【人生、転職やり直しゲーム　第二章 転職と地獄の研修の巻】

【1日目スタート】

「パワハラパレス新人研修」と
バスの正面のプレートに書いてあるバスが
駅前に止まっていたので乗った。
俺は1番後ろの座席に座った。
研修を受けるメンバーが全員乗り込んだのだろう、
発車した。

バスの中では、
新人研修係の洗脳(せんのう)さんが挨拶を始めた。

「お早うございます！研修係の洗脳と言います！」

…
俺たちは洗脳さんのでかい声に驚き、
挨拶を返すことができなかった。

「挨拶は人間関係の基本だろう！
お早うございますっっ！」

「お早うございます！」

「声が小さい！
お早うございます！」

「お早うございます！」

それから俺たちは挨拶を何度も言い直された。
無駄にデカい声出させる手口の研修かぁ。
古いなぁ。

「初めまして、洗脳です！」
眼光鋭いヤンキー上がりっぽい色黒の男が
マイクを使わず、
無駄に人を圧倒するデカい声で演説をおっぱじめた。

統率力はありそうだが、
自分より格下な相手を
「愛のムチ」とか言って、
容赦なくビンタしそう。

「俺の誕生日は11月11日なのでぇ、
いい責任者、洗脳と覚えてください！

さて、君たちには死ぬ気で頑張ってもらいたいっっ！
なぜなら、
死ぬ気で頑張らないとぉ、
この、研修で生き残れないからです！

就職の条件は、この研修をクリアする事です！

研修で、死ぬ気で頑張って、
残った奴しか採用しません！
キツイですが、
未来の自分のために死ぬ気で頑張りましょう！」

死ぬ気、死ぬ気、うるさい。
しかし、研修でギブアップしたら、
就職出来ないのか。

「君たちにはぁ、
サブリース契約のセールスマンとなってもらうけれどぉ、

(サブリース契約とは、
土地を持っている地主に
建築会社がアパートを建てさせ、
建築会社は、アパートを借主に貸す。
アパートは大家のモノのため、
建築会社は又貸ししている立場)

ハッキリ言ってぇ、
この仕事は稼げますっっ！
この、有価証券報告書！
『二風パレスの営業の平均年間給与は、891万円！』
半端ないです。
貴方達、今までこんな好条件の求人、
見た事ありますかぁ？
無いですよねっ！

し・か・もっ、
契約取って、
アパート工事が完工すると、
契約金額の1パーセントが、歩合として
貰えます。
1億円のアパート着工だと、
いくら貰えますか？」

「100万円！」
俺は叫んだ。

「契約1本で100万円！
貯めたら、運命を変える金額だよな？
是非、運命を変えて欲しい！」

運命を変えるかぁ、
キャッチーなコピーだ。
俺も借金の督促から逃げたい。
しかし、１億円のアパートって高くないか？

「しかーし、
高額商品のセールスは、
難しい！
お客さんに対して、
中々買ってくれない、と
期待を裏切られた時に
ここでイラついて怒ったら、
もう少し我慢すれば取れるはずの
契約がパーだ。

高額だから、
お客さんだって迷う権利がある。
我(が)があると、
曖昧な態度をとるお客さんに対して
怒ってしまうことがある。
この、新人研修では、
我を無くして、
セールス魂に火をつけてもらいたいっっ！」

我を無くす？
どういう意味だ？

「しんどいけど、
我が抜けた営業は、成績が良い。
俺は、お前らが稼げるよう、全力で応援するっ！

うちの会社はコマーシャルでおなじみの大企業だ！
給料も一流だ！

まず、売った時のマージンがデカい。
その辺のヘボヘボ会社とは一緒にしないで欲しい。
そして、そのマージンは売ったお前らだけじゃなくて、
研修係の俺も、貰える。
だ・か・ら、
命懸けで育ててやる！

俺は君たちに期待している。
死ぬ気で研修に取り組み、
稼げるセールスマンになって欲しい。
この研修は一生に1度しか受けられない。
何度も言う、
命懸けと思って取り組んで欲しい！

研修が終わってぇ、
仕事が始まったら、
君たちは、稼げる、選ばれたエリートだ。
サラリーマンでこれだけ稼げる仕事は無い。
稼いで、稼いで、成り上がってくれ！
はい、拍手、はくしゅぅ〜！」

皆、熱い拍手を洗脳さんに送った。

やたら前向きに自信満々に喋るから、
皆、話に引き込まれた。
よし、俺も稼いで、借金を繰り上げ返済しなくては！

「あ、研修の処女寺に行く前に、
ちょっと寄るところがある。
そこに着くまで自己紹介していよう。」

このページは

「振り込め犯罪結社」を参考に書きました。

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（第２章の始めからやり直す）