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【読書記録】ティファニーで朝食を

お正月に実家に帰省して、自分の部屋の本棚で『ティファニーで朝食を』を見つけたので、今年1冊目の読書はこの本に。
高校生か大学生のときに自分で買ったのは間違いないんだけど、全く中身の記憶がない。
多分当時は全くささらなかったんだと思う(読み切ったのかも不明)。

初版発行は昭和43年とのこと!

本を読んだからなのか、一般常識の範疇なのか、知っていたのは主人公ホリーはティファニーでお買い物できる優雅な生活は送ってないってことと、ティファニーは朝食を出してないということくらい。

映画も見たことなかったけど、ビジュアルは有名ですよね。黒いドレス・何連ものパールのネックレス・ブロンドのお団子にティアラのオードリー・ヘップバーンの姿(まさにこの文庫本の表紙もそれです)。
可愛らしくて上品で凛としていて、かなり憧れです。

ちなみに、本を読み終えた後にHuluで映画を観たんだけど、うん、これは原作とは別の作品だと思うべきなんですね。
原作知らなければラブストーリーとして楽しめたのかもしれないけど、原作ホリーの魅力とは描き方が違ったかな。
オードリー・ヘップバーンがひたすら可愛いことと、窓際でのムーンリバー(この映画の劇中歌だっとことをこのたび初めて認識しました・・・)のギター弾き語りがめっちゃよかったです。
映画の感想はそういうわけで以上。

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ここから本の感想を書きます。こんな名作に今さらネタバレもないかもしれないけど、一応、未読の方はご注意くださいませ。

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まず、主人公のホリー。抜群に男性にモテる。それは、性の対象だったり、連れて歩くアクセサリーだったり、ビジネス(密売含む)に利用するためだったりもするけど、この本を書いている「私」や行きつけのバーのジョー・ベルさんのように、淡い愛情を自覚しながらも彼女の自由気ままさや純粋さや危うさに、心からの親愛の情や心配してくれる人もいる。
ホリー自身、無意識かもしれないけれど、相手が望む自分を見せている。でも、自分に嘘はついていないし、そんな生き方をちっとも否定していない。
たぶんホリーにとっては、常に真剣で一生懸命生きているんだと思う。

そんなホリーが心から愛していたのは、弟のフレッドと、拾ってきた猫。弟への愛ももちろんだけど、いったん手放した猫を探しに戻るシーンは胸が締め付けられました。偶然出会っただけだから私が所有してるわけじゃない、だから名前はつけないの、っていうドライな感じで接していたのに、やっぱりホリーも人の子なんだな、愛の人なんだな、という印象を持ちました。猫ちゃんは新しい飼い主に出会えて本当によかった。それを何週間も探し歩いて見つけた「私」もありがとう。

一番最後に「私」はホリーに安住の地が見つかることを祈ってるんだけど、きっと彼女はひとところにとどまる生き方は今後もしないと思う。

途中に出てくるアイテムでとても印象深いものがあって、それが、骨董屋のウインドーに飾られていた宮殿みたいな鳥籠。”いくつもの尖塔のついた回教寺院の形”をしているらしく、異国情緒あふれるノスタルジックな描写だと思う。
「私」は心ひかれながらも高額だからいつも見ているだけだったんだけど、あるクリスマスにホリーがプレゼントしてくれたんですね。鳥籠なんだけど「中に生き物をいれない」という約束で。

ホリーと別れてから「私」は世界中(モロッコだの西インド諸島だの)に転居しているんだけど、その鳥籠は手放していない。じゃあ、今でも鳥籠を見てホリーを思い出してセンチメンタルになっているのかと思いきやそうじゃなくて、贈り主がホリーだということはめったに思い出さないらしい。
それこそが、ホリーがこの世界のどこかで自由気ままに人生を謳歌できていることの表現なんじゃないかなと思っています。
相変わらず騙されたり裏切られたりしてるかもしれなくて、自由=ハッピーとは言い切れないんだけど、そんなホリーの生き方にそっと思いを馳せていたい。

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最後に、ホリーの住んでいた部屋の描写を引用でご紹介。途中でブラジルの外交官と同棲し始めると、家具も色々買い込んでしまうんだけど、それ以前のホリーの部屋はこんな感じ。

私たちの立っている部屋は、(腰をかけるものが何もなかったので、私たちはつっ立っていたのだが)今しがた引っ越してきたばかりみたいだった。塗りたてのペンキの臭いがしそうだった。スーツケースと、解いていない木箱とが唯一の家具であった。その二つの木枠がテーブルの代わりをつとめていたのである。一つの上にはマティーニの材料が、もう一つの上には、ランプ、自由電話、ホリーの赤毛の猫、黄色いバラを生けた花鉢がのっかっていた。一つの壁をすっかりふさいでいる本箱には、文学書が半分ばかりつまっていた。私はすぐにこの部屋が気に入ってしまった。いつでも夜逃げができそうなかまえが好きになったからだ。

『ティファニーで朝食を』カポーティ/瀧口直太朗訳

彼女の寝室はその居間とよく釣り合っていて、野外でキャンプをしているような雰囲気がいつもただよっていた。すぐうしろに法律の手が迫っていると感じている犯人の持物のように、柳籠にもスーツケースにも荷物がすっかり詰め込んであって、いつでもとび出せるばかりになっていた。

『ティファニーで朝食を』カポーティ/瀧口直太朗訳

一見ミニマリストっぽいけど、服や靴は部屋中に散乱しているようなので、持物はマキシマリストっぽくもあり。これで窓際でギター弾き語りしてるなんてかっこよすぎる。

そんなわけで、感想おしまい。
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。


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