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産後に起こる痔をどうにかしたい方へ…!

本日は産後に起こる体のトラブルの中でも、症状として抱えている人が多そうなのにあまり語られていない「痔」の症状について、運動学的な視点から、以下の流れでお話ししたいと思います。


痔が起こるメカニズム

簡単に述べると、排便時の「いきみ」や、長時間の座位姿勢などにより肛門周囲に負担がかかり肛門周囲の血流(静脈血)が滞ることで起こります。肛門周囲の皮膚は、痛みを感じる神経が豊富に存在するために痛さを感じるようです。

こちらのサイトを参考にさせていただきました。

こちらのサイトには、特に女性は出産時にも痔になりやすいといった内容が書かれておりました。

出産は、かかる時間が人によって異なりますが、長時間腹圧を強くかけ続けるとともに、赤ちゃんの体で肛門周囲が圧迫されるため、痔の症状がでやすいということです。

産後に痔は辛すぎる…!

痔の症状を解消するために、生活の中で気をつけることとしては、以下のことが挙げられます。

・肛門周囲を温める
・清潔にする
・膝を曲げて、横向きに寝る
・全身の力を抜く
・刺激の強い食事(辛いものやアルコール)を避ける
・適切に水分を摂る
・食物繊維を摂取する(ごぼうや大豆、穀類、海藻類など)
・十分な睡眠時間を取る
・軽い運動(力を強く入れないもの)を行う

でした。以下のサイトを参考にさせていただきました(さすがのボラギノール!)


これらの対策は、産後でなければ取り組めるものですが、産後の忙しい時期、かつ自分よりも赤ちゃんを優先に考える時期には取り組みづらいものもあると思います。

また、そもそもの育児動作が、肛門に負担のかかるものがいくつもあります。
・授乳中の座位姿勢保持(しかも自分の都合で姿勢を変えられないことも…)
・抱っこ(抱き上げる時に腹圧がかかり、刺激が加わります)
・沐浴(抱っこよりもきつい姿勢で赤ちゃんを支えるのに腹圧がかかります)

などなど…

さらには、産後に腰痛を抱える人も多いのですが、産前から続く「反り腰」が痛みに繋がります。
立っていると段々反り腰が助長され、痛みが出てくる→座ると腰は一時的に楽になるものの痔によって肛門が痛い→また立ち上がると腰が痛くなる…
という悪循環にハマってしまうこともあります。

ですので、産後はとても肛門に負担のかかる動作が多く、なかなか対策も行いづらいという問題があり、さらには他のトラブルと重なり症状はより一層つらくなる、という状態に陥りやすいです。

誰でもできる、痔の対策

僕自身の経験も踏まえて、すぐに取り組めて、効果があると感じた対策はこれです。

「排便時に骨盤を後傾させる」

です。
ちなみに、座る時にも骨盤を後傾させると痛みが減少する感覚もありました。

そもそも、「骨盤を後傾する」というのはどういう動きかというと、「骨盤を後ろに倒し、腰を丸める」ような動きです。


左が骨盤後傾、右が骨盤前傾のイメージ図

↓こちらから引用させていただきました。
https://www.ac-illust.com/main/search_result.php?word=%E5%89%8D%E8%85%95&search_word=%E9%AA%A8%E7%9B%A4%E5%BE%8C%E5%82%BE&page=0

では次は、なぜ骨盤を後傾させると良いのか、ということについてですが、それは、

骨盤後傾によって排便時のいきみが減る

からです。
僕自身の体験では、グッと腹圧をかけなくても、スルッと出てくれることが増えました(その時の食事内容やその他の状態にも左右されますので、必ず、というわけではありませんでした)。
そして痛み自体もかなり抑えることができました!

なぜこうなるのか、というと、実は大腸の位置が関係しています。

大腸の中の終点(肛門の)である直腸は以下の画像のような形になっています。

大腸を左から見た図
(Visible Body®️より引用)


この図からわかるように、肛門は下方というよりも後方を向いています。
骨盤前傾(図で言うと骨盤が反時計回りに動く)すればさらに肛門は後方を向き、便の通り道が曲がります。
骨盤を後傾(図で言う骨盤が時計回りに動く)させた方が、肛門が下を向き、排泄する方向が地面に対して垂直に近づくようです。
そういった点からも骨盤は後傾した方が排便はしやすくなります。

また排便時のいきみ、についても骨盤を後傾した方が肛門にかかる負担が減ると考えられます。

骨盤が前傾したままだと、骨盤底筋が過剰に引き延ばされてしまうために収縮しにくく、グッとお腹に力を入れてもお腹の圧が抜けてしまい、必要以上の力を出さなければなりません。

骨盤底筋は腹筋(腹横筋や内腹斜筋という筋肉)と同期して収縮する、といったことを言及している論文もあります。
骨盤底筋の収縮を維持できると、腹圧もかけやすく、そこまで強くいきむことなく、いきむ時間も短縮されると考えられます。

基本的に排便時に意識していただければ良いと思いますが、骨盤後傾方向に動かしていただくことによって腰痛や骨盤痛の対策になりますので、痔の痛みを緩和する以外にも取り組んでいただくメリットがありますのでぜひともやってみてください。


骨盤後傾を行う上での注意点

産後に骨盤後傾を意識すると、一時的に強く腰痛を感じる可能性があります。

産前産後に特徴的な姿勢として「反り腰」が挙げられますが、特に産前、お腹が大きくなってからはほぼずっと反り腰(骨盤前傾)が続きます。
すると、腰の周囲の筋肉は緊張状態が続き、引き伸ばされる時にストレスがかかることで痛みを感じてしまいます。

骨盤後傾は、腰の筋肉を引き伸ばす方向に動かすため、反り腰が長く続く産前産後に行う際にはあらかじめ準備をしておく必要があります。
以下にその具体的な方法を書いていきます。

○呼吸に合わせて行うことで痛みを減らす
まず一つ目として、うまく呼吸を使うと痛みを減らし、かつ後傾運動が起こりやすくなります。
特に息を吐く時に腰周りの筋肉は緊張が緩和し、骨盤が後傾しやすくなりますので、吐きながら後傾方向に動かす、ということをやってみるとよいかと思います。

また呼気を長く行うことで痛みを感じにくくする効果もあります。

息を長く吐くようにし、息を吐き切る直前に下腹部を少し上に持ち上げる(お腹の中にいる赤ちゃんを、腹筋で上に持ち上げるイメージ)ように力を入れると骨盤は後傾していきます。

骨盤だけを分離させて動かすよりも、背中全体を丸めるように動かした方が痛みもより少なくなります。
この姿勢はまさにトイレに座っている時の姿勢です。
背中全体を丸める意識をすると骨盤後傾はやりやすくなると思います。

○背中の筋肉をほぐしておく
もう一つは、動作によって緩めるのではなく、マッサージなどを行ってあらかじめ緩めておく、という方法です。

産後は腰の緊張が抜けにくいため、呼吸を意識しても、姿勢を変えても、うまく骨盤を後傾できないこともあります。
そんな時には、手を使って緩めてしまおう、ということです。

自分自身で行う方法
「手で触れる」ということ自体にリラックス効果があります。これは心理的にも身体的にも効果があると言われています。

これは他者から(信頼関係がある人に限ります)触れられても、自分自身で触れても同じようにリラックスできると言われていますので、ご自身でやっていただいてもOKです。

しかし、マッサージのやり方には注意が必要です。

・指先で押さない
・グリグリと速いスピードで動かさない
・強い圧をかけない

ということが大事です。
ので、

・手のひらを使う
・なでるようなゆっくりとしたスピードで動かす
・手のひらで包み込むような軽い圧を加える
以上の点に気をつけて、腰を触れてみてください。

他の人にほぐしてもらう方法

先程述べたように、体は「触れてもらう」だけでも緩みます。
ただそのためには、
元々の信頼関係が必要
痛みを伴わない触れ方が重要

ですので、

・手のひらを使う
・なでるようなゆっくりとしたスピードで動かす
・手のひらで包み込むような軽い圧を加える

といった触れ方の要点は、他者にほぐしてもらう上でも意識してもらってください。
そしてさらに、産後の腰はデリケートです。腰に直接触れられることに抵抗がある人もいると思います。
その場合は、腰より少し上の肩甲骨と背骨の間あたりをほぐしてもらうのも、腰回りの緊張を緩和する効果があります。

もしくは、
・お腹に手を当てる
・肋骨の下の方に手を当てる
という方法もあります。
これは、先程述べた「息を吐く」ことをアシストしてくれるので、リラックス効果だけでなく呼吸の練習にもつながります。
腰に触れられるのが少し怖いという方はこちらの方法でためしてみてください。


以上が、骨盤後傾を行う上での注意点となります。その対策も参考にしてみてくださいね。

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