やがてくる「鬼滅ロス」へのメメント・モリ 〜吾峠単行本コメント文学の世界〜
*これは、40歳独身男子が鬼滅ロスに備えて書き始めた入院保険のような雑記です。#1はこちら
吾峠呼世晴先生の単行本コメントは、感謝の文学だ
『鬼滅の刃』の作者・吾峠呼世晴先生は謎の存在です。性別不明(おそらくは女性)で、ウィキペディアもすごく短文。SNSもやっておらず、インタビュー記事なども見当たらないため、先生がどういう人かというのはよくわかりません。
しかしジャンプの作者コメント欄を除けば、単行本カバーのそで部分のコメント欄でしか窺い知ることのできない吾峠呼世晴先生の人となりは、とにかく素晴らしいの一言です。
そこでは、とにかく「感謝」に溢れています。毎巻毎巻、よくこんなに感謝できるな、というぐらい感謝に塗れています。日本語ラップの歌詞かと思うぐらい、先生は全てに感謝を捧げています。
そんな感謝の極み、「吾峠呼世晴 単行本コメント文学」ともいうべき世界を、18巻分今日は紹介させてください。その圧倒的感謝の姿勢は、全クリエイター必見です。
1巻 皆皆様に心から感謝
本を出していただきました。
ありがとうございます。
読んでくださった方々
歴代の担当さんたち
アシスタントさんたち
ジャンプ編集部の皆様
印刷所の皆様
本のデザインをしてくださった方々
他にもたくさん助けてくださった
皆皆様に心から感謝!
(引用:『鬼滅の刃』1巻 単行本コメント)
初の単行本に、全方位感謝の吾峠先生。ただし先生の凄いところは、この感謝の気持ちが、何巻になっても薄れないどころか、どんどん濃くなっていくところにあります。
2巻 小ボケを挟みながら、感謝
二巻が出ました。
ありがとうございます。
色んな方に御迷惑かけておりますが
これからも頑張ります。
近所のコンビニへ行く途中で
三回ゲロに遭遇しましたが
これからも頑張ります。
(引用:『鬼滅の刃』2巻 単行本コメント)
3巻 自分を奮い立たせながら、感謝
どうも吾峠です。
たくさんの方にご迷惑かけつつ
助けていただき、応援していただき、
三巻が出ました。
ありがとうございます。
己でさえも驚き桃の木です。
わりとすぐに、もうだめだ!と
思いがちですが、弱味噌の自分に
おいしいバナナなどを与えながら、
だめじゃないのかも…?と思わせて
もっともっと頑張ります。
(引用:『鬼滅の刃』3巻 単行本コメント)
4巻 冨樫先生と皆様に感謝
お疲れ様です。吾峠です。
冨樫先生にオビのお言葉をいただきました。
夢のようです。もう腹痛です。
冨樫先生、応援してくださる皆様、
手助けしてくださった皆様、
本当にありがとうございます。
一生懸命頑張ります。
(引用:『鬼滅の刃』4巻 単行本コメント)
この巻から、「お疲れ様です。吾峠です。」の挨拶が定着します。なお、お疲れ様ですの後に「。」がくるか「、」がくるかは、未だ定まっていません。
5巻 奇跡は応援してくれる皆さんのおかげだと感謝
お疲れ様です。吾峠です。
秋本先生にオビのコメントいただきました。
父も秋本先生のことが大好きだったので、
草葉の陰にて喜んでいると思います。
感無量です。
本当にありがとうございます。
人生とは基本的に努力をしても報われません。
報われた時は奇跡が起きているんだと思います。
今の奇跡は応援してくださる皆さんのおかげです。
皆さんありがとう、ありがとう。
(引用:『鬼滅の刃』5巻 単行本コメント)
『はじめの一歩』の「努力した者が全て報われるとは限らん。しかし、成功した者は皆、すべからく努力しておる」は漫画史に残る名言とされますが、こちらの吾峠単行本コメント文学もすごくないですか?
「人生とは基本的に努力をしても報われません。報われた時は奇跡が起きているんだと思います。今の奇跡は応援してくださる皆さんのおかげです。」
秋本先生のこと、すっかり霞んでしまったぐらいの名言ですよ。
6巻 ムキムキしながら感謝
お疲れ様です、吾峠です。
六巻!出していただきました。
応援してくださる皆さんのおかげで
今日もモリモリ漫画を描けています、
応援のお手紙、お菓子、バレンタインの
チョコレート、飲み物、粘土の炭次郎たち、
ありがとうございます。とても嬉しいです。
たくさんの方々に支えていただき、
そのおかげで作者はムキムキ頑張り戦闘員となり、
ムキムキ頑張れます。
いつも感謝の言葉に結構なタイムラグができて
しまうので、申し訳ないです(泣)。
(引用:『鬼滅の刃』6巻 単行本コメント)
7巻 現実を忘れて少しだけでも楽しい時間を過ごして欲しいと感謝
お疲れ様です、吾峠です。
七巻出していただきました!
応援してくださる皆さん、手助けしてくだ
さった皆さん本当にありがとうございます。
作者は最近味噌炒めにハマっており、週末
目についたものをすぐ味噌で炒めておりま
すが皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
様々な困難があるかと思いますが、本作を
読む間、現実を忘れて少しだけでも楽しい
時を過ごせていただけたら嬉しいです。
(引用:『鬼滅の刃』7巻 単行本コメント)
味噌炒めの枕も好きですが、今回もシリーズ屈指の吾峠単行本コメント文学です。
「様々な困難があるかと思いますが、本作を読む間、現実を忘れて少しだけでも楽しい時を過ごせていただけたら嬉しいです。」
これこそ、全てのエンターテイメントの本質ではないでしょうか。
8巻 お金で買えない読者の健康を心から祈りながら感謝
お疲れ様です、吾峠です。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。
健康はお金で買えませんので、
皆さんが元気でもりもりしていることを、
心から祈っています。
たくさんの応援、お菓子やお茶、
手作りのグッズを送っていただき
ありがとうございます。
作者は鼻血が出るほど毎日大興奮です。
鼻血出た時はティッシュを詰めて上から
マスクをしていますから大丈夫です。
(引用:『鬼滅の刃』8巻 単行本コメント)
『鬼滅の刃』の主なファン層はきっと若者なので、もしかしたら吾峠先生が何を心から祈ってくれているのかわからないかもしれません。でも僕は40歳なのでわかります。健康は、絶対にお金では買えないのです。
9巻 親切にしてくださった皆さんの幸福を祈りながら感謝
お疲れ様です。吾峠です。
9巻出していただきました。応援して
くださる皆さま、手助けしてくださる
皆さま、本当にありがとうございます。
漫画は読んでもらえなければただの紙なので、
誰かが手にとって本を開いてくれるのは
とても光栄なことです。
皆さんの幸せを願って感謝砲を発射します。
すぐ眼鏡のずれる作者に
親切にしてくださった皆さんが
いつも幸福であることを祈っております。
(引用:『鬼滅の刃』9巻 単行本コメント)
吾峠単行本コメント文学は、クリエイティブやエンタテイメントの本質を、感謝の言葉を添えて言い表します。
「漫画は読んでもらえなければただの紙なので、誰かが手にとって本を開いてくれるのはとても光栄なことです。」
10巻 節目を迎え今後の飛躍を誓いながら感謝
お疲れ様です。吾峠です。
10巻出していただきました!
応援してくださる皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます。
たくさんのお手紙や贈り物に心から感謝です。
コイツ育ててやったん、ワシやで?っという
ふうに、是非とも威張ってください。
フフンと鼻を鳴らしながら海老反ってみるのも
楽しいかもしれません。
読者の皆さんのために戦闘力を上げ、攻撃防御を
意のままにし、これからも頑張ります!
(引用:『鬼滅の刃』10巻 単行本コメント)
11巻 作品に時間を割いてもらうことに感謝
お疲れ様です。吾峠です。
11巻です!しがないワニの輪を広げてくださって
ありがとうございます。
皆さんが大切な時間を、この作品のために使ってくだ
さることへの感謝は、どれだけ言っても足りません。
もしや前世では共に戦う仲間だったのではと
思っています。泣きそうです。
すっぽんぽんで逃げ出したくなる時も、読んでくれ
る人がいるのだ!自分はひとりではないのだ!
と思うと、踏ん張れるのです。
もっともっと皆さんに楽しんでもらえるよう
シャカリキ頑張ります。
(引用:『鬼滅の刃』11巻 単行本コメント)
仕事をしているとよく「現代ではユーザーの可処分時間をいかに奪うかががががが」などの薄い言葉が表層のみで飛び交いますが、吾峠単行本コメント文学の世界において可処分時間を割いてくれる読者とは「前世で共に戦った仲間」であり「シャカリキ」や「すっぽんぽん」の原動力なのです。みんな、反省しよう。僕も反省します。
「皆さんが大切な時間を、この作品のために使ってくださることへの感謝は、どれだけ言っても足りません。」
12巻 アニメ化決定に感謝
お疲れ様です。吾峠です。
鬼滅アニメ化を自分のことのように喜んでくださった
皆さま、本当にありがとうございます。
祝福のお言葉、贈り物、まごころの海で
幸せに揉まれて肩こり頭痛が吹き飛びました。
鼻水だけまだ出ます。個別にお返事やお返しが
できず申し訳ありません。
たくさんの幸運に恵まれ、優しい方々の手助けや
応援により助けていただいております。
親切にしてくださった皆さまのご健康と幸せを
どんな時も心から祈っています。
(引用:『鬼滅の刃』12巻 単行本コメント)
応援はもちろん、「親切」に感謝を捧げるのが、吾峠単行本コメント文学の特徴です。9巻でもでてきたキーワードですが、貴方は親切にしてくれた誰かへの感謝を、これほど素直に言葉にできますか? 僕はできません。
13巻 辛い時に読んでくれる皆様に感謝
お疲れ様です。吾峠です。
13巻を出していただきました!
応援してくださる皆さんのおかげです、
ありがとうございます。
アニメの方も、声優さんが続々と決定し、
作っていただいております。
最近は天災が多いですが、そんな大変な中でも漫画を手に
とって読んでくださる方々、本当にありがとうございます。
苦しいことや、ぐっと辛抱しなくてはならないことは
誰のところにも次々とやってきますが、
ほんの少しの間でも、楽しんでいただけたら、
前向きな気持ちになっていただけたら嬉しいです。
(引用:『鬼滅の刃』13巻 単行本コメント)
7巻に続き、エンターテイメントの在り方を吾峠単行本コメント文学が訴えかけます。
「最近は天災が多いですが、そんな大変な中でも漫画を手にとって読んでくださる方々、本当にありがとうございます。
苦しいことや、ぐっと辛抱しなくてはならないことは誰のところにも次々とやってきますが、ほんの少しの間でも、楽しんでいただけたら、前向きな気持ちになっていただけたら嬉しいです。」
よくスポーツやエンタメでは「勇気を与える」という言葉が用いられますが、それはあまりにも驕った言い回しなのかもしれません。
14巻 評価をしてくれる人の心映えや感性こそが素晴らしいと感謝
お疲れ様です。吾峠です。
14巻出していただきました!
アニメやフィギュア、グッズなども
たくさん作っていただいて光栄です。
ひとえに、応援してくださる皆さまのおかげです。
色々な方から評価していただいていますが、
何かを素晴らしいと思ったり、感銘を受けたという場合は、
そう感じることができた方の心映えや感性が
素晴らしいのだと思っています。
そのような方々が自分の本を手に取ってくださることへ、
心から感謝します。
(引用:『鬼滅の刃』14巻 単行本コメント)
吾峠単行本コメント文学最高傑作の1つです。
「色々な方から評価していただいていますが、何かを素晴らしいと思ったり、感銘を受けたという場合は、そう感じることができた方の心映えや感性が素晴らしいのだと思っています。そのような方々が自分の本を手に取ってくださることへ、心から感謝します。」
一体何をどうすれば、ここまで読者に感謝できるようになるのでしょうか。
15巻 素晴らしいアニメの出来栄えに感謝
お疲れ様です、吾峠です。
15巻出していただきました!
応援してくださった皆様本当にありがとうございます。
アニメの方も出来上がってきております。
一足先に見せていただき、素晴らしい映像、
美しい音楽に、もうガクガクブルブルしております。
自分が漫画家にもなれていない頃、
夢中で見ていたアニメ作品を作っていたufotableさんに、
自分の作品を作っていただけるとは夢にも思っていませんでした。
ですが、いかにアニメが素晴らしくても原作が面白くなければ、
たくさんの方に迷惑をかけてしまいますので、
これからも努力精進していきます!
(引用:『鬼滅の刃』15巻 単行本コメント)
アニメの出来栄えに対し、「感謝」とともに芽生えたのは、「迷惑をかけてはいけない」という気持ち。これもまた、吾峠単行本コメント文学の特色の1つです。
16巻 新しく読み始めてくれた人に感謝
お疲れ様です、吾峠です。
16巻!出していただきました。
大きくお話が動きはじめます。
応援してくださる皆さま、本当にありがとうございます。
お知り合いの方にも本を勧めたよ!その人もハマった!という
お声もいただき、とても嬉しく思っております。
一度噛んだら放しませんワニなので。
アニメから漫画を読み始めてくださった方もいらっしゃるようで、
興味をもっていただき感謝しております。
もっともっと面白くなるように一生懸命頑張りますので、
これからもよろしくお願いします。
(引用:『鬼滅の刃』16巻 単行本コメント)
17巻 キャラが傷ついていくことにお詫びをしながら感謝
お疲れ様です、吾峠です!
17巻を出していただきました〜。
だんだんと過酷な戦いになっております。
自分の好きなキャラが傷ついたりすると可哀想ですし、
読んでいてしんどいので、あまりやりたくないのですが、
命をかけた戦いを
しなければならない世界なので申し訳ないです。
最後まで誠心誠意頑張りますので
よろしくお願いします。
(引用:『鬼滅の刃』17巻 単行本コメント)
基本的に前向きな吾峠単行本コメント文学の世界にあって、やや異質な印象を受けるのがこの17巻です。
ストーリーが佳境に入り、人気の高いキャラたちの死も描いていくしかない中、単行本コメントの中で初めて「作品内容」に触れます。
もしかしたらアニメ人気の爆発によって、吾峠先生のもとには数え切れないぐらいの応援とともに、想像を絶するぐらいの嫌がらせの手紙や苦情の声が届いているのかもしれません。
それでも真摯に作品として完遂させることを読者に誓う吾峠先生。
「最後まで」という言葉は、やはり無惨戦の終わりとともに作品も終わることを意味しているのでしょうか。
18巻 ブームに戸惑いながら感謝
お疲れ様です!吾峠です。
18巻を出していただきました。
応援してくださる皆さま、
本当にありがとうございます。
素晴らしいアニメを作っていただいたおかげで、
本を手に取ってくださる方も増えたようで、
大変恐縮しております。
まさかこんなことになるとは思いもよらず、
複数の意味で震えております。
変なタイミングで掛け布団を
クリーニングに出してしまい毎日寒いですが、
布団が帰ってくるその日まで
たくさん着込んで頑張ります。
(引用:『鬼滅の刃』18巻 単行本コメント)
鬼滅は疑いようのない傑作ですが、2019年にあまりにも売れすぎました。一番戸惑っているのは、吾峠先生自身なのかもしれません。久しぶりのやや小ボケを挟んだコメントに一抹の不安を覚えつつも、今なお「単行本を出していただきました」と言えるのが、圧倒的感謝の気持ちで形成される吾峠単行本コメント文学の世界なのでしょう。
最後に 1巻収録の吾峠先生の「感謝の言葉」
感謝の言葉
作品を読んでくださった皆さん
本を買ってくださった皆さんありがとうございます。
たくさんの応援のおかげで今も連載ができています。
感謝の気持ちでいっぱいです。
漫画は水や食べ物違って生きていくために必ず
必要なものではありません。
それを買ってもらうということは、とても難しく
大変なことです。本当にありがとうございます。
たくさんの方々に助けていただいて漫画を作って
います。
皆さんに面白いと思ってもらえるように
もっともっと努力して頑張りますので
これからもよろしくお願いします。感謝!!
(引用:『鬼滅の刃』1巻 単行本内コメント)
その時々の違いはあれど、吾峠単行本コメント文学は、まだまだ人気の低かった1巻の頃から4000万部を超えた現在に至るまで、なに一つ変わっていないのかもしれません。
「漫画は水や食べ物違って生きていくために必ず必要なものではありません。それを買ってもらうということは、とても難しく大変なことです。本当にありがとうございます。」
というわけで僕たちも吾峠先生に感謝を捧げながら、最新単行本19巻を買いましょう。上弦の戦いの続きとともに、また素晴らしい単行本コメント文学の世界を見せてくれるはずです。
Amazon、入荷待ちで買えないんだけどね。