[DIY][カリモク]打ち捨てられた椅子は珠玉の逸品
2015/06/06
少し前の話です。
近くの山林を散歩していたら、不法投棄に怒り悲しむ土地の方がいました。
気の毒だと思いながら見ていると一脚の椅子が目に止まりました。
少し古そうなデザインだったけど、手の掛かった丁寧な作りに見えたのです。
興味を持って近付くと「karimoku」との表記が見て取れました。
僕は土地の人に言いました。
「これはカリモクの椅子です。良いものですよ。」
土地の人は、不法投棄された椅子を横目で見ながら、
「要らないよ、こんな汚い椅子…」
「では、お譲り頂けませんでしょうか?」
「いいよ、いいよ!持ってて貰えたら助かるよ!」
「ありがとうございます。大事にします!」
僕は「カリモクの椅子」を手に入れました。
綺麗にして使うつもりですが、もし致命的な欠陥があったとしても、バラして作り方を学ぶことが出来るし、他の何かに流用することも出来るかもしれません。
木製なので最後は薪にすることも出来ます。
幸せな気持ちで帰途につきました。
1.椅子をバラしてクリーニング
長期間、野外に放置されていた椅子です。簡単に拭いたくらいではとても使えそうにないので、先ずはバラし、徹底的にクリーニングをしました。
ブラシで擦ってもとれないコケはスクレーパーでこそぎ落とします。
各部点検してみましたが、大きな損傷もないようなので、再度組み立てれば使えそうです。
写真はありませんが、座面のシートは洗ったところで使う気にはなれなかったので(痒くなりそう)捨てました。
随分昔に買ったレザーがあるので、それを座面のシートに使おうと思います。
シートの下に入っているスポンジの様なクッションは、熱湯で消毒したり重曹に漬け込んだりして洗いました。
洗い終わったら丸一日天日干しです。
2.塗装準備
バラバラになったパーツを点検すると、所々コーティングが剥げ落ちていて乾燥し、白っぽくなっているところもありました。
グラインダーで表面のコーティングと、落としきれなかった汚れを削り落とすことにします。
3.オイルステインで着色する
サンダーで磨かれたパーツは、塗装がとれ白っぽくなりました。
着色して見栄えを良くするために、油性のオイルステイン(チーク)を染み込ませます。
ステインはスポンジで2度、染み込みの悪いところは3度、重ね塗りをしました。
4.組み立てる
古いボンドを出来るだけ削り落とし、新しいボンドを流し込み、当て板の上からハンマーで叩き入れます。
ただのダボ止めではなく、角度の付けられた凸凹だったし、多くの材には綺麗なカーブがつけられていました。
とても真似出来ません。
また、背もたれの一番下部分だけが少し飛び出ており、この突起のお陰で腰がサポートされ、長時間座っていても疲れないのです。
『一流の職人さんに憧れます』僕がもっと若くて他にやるべきことがなければ、家具職人として尊敬出来る方に弟子入りしたいなぁなどと、夢想しながら組み立てをしていました。
5.ブライワックス(ジャコビアン)で仕上げる
ワックス掛けは、ステインがしっかりと乾燥するのを待ちたかったので、暫く経ってから行いました。
以前、ブライワックスのクリアを使った時の仕上がりが気に入ったので、今回も仕上げにブライワックスを使うことにします。
ブライワックスの仕上がりは好きですが、ローコスト生活の小屋暮らしには若干高価なので、これは僕の中で[勝負ワックス]扱いです。
また、ジャコビアンという色は使ったことが無かったし評判も良さそうに思えたので、一度は使ってみようと購入を決めました。
コーティングは以前のクリアと同じく優秀だと思いました。
他の天然系ワックスと比べ、艶や撥水性能が優っていると感じます。
ジャコビアンという色もアンティーク調で落ち着きのある使いやすい色だと思いました。
※今回はステインで下色を付けているので、色味は純粋なジャコビアンではありません。
オイルステイン(チーク)で下色を付けた上に、ブライワックス(ジャコビアン)で仕上げです。
5.レザー張りの座面へ
新たに購入するなら合皮を探すと思うのですが、過去に買ったものを無駄にすることもないので、今回はレザー張りの座面にします。
無駄のないように切り出すべきですが、素人の僕には少し難易度が高く不安だったので、大きめにカットし、タッカーで止めました。
もっと濃い色の方が似合いそうですが、有り物で作れたので良しとします。
古い椅子でしたが、良い材、良い塗料を使用していた為か、どこも腐ることなく、少し手を掛けただけで立派に再生出来ました。
古いデザインかもしれませんが、素晴らしい技術の詰まったこの椅子を大事に使っていきたいと思います。