「新しい芽」と共に

■ 店長日記  2005.10.22

新スタッフが揃って約1ヶ月が経ちました。

当店のスタッフは店長の私。

去年から頑張ってくれている古株の健ちゃん。

5月に入った副店長の真哉くん。

先月頭から入った料理長の暢也くん。

先月中ごろから入った仁くん。

同じく先月中ごろから入った征志くん。

同じく先月中ごろから入った翔一くん。

以上、7名であります。

「 本格焼酎 黒ヂョカ 」 がオープンしたのが2003年2月。

そのころ私は新宿・歌舞伎町にある「江戸一」「小江戸」という
居酒屋さんでほぼ毎日アルバイトに励んでおりました。

盛岡でのラーメン修行を決意し、盛岡の街にちょこちょこ来だ
したのが2003年8月から。

盛岡の飲み屋さんを飲み歩いていたとき、たまたま「黒ヂョカ」
というお店に出会いました。

当時、新宿のお店でお酒の担当を任されており、黒ヂョカでの
提供の仕方もいろいろと研究しておりました。

都内でも「黒ヂョカ」で焼酎を出すお店が何軒かあり、.....
........といっても、今となってはあまり珍しくなくなって
しまったと思いますが。

そんなときです。

盛岡の大通りを歩いていたら、真っ黒い看板に”黒ヂョカ”の
文字が。

ん?!

黒ヂョカ?!

すごく気になりました。

当時、林家パー子さん並になんでもかんでもデジカメで撮っ
ておりましたので、まずはこの看板を一枚。

そして、私はエレベーターに乗り4Fへ。

ガーー。

エレベーターの扉が開いた。

紺色の暖簾の隙間から少しだけ店内が見えた。

ジャズの音楽も聞こえ、なんとなく良さそうな雰囲気。

暖簾をくぐると、すぐ左手に十四代をはじめ拘りの日本酒が。

そして、外国のビールも。

えっ?!

ここのお店スゴそう!

私は一人カウンターに座った。

当時、寿司&焼酎のお店だったのでカウンターにはネタケー
スが。

そして、目の前には焼酎のビンがズラリと並ぶ。

えッ!

チンタラリがある。

んッ!

ななこもある。

あれッ。

流鶯もある。

当時、既に焼酎にはまっていたので、いろいろと銘柄を知って
いるつもりであったが、ここのお店には今まで見たことがない
様な焼酎が普通に並べられていた。

久ぶりに心がときめいた。

なんだここのお店は。

ちょっと普通じゃないぞ。

当時のマスター(元のオーナー)がおすすめしてくれた焼酎に
私はとことん酔いしれ、そして本当に満足した夜を過ごした。

その後も盛岡に来るたびに、私はこのお店に足を運んだ。

そして、来るたびに違うお酒を頂いた。

とても楽しかったし、とても充実していた。

そして。

2004年1月、私は盛岡に移り住み、元オーナーのY氏にお誘い
を頂き、「 黒ヂョカ 」 の副店長として働かせて頂くことになる。

.........それから1年が過ぎた。

2005年1月、Y氏のご好意により私は盛岡の焼酎専門店、
「 本格焼酎 黒ヂョカ 」 のオーナーとしてお店に立たせて
頂くことになった。

飲食店を目指し会社を辞めた私が、その夢を掴んだ瞬間で
あった。

やるぞー。

私は静かなる闘志を燃やした。

何年前ぐらいでしょうか?

母がある新聞の切抜きをくれました。

詩の切抜きです。

題名は”波紋”。

ここでその詩を紹介したいのですが、残念ながら正確な詩の
内容は覚えていません。

ですが、なんとなくこんな内容でした。

ある静かな湖に一つ石を投げ込んだ。

するとそこに波が発生し、どんどん広がった。

また一つ投げ込んだ。

するとまた、その波がどんどん広がった。

良い石。

悪い石。

投げればその波はどんどんと広がって行く。

良い石を少しずつ。

一つでも多く、投げよう。

....ん~。

上手く書けないのがとてももどかしく残念ですが、当時私はこ
の詩に強く心を打たれました。

例えば笑顔で「ありがとう」。

目には見えませんが、その一言がこの詩で言う”良い石”だと
思うのです。

さり気無いその一言が、きっと沢山の笑顔を生む。

私はそう信じています。

無邪気に微笑んだ子供の笑顔を見ると、なんだかこっちまで
ニコニコしてしまいます(笑)。

本当に不思議ですよね。

でもそれが”人”なんです。

私は飲食を目指し14年勤めた会社を辞めました。

”ラーメン”と”お酒”に自分の人生をかけてみたい。

そう思って辞めました。

”ラーメン”と”お酒”。

もちろん、本当に美味しいものをお出したい。

これも一つの目的ではありますが、しかし私にとって本当の
目的はこの”波紋”であります。

提供する側と提供される側の喜びの共有。

そこにはいつも笑顔があり、喜びがある。

これが飲食をやる目的であり醍醐味であると私は考えます。

そしてお店で生まれた”笑顔”はきっと世の中にゆっくりと広が
って行く。

私はそう信じています。

一つでも多くの良い石を。

それが私の理想であり、目的であります。

今年からお店を経営することになり、早いもので10ヶ月が過ぎ
ようとしています。

そして今、「 本格焼酎 黒ヂョカ 」 は新たなるスタッフでスタート
致しました。

私はこのお店でどこまで自分の理想に近づけることが出来るの
か。

今、当店のスタッフはほぼ新人さんで構成されています。

ですから、まだまだ未熟です。

しかし。

可能性はあります。

みんないい奴なんです。

ちなみに新人さんはみな、私と同じ元「黒ヂョカ」のお客さんで
あります。

みんな焼酎が本当に大好きで、自分から志願してくれた人ばか
り。

お酒が好き、そしてお店が好き。

これってとても大事なことだと思うんです。

私は本当によいスタッフとめぐり会うことが出来ました。

私は今、一歩一歩その階段を上がろうとしています。

良い波が生まれる。

そんな理想のお店に向けて。

一歩一歩。

輝きを秘めた、その「新しい芽」と共に。

一つずつ。

一歩一歩。


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