オーティス ラッシュMourning In The Morning
前回の続き
昨夜のNHK大河「光る君へ」では、まひろ(紫式部)は源氏物語を書き終え、宮廷仕えを辞し、道長に別れを告げて、旅立ちます。
第1回の子供時代に話は戻ります。
子供まひろ「鳥が逃げてしまったの。大切に飼っていた鳥が」
子供の道長「鳥を鳥かごで飼うのが間違いだ。自在に空を飛んでこそ鳥だ」
子供まひろ「でも、ひとたび人に飼われた鳥は、外では生きられないのよ」
子供道長「それでも逃げたのは、逃げたかったのだろう。諦めろ」
あの時の道長が言った通りに、まひろは、あらゆる束縛から逃れて、旅に出ます。
海に辿り着いて笠も杖も投げすて、はばたく鳥のように浜辺を走り出します。
ドラマを観た後、今日、海に行きました 笑
ココは↓千葉県の南房総、富浦の原岡桟橋がある浜辺です。5年前は人知れず静かでしたが、CanonのCMで使われてからは観光客が来るようになりました。今日はお天気が良くて、富士山が見えました↓
この桟橋、街灯があって、夕刻になると、こんな風景になります↓。なんともロマンチックです。CanonのCM映像は、世界の美観地が次々と瞬間的に映し出され、最後にこの桟橋が映るんです。言わば、知らざれる日本代表の美観地でした。
今日は晴れて、水も綺麗なので桟橋から魚が沢山見えました。まるで桟橋を歩く水族館。そして浜辺ではワンちゃんがお散歩中。周囲は緑と水平線に囲まれ静かな景観です。ワンちゃんも首輪を外して全力で走っていました。
まひろもドラマで走ったし、放たれた犬も走っているし、自由を得て海辺を走り出したくなる気持ちって、素晴らしいなと思います。
というわけで、海!走る!
オーシャン!ダッシュ! からの〜
オーティス•ラッシュ
「Mourning In The Morning」1969年
私は、黒人ブルースの中では、白人寄り、ロック寄りなブルースが好きで「It Takes Two」(冒頭↑)で惹かれ、本作を知りました。R&Bぽいホーンセクションも好みです。
オーティス•ラッシュのデビューは1956年で、デビュー曲「I Can't Quit You Baby」は、ツェッペリンのカヴァーが1stにありますし、エリッククラプトンの「オールユアラヴ」は彼のカヴァー。さらにスティービー•レイ•ボーンのバンド名、ダブルトラブルは、オーティスの曲「ダブルトラブル」からです。
これらの曲は彼が50年代時期のもので、この頃のオーティスは恵まれた環境ではなく、ほとんどギャラを受け取れなかったらしいです。レコード会社が倒産したりと絶頂期の演奏がきちんと収められた作品が少なく、不遇の時代でした。そのうえ、彼は控えめな性格らしく、有名になりたいとか成功したいとか、そういう欲が全くない人らしいのです。
彼の奥さんは日本人で、その奥様談では「ローリングストーンズがシカゴにきたときの関係者パーティーとか、オーティスにも招待が来ているのに、面倒くさがって行かないのよ」たしかにマスコミへのお披露目パーティーなので、出席したらそれだけで記事になり、宣伝効果は抜群です。しかし「オーティスはそういうとこ、全然だめなの。人間がピュアで、純粋すぎるから、ただ自分の音楽をやっていたいの。他のことは全部面倒がるのよ」とのこと。
また、若いときからオーティスはモテモテだったそうですが、結婚してから浮気とかそういう心配ごとに悩まされたことがないそうです。5人いる孫のうち3人の男子がオーティスと同じ左ききとのこと。
そんな控えめで家族思いのオーティス。ギターもさることながら彼の歌はとても良いです。
クラプトンの推しもあって、次第に不遇時代を乗り越え、表舞台に立ちます。
86年にはクラプトンと共演したモントルーのライヴがあります。↓クラプトンの歌い方は明らかにオーティスの影響を受けていますよね。声質も似ていて区別がつかなくなります。笑
あと、クラプトンの顔が少し紅潮してますよね?尊敬する人との共演で緊張して、一杯ひっかけたのでしょう。「ダブルトラブルやるかい?」と優しげに声をかけたり、おいしいパートはクラプトンに花を持たせて任せたりと、控えめで家族思いなオーティスの性格が、垣間見える映像です。↓
オーティスは、不遇時代があったり晩年も病でギターが弾けなくなる不運もありましたが、ビジネスに無関心であるがゆえに、鳥カゴに入ることもなく、ずっとピュアだったのでしょう。
昨夜の「光る君へ」の題は「はばたき」でした。飼われた鳥が放たれたが如く、主人公まひろが走り出す、はばたきです。
「はばたく」という言葉は良いですね。
鳥カゴから逃れて自由を得て、何かを始めたいという気持ちに満ち溢れる。
そんな、人間のはばたく姿、走り出す姿は、美しいです。