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J.D.サウザー You’re Only Lonely

一ヶ月ほど前、リンダロンシュタットの記事を書きながら、リンダとJ.D.サウザーのFaithless Loveを、繰り返し聴いていた。

それはJ.D.サウザーが作曲した中で、最も好きな曲のひとつ。J.D.がリンダとのすれ違いを描いた、多分ノンフィクション。

リンダが歌えなくなったことについて、インタビューでのJ.D.の言葉が心に残った。
「なんという仕打ちだろう。だが美声を収めたレコードがある。笑い声もはしゃぎ声も僕の頭の中で聞こえる。決して忘れないよ」

枯れた味わいになったJ.D.だが、その寛容な語り口も、若々しい目も、クリントイーストウッドに似たマスクも、まるで映画俳優のようだった。ずっと昔、大きな成功を掴んで去っていったリンダを赦している優しい表情だった。

そのJ.D.サウザーが
リンダより先に逝ってしまった

なんという悲しみだろう。
愛犬家で犬と戯れている動画を見かけたばかりだった。カーラボノフとのツアーが発表されたばかりなのに。五日前はライヴをやっていたというのに。

最初は、イーグルスのBest of My Loveで惹かれた。1980年の「イーグルスライヴ」のライナーに「アンコールで最後にメンバー全員のアカペラで歌ったBest of My Love が収録されなかったのは、ほんとうに残念だ」と書いてある。
そのBest of My LoveがJ.D.サウザーの曲と知ったのはもう少し後のことだったと思う。

その後「Sad Cafe」も「New Kid in Town」もJ.D.の曲だと知って、彼のメロディーこそが、私をイーグルス好きにさせているのだと思った。洋楽好きの入り口にイーグルスがあって、イーグルスの、私の真髄にJ.D.がいた。

そして何よりYou’re Only Lonelyがあった。

これは、人生のヒットチャートで常に上位にあった、私の切なく甘いメロディー。
だから、訃報は悲しかった。

君は孤独だね、という歌ではなく、寂しい時は僕がいるからね、という歌だ。「スタンバイミー」や「君の友達」のように。

君の小さな肩の上に世界が落ちてきそうな時
君が孤独で心細く感じているとき
君を抱きしめてくれる誰かが必要だよ
君は僕の名前を呼ぶことができるよ
君がひとちぼっちで孤独なとき

人は、幾千もの友人の頑張れより、たったひとりの温もりの方が、安らぐのだろう。

名作と言われたブラックローズも、駄作といわれたホームバイダウンも、美しく素朴なセルフカヴァーアルバムも、そのほかもぜんぶ、好きだった。イーグルスのソングライターとしても、リッチーフューレイらとのバンドでも、JTとの共演も、ぜんぶのJ.D.サウザーを、受け入れることができた。
だって、Faithless Love、Best of My Love 、You’re Only Lonely のJ.D.サウザーだぜ?

J.D.の訃報で 今のリンダの悲しみを思うと心が痛む。そしてもう一人、悲しみに暮れているであろう男、ドン•ヘンリーがいる。

「Best of My Love」で「Doolin Dalton」で「Sad Cafe」でも、J.D.の曲をドン•ヘンリーが代わりに歌ってきた。イーグルスが崩壊した後も、ドンはソロでJ.D.の曲をいくつも取り上げてきた。

J.D.サウザーのキャリアのスタートこそはグレン•フライと共に語られるが、長きに渡ってJ.D.と本当に仲が良くて、共作してきたのはドン•ヘンリーだと思う。

この曲↓The Heart of the Matterも、J.D.サウザーの作曲だった。

サビのところでリフレインする言葉、forgivenessは「許す•赦す」という意味で、この曲のキーワードだと思う。
何度も繰り返される「forgiveness」を聴いていると、J.D.がリンダのことを言っているように、私には聞こえてくる。

リンダはもう歌えないけど、ドンは、明日もどこかで、J.D.の曲を歌うかもしれない。
だから、安らかに眠ってほしい。
リンダもきっと今、二人で過ごしたあの頃を
思い出していると思う。









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