ビジョンの未来度&抽象度を上げる
ビジョンをいろいろ見ていると、「現在やっている事業内容をカッコよく要約しました」みたいな言葉になっていることがあります。
これはマジでやめた方がいいです。
例えば、トヨタが「環境に配慮した、めちゃくちゃ高性能なクルマを作ります!ドヤァ」と宣言したとして、それがどうかしました?という話ですよね。
何を当たり前のことを、ゆっくりおっしゃってるんですか、と。
そんなことはみんな知ってまっせ、と。
なので、過去・現在の話ではなく「未来」の話を考えないとビジョンにはならないです。
そんなの当たり前じゃんと思うかもしれないですが、今やっていることをちょっと背伸びして、イイ感じに言い直しただけ、というビジョンは結構よく見かけます。
それは「現状の延長線上」であって、未来とは別モノなんですよねー。
では、未来の話だったら何でもいいのか、というとそうでもないです。
「抽象度」が上がっていないと意味がないです。
抽象度が上がるということは、自己定義(アイデンティティ)、つまり「ウチの会社って何屋なのか?」が更新されるということです。
例えば、ラーメン屋が「大阪の店舗が儲かってるので、来年は名古屋と福岡に出店します!」というのは、「ラーメン屋」というアイデンティティは本質的に変わっていなくて、エリアや規模が増えただけです。
でも、「これからは、ウチの店舗はビジネスマンのサードプレイスになります」というビジョン(ミッション)を掲げる場合、アイデンティティが変わってきます。
お客さんに提供するものは「ラーメン」ではなく、「サードプレイスとしての居場所」ということになります。
ちなみに、トヨタのグローバルビジョンの中には『未来のモビリティ社会をリードする』という一文があるのですが、この”モビリティ(可動性)”という言葉を置けたことはめちゃくちゃ大きな意味があります。
ウチはクルマだけ作る会社じゃないですよ、モビリティに関わることは何でも事業領域に含まれますよ、ということを宣言しているわけです。
だから、MaaS(Mobility as a Service)の分野をリードできたり、スマートシティをやるという一見関係なさそうな話でも、「確かにモビリティの会社ならアリだよね」という風に受け止められたということですね。
これってまさに、「クルマ屋」から「モビリティ屋」へ、アイデンティティが更新されています。
ビジョンをつくる際には、この「未来度」の軸と「抽象度」の軸を適切に上げていくことが大事、という話でした。