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ちからの抜けた文章の心地よさ

エッセイを読むのが好きです。
とはいえ、どんなものでもというわけではなく、書き手の語り口が自分のテンションと合うもののほうが、より心地よく感じます。
エッセイは書き手の人柄がすごくにじみ出るものだとおもっているので、あまりテンションの高くない落ち着いた語り口のほうが、スッと自分の中に入ってくるような気持ちで読むことができるように思います。

最近読んだアニメーション作家の近藤聡乃さんや漫画家の浅野いにおさん、阿佐ヶ谷姉妹のエッセイは、その点でとても心地よく感じました。
派手さはないものの、淡々とした語りのなかに、ふと笑えたり、共感したりする瞬間があって、気負わずに読むことができます。
漫画のエッセイでは、オーバーテンションなキャラクターの主人公が多く描かれる印象がありますが、私が心地よいと感じるのは、そうしたものとは少し違う方向性なのかもしれません。もちろん漫画として面白くするためにはテンションのギアを一つ上げてショーとして演出する必要性は理解しています。

音楽では、宮内優里さんの「log」シリーズをよく聴きます。日常の風景にそっと馴染むような音楽で、力が抜けていてとても心地よいと感じています。この方の文章もまた、力が抜けていて、読んでいて穏やかな気持ちになれるのが魅力です。

昔読んだ保坂和志さんの『季節の記憶』も、日常を淡々と描いた小説で、同じような心地よさを感じた記憶があります。

もちろん、明確なテーマがあり、「人生に役立つ」ような文章が注目を集めやすいことは理解しています。ただ、そのような文章ばかりを読んでいると、時には少し疲れてしまうこともあります。
それよりも、読んだあとに特別な知識が得られたわけではないものの、静かで心地よい時間を過ごせたと感じられるような文章も、とても価値のあるものだと思います。

現在、自分が書いているのは、どちらかというと考えを掘り下げるような文章が多いように思いますので心地よくはないのかなあと。
ただ、それを書き切ってネタがなくなったあとには、もっと肩の力を抜いた文章が書けるようになるのではないかと、楽しみにもしています。
読むほうでも、そのような文章にもっと出会えたら嬉しいなと感じています。

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Morishita Yusuke
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