破壊を続け、憎しみ、復讐、領土争いなど人間同士の殺し合いを続けている。ただし、地球の天変地異で人間は簡単に全滅してしまう可能性もある。人間の業などそんなちっぽけなものなのだ。これは人間の未来の生き方を問う映画なのかもしれないと思った。
音楽は今は亡き坂本龍一が担当。