イラストレーターの宣伝・営業術18 「夜空に輝く無数の星々から、あなたという、ただ一つの星を選んでいただく魔法。それがキャッチフレーズ」
(※ この記事は,『イラ通・スクール』の《宣伝・営業術18 キャッチフレーズ01「夜空に輝く無数の星々から、あなたという、ただ一つの星を選んでいただく秘策。それがキャッチフレーズ」》を一部修正したものです)
■ ネットで見つけてもらおうとするな!
仕事が少ないイラストレーターに多いのがーー
「インターネットや年鑑で見つけてもらおう」と考えているタイプです。
そんなあなたに、はっきりと告げなければなりません。
年鑑・Web・SNS等で見つけていただくことを目指しているイラストレーターは、なかなか食べていけません。
今イラストレーターの数が爆発的に増え、究極のレッド・オーシャン(競合が多すぎて、苦労をしても、なかなか利益が上がらない業界)となっているからです。
私が『年鑑イラストレーターズ通信』を創刊した当時は、イラストレーター年鑑といえば『イラストレーション・ファイル』(玄光社)しかありませんでした。
しかも、『イラストレーション・ファイル』は今よりも薄く、掲載人数も少なかったです。
それが今や何種類ものイラストレーター年鑑が発行されています。
コンペやコンテストも多数あり、それぞれにたくさんの応募がある様子です。
青山塾、MJなど、良いイラストレーター教室も多く、優れた才能を輩出し続けています。
クリエーターエキスポの出展者も、イラストレーターが突出して多いです。
Webサイト、SNS、ブログ等で、無数の人たちがイラストレーターを名乗っています。
皆さん「お仕事募集中」とか「お気軽にお問い合わせください」などと書いています。
さらには、イラストレーターが活動しているのは、日本だけではありません。
2000年代に入ってから、インターネットの普及により、イラストレーター業界のグローバル化進みつつあります。
どの国に住んでいても、インターネットを使えば、一瞬で納品が可能な時代が来たのです。
世界のイラストレーター業界に国境は無くなりました。
アジアやヨーロッパに住みながら、米国の仕事をすることも当たり前になっていきました。
ただ、日本だけは言葉の壁があり、イラストレーション業界のグローバル化から取り残されていました。
しかし昨今、AIや翻訳ツールが日進月歩の発展を見せていています。
日本語の壁はなくなりつつあります。
近いうちに、日本にもグローバル化の波が押し寄せることになるでしょう。世界中のイラストレーターが、同じ土俵で競い合う時代に突入しつつあります。
世界に、一体何人のイラストレーターがいるのか、見当もつきません。
夜空の星の数ほどの人々が「私はイラストレーターです。仕事をください」と発信し合う時代に、私たちは生きているのです。
皆さん、上手いです。
絵の上手い人が多すぎます。
夜空の星の数ほどのイラストレーター達が、世界中から仕事を求める時代なのです。
あなたが優れたイラストレーションを描くとしても、その他たくさんの星の中に埋もれてしまいます。
はたして、無数の星々からあなたという星が選ばれる確率は、どれほどあるのでしょう?
だからーー
あなたが、年鑑・Web・SNS等で見つけていただくことを目指している間は、食べていけません。
それは宝くじが当たるのを待っているのに等しいです。
ごく稀に、宝くじを当てる人もいます。
しかし、毎年継続的に高額賞金を当て続ける人は存在しません。
イラストレーターも、同じです。
優れた絵を描いていれば、ごく稀に、数多い星々の中からあなたが選ばれることもあるかもしれません。
でも、毎月継続的に選ばれ続けることは、難しいです。
「運を当てにしている人は、なかなか食べてはいけない」
これが現実です。
■ 「夜空に輝く星といえば?」
受講生の皆さん、
「夜空に輝く星といえば?」
と問われて、真っ先に浮かぶ星は何ですか?
私の場合は「常に北に輝く北極星」です。
その昔、海を渡る人々にとって、方角を知る道標のような役割を果たしていたと聞きます。
先ほど、「あなたが優れたイラストレーションを描くとしても、その他たくさんの星の中に埋もれてしまいます。無数の星々から、あなたという星が選ばれる確率はどれほどあるのでしょう?」
と書いたばかりですがーー
今、私は、その無数の星々から、ただ一つの星、北極星を選びました。
なぜその一つが選ばれたのか、あなたに分かりますか?
ちょっと考えてみてください。
私の場合は北極星でしたがーー
受講生によって、頭に浮かぶ星はいろいろでしょう。
太陽や月、あるいは惑星を省けば、最も明るい星であるシリウス。
夏の大三角の一つでもあり、織姫星とも言われるベガ。
夏の大三角の一つでもあり、彦星とも言われるアルタイル。
冬の大三角の一つであり、オリオン座の巨人の脇の下に輝く赤い星ベテルギウス。
ペルセウス座の妖怪メデューサの額の位置にあることから、「悪魔の星」という意味の名前となったアルゴル。
北斗七星の星。
カシオペア座の星。
など、さまざまな星の名前が挙がると思います。
その星があなたの頭に浮かんだのは、なぜですか?
なぜ、無数の星々の中から、その星を選んだのでしょう?
再度、考えてみましょう?
その理由をそろそろ明かしましょうか。
私が北極星を選び、あなたがその星を選んだ理由はーー
その星が、私にとっての、あるいは あなたにとっての「第一想起」の星だったからです。
■ 「第一想起」
「第一想起」は、マーケティング用語です。
特定ジャンルで、まず最初に頭に浮かぶブランドや商品名を「第一想起」と呼ぶのです。
この「第一想起」に入らなければ、そのブランドは苦労が多いばかりで売り上げが伸びなません。
「第一想起」になれば、自然と消費者に選ばれるようになります。
例えばーー
「そうだ 京都、行こう。」
というキャッチフレーズで有名な、JR東海のCMがありますよね?
京都への観光客を増やしたことで知られる名コピーです。
しかし、あのCMを見た直後にいそいそと京都に出かける人は、ほぼいないでしょう。
なのに、観光客は増えました。
なぜでしょう?
それは、あのCMによって、多くの日本人にとっての旅行先の「第一想起」が京都になったからです。
これはとても大事な点です。
よく覚えておきましょう!
ブランディングにおけるキャッチフレーズの役割は、その直後に購入行動を取らせることではありません。
消費者の頭の片隅に残り、そのブランドや商品を「第一想起」とさせることこそが、キャッチフレーズの目的です。
「夜空に輝く星といえば?」と問われて、まず最初に私の頭に浮かぶ星ーーつまり「第一想起」が、北極星だったのです。
皆さんの頭に浮かんだ星も、それがあなたにとっての「第一想起」だったのです。
「第一想起」だから、無数の星々の中からその星を選んだのです。
ここに、イラストレーター3.0の時代に食べていくための知られざるコツがあります。
夜空の星々のように無数に存在するイラストレーターの中から選ばれ、たくさんの仕事を得るためにはーー
イラストレーションを発注する人々の中で、あなたが「第一想起」のイラストレーターになればいいのです。
■ デザイナーや編集者は、ネットで探さず、頭に浮かんだイラストレーターに依頼する
経験豊富なデザイナーや編集者なら、何らかの企画が持ち上がった時、その仕事にぴったりのイラストレーターの名前が、頭に数人浮かぶものです。
この頭に浮かぶ数人が「第一想起」のイラストレーターです。
何かの理由がない限り、その頭に浮かんだ数人のうちの誰かに仕事を発注します。
インターネットや年鑑で探すことは、実はそれほど多くはありません。
だから、「第一想起」のイラストレーターばかりに仕事が集中するのです。
もし、インターネットや年鑑で探すとしたらーー
「今回は、新しいイラストレーターを使いたい」
「どうも、ぴったりのイラストレーターが思いつかない」
というケースぐらいです。
そして、星の数ほどいるイラストレーターから探すことになります。
■ 無数の星々から選ばれる秘策
私は、夜空に輝く無数の星々から、北極星ただ一つを選びました。
数多い星々の中から、北極星を選んだのは、その星が私にとっての「第一想起」だったからです。
あれほどたくさんの星々の中にあって、私が北極星を覚えていたのには理由があります。
それは、北極星を「常に北に輝く」というわかりやすい言葉とセットで知ったからです。
この「常に北に輝く」が、キャッチフレーズの役割を果たしているのです。
それがなければ、私にとっては、その他たくさんの星と同じになってしまいます。
私の記憶に残ることもなかったでしょう。
しかもーー
「その昔、海を渡る人々にとって、方角を知る道標のような役割を果たしていた」
というストーリーも何度か読んだことがあります。
だから、より北極星が印象に残っているのです。
他の星についても、改めてみてみましょう。
太陽や月、あるいは惑星を省けば、最も明るい星であるシリウス。
夏の大三角の一つでもあり、彦星とも言われるアルタイル。
夏の大三角の一つでもあり、織姫星とも言われるベガ。
冬の大三角の一つであり、オリオン座の巨人の脇の下に輝く赤い星ベテルギウス。
ペルセウス座の妖怪メデューサの額の位置にあることから、「悪魔の星」という意味の名前となったアルゴル。
北斗七星の星。
カシオペア座の星。
いずれも、わかりやすい言葉とセットになっていますよね。
シリウスの「最も明るい星」というのは、まさにキャッチフレーズです。
これが、その星を何倍も印象的にするとは思いませんか?
他の星についても、同じですよね。
キャッチフレーズ的な言葉とセットだから、あなたはその星のことをよく覚えているのではないでしょうか?
彦星と織姫星は、七夕の物語(ストーリー)とセットになっているからーー
そして、アルゴルは、メデューサの物語(ストーリー)とセットになっているからーー
さらに記憶に残りやすいのだとは思いませんか?
キャッチフレーズやストーリーによってーー
同じように輝く無数の星々にあっても、ある一つの星が特別な存在になります。
つまり、それがオンリーワンの星となり、「第一想起」として記憶に残るのです。
■ 「キャッチフレーズ」の目的は、「第一想起」のイラストレーターとして覚えていただくこと
あなたがまだ業界で無名なのだとしたらーー
まずは、覚えていただかなくては、仕事は来ません。
マーケティング関連のベストセラー『最強知名度のつくりかた』(西村誠司/著)でもーー
と、まずは「知られること」「覚えていただくこと」の重要性が繰り返し書かれています。
よく出来た「キャッチフレーズ」は、人をハッとさせ、目を止まらせる効果があります。
そして、そのブランドや商品名を記憶させるのです。
1度目にしただけでは、すぐに忘れるかもしれません。
だから、インターネット、SNS、ブログ、YouTube、年鑑、ポートフォリオ、名刺、ハガキ、展覧会、自己紹介の言葉など、あらゆる媒体を使って繰り返し「キャッチフレーズ」を発信しましょう。
それを続ければ、あなたのことを覚えていただけるはずです。
コカ・コーラの広告を繰り返し見るうちに、「スカッとさわやか コカ・コーラ」という「キャッチフレーズ」を覚えてしまうようにです。
あるいは、「お、ねだん以上。ニトリ」と繰り返し聞くうちに、知らず知らずニトリのことを覚えてしまったのではないでしょうか?
そしていつの間にか、ニトリで買い物をするようになっていませんか?
あなたも、コカ・コーラやニトリに倣って、イラストレーションを発注する職業の人々に、「作風」「どんな仕事にピッタリか」「ペンネーム」の3つを覚えていただきましょう。
そして、特定分野での「第一想起のイラストレーター」になりましょう。
私が「時代小説といえば、森流一郎」と覚えていただいたようにです。
私よりも、絵の上手い人はたくさんいました。
しかし私が第一想起だったため、他のイラストレーターを年鑑やインターネットで探すことなく、いつも私に仕事の依頼が来ていたのです。
今回は、ここまで。
参考文献は、別ページにまとめました。