新年に杉玉を作ったときの話
2016年1月3日
このあたりでは有名な造り酒屋の玄関先に、丸い大きなくす玉のようなものがぶら下げてあるのを、あれはなんだろうなあとずっと不思議に思っていました。
大きなハチの巣を軒先に飾るお宅もありますので、酒屋のくす玉もその類かと思っていましたが、先日調べてみたところ、しっかりと意味があったのです。
諏訪の造り酒屋が立ち並ぶ通りを、偶然車で通り抜けたときのことです。
趣きある構えの屋敷がぽつぽつと並んでいる、そのどれもに例の丸いものがぶら下がっていましたので、なんとなくそこが酒屋であることが知れました。
丸玉は大小に差こそあれ、色形や素材は同じもののようでした。
きっと酒屋の文化のようなものなのだと思いました。
まちがっても趣味のハチの巣ではなさそうです。
調べてみると、その丸い玉は、小さいものならば自分でもつくることができそうだったので、さっそく材料を集めることにしました。
必要なものは、杉の枝、ハリガネ、剪定ばさみです。
ただ、芯に使うものがハリガネというのが気に入りません。
しかし完成するとかなりの重量になるとのことなので、芯とそれを吊るすためのヒモは頑丈にしなくてはならないらしい。
ううむ。
悩んだ結果ハリガネではなく、1年ほど前に輪にしておいたウメモドキのツルを芯にしてみることにしました。
そしてウメモドキだけでは足りない強度を麻ひもとのコンビネーションで解消しようと思います。
先にも書きましたように、造り酒屋のものは、くす玉状のまんまるいものです。
自分はこのドーナツ型にしてみました。
してみたというよりも、そうなったといいますか、ウメモドキの輪を解いて球にしようとやってみたのですが、1年経った蔓はすっかり乾ききっていて、解こうとするとぽっきりと折れてしまったのでした。
水に浸したら、あるいは柔らかくなるかなとも思いましたが、きっと幾日か漬けておかなくてはならないでしょうから、待っていられません。
初めて作るくせにレシピを無視するあたり、既に暗雲立ち込めているような気がしますが・・・。
いよいよ杉をさしていきます。
杉は葉が枝先に向かってとげとげと生えているので、いったん土台に差してしまえば簡単には抜けません。
途中気に入らなくなって、一度全て取り外してやり直したのですが、差した枝が抜けなくて大変な思いをしました。
材料が足りなくなったので、補給してきました。無駄に用意しても勿体無いので、不足を覚悟で少しずつ。
言い忘れていましたが、造り酒屋のくす玉の名前は「杉玉」といいます。
ワイヤーをボール状に形成した芯に、杉の枝を隙間なく差して形作っていきます。
仕上げに丸くカットしてあげれば完成です。
さて、もりもりの杉玉ドーナツができました。
刈り込んでいきます。
本来ならば、毛糸のぽんぽんを作るときのように、短いボウズにするようですが、短くしすぎてアラが出てくるとイヤだなあと思うと、なかなか刈り込んで行くことができません。
想像以上に巨大なものができてしまい、少し戸惑っています。
これを作ったのは年の瀬でしたが、どうもクリスマスに似合う気がします。
次のクリスマスは1年後ですけれども・・・。
杉玉の意味は
青い杉玉は新酒を仕込んだよ、というお知らせだということです。
その時には青い杉玉も、時が経つにつれだんだんと枯れていきます。
それはまた、仕込んだお酒がそれだけ熟成したんだよ、というお知らせになるという天然の広告なのでした。
ということは、年に一度、あのくす玉が青くなるということなのでしょうか?
今でも毎年取り替えているのかわかりませんが、その習慣が過去のものとなっていないことを願いつつ、これからは杉玉の色に注目して眺めていきたいと思ったのでした。
やっぱり翌日になって、もう少し刈り込むことにしました。
日本庭園の松の木のように、さっぱりと仕上げるつもりで剪定バサミを握ったものの、やっぱり思い切れなくて、あいまいな感じになったのでした。
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