【安曇野から発信する潤一博士の目】14~花粉と化石
花粉症の季節がやってきた。トップバッターはスギ花粉。これにヒノキやアカマツなどが続く。これらは、針葉樹の花粉で、風媒花のため花粉生産量が多い。広葉樹では、シラカンバ、ヤナギ、ハンノキなどの生産量が多い。虫媒花の植物は、受粉の確率が高いので、生産量は少ない。アカマツの大木は、1年で1億個もの花粉を生産するという。
花粉は、それぞれが1個の細胞である。花粉症の原因物質は、花粉の表面をおおう油脂状の物質で、花粉の大きさや形などは、花粉症とは関係ないといわれている。
花粉の大きさは、150~20ミクロン(0.15~0.02ミリメートル)で、50~30ミクロンのものが多い。スギ花粉は35ミクロンくらい、アカマツ花粉は120ミクロンくらいである。
花粉の細胞膜は、セルロースに似た高分子化合物で、大変丈夫であり、強い酸やアルカリにも破壊されない。ただ、紫外線には弱く、地表に落ちて紫外線にさらされると破壊されてしまう。
このような性質の花粉が化石として残っている。湿地などに落ち、泥などの堆積物に入り、空気や紫外線から遮断され(真空パック)ると、細胞膜は何万年でも残っている。数千万年昔の石炭にも花粉の化石が含まれている。泥炭1㎤(1×1×1cm)中に、1万個もの花粉化石が含まれていることもめずらしくはない。
花粉は植物ごとに形や大きさが違うので、逆に花粉化石から元の植物を知ることが出来る。花粉化石からの昔の植生や気候を知ることが出来るのである。
(地質学者・理学博士 酒井 潤一)
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