【画家・絵本作家の声】豊福まきこさん『おくりもの』絵本原画展によせて
こんにちは、森のおうちの米山です。
暖冬とはいえ、もともと寒さの厳しい安曇野では、春を待ち遠しく思う気持ちもひとしおです。
そんな季節に、ぜひ、心がぽかぽか温まって、春の足音を感じられるような絵本を多くの方に読んでいただきたい!
…と、いうことで
2024年1月26日(金)~4月8日(月)はの期間、表紙からきゅんとする一押し絵本『おくりもの』の原画展を開催中です。
今回のnoteでは、原画展によせて、豊福まきこさんに絵本制作についてお話を伺いました。
絵本作家・豊福まきこさんのこと
豊福まきこさんは、 広告代理店でグラフィックデザイナーとして勤務したのち、フリーランスのイラストレーターとして活躍されて、2017年に『わすれもの』(BL出版)で絵本を初めて出版されました。
読む人の心をくすぐる主人公の可愛らしさと、思いやりの気持ちが隅々にまで届いている感じは、納得の人気作です。
それ以来、当館内の「絵本書店・星めぐり」でも、豊福さんの絵本は人気があり、いつか原画展をしたいと機会をうかがっていました。
絵本の制作について~インタビュー
――― 『おくりもの』は、はりねずみくんの繊細な心の動きに読む人が共感する作品だと感じます。創作するきっかけとなった、豊福さんの体験が何かあったのでしょうか。物語ができたときのエピソードはありますか?
特に大きな出来事や体験はありません。
以前からハリネズミのお話は描きたいな、とは思っていました。とても小さくて可愛らしい動物ですし、針状の毛も他の動物にはなかなか見られない特徴で、すてきです。丸まっている様子などを見るとかわいくて心を鷲掴みにされます。ただただ癒されます。
ふと「私がとっても素敵だと思っているのに、ハリネズミ自身が気に入ってなかったらどうなのかな?」と思いました。
他人からみたら素敵なところなのに、本人がそう思っていない。そういうものは誰にでもある気がしました。
例えば、背の高い友達を、私はモデルみたいでとっても素敵だと思っているのに、本人は気に入らなくていつもかかとの低い靴ばかり履いている。引っ込み思案な友達を、私は優しくて大好きだと思っているのに、本人は気の弱い自分が嫌い、などと言ったりする。
全然そんなことないのに。
私から見たら、どれもキラキラしていてすてきなところなのに。
…そんなところから、お話ができていったように思います。
――― 『おくりもの』の前に同じ出版社から『わすれもの』『おどりたいの』を刊行している豊福さん。シリーズとして意識されているのでしょうか。
タイトルに“もの”がついているせいで繋がっているように見えますが、シリーズのつもりはありません。タイトルはできるだけ短いほうが好きなので、内容を端的に表そうとした結果、あのようになりました。
――― 水彩で描かれているので、何度も同じシーンを描き直すことがあるとのこと。『おくりもの』を描いている時のエピソードがありましたら、おしえてください。
「おくりもの」に限らないのですが、どの作品も最初から絵が見えているシーンは描き直しも少なく早いです。見えている、というのはお話を想像し始めた段階から、脳内にイメージがしっかりある、と言えばいいでしょうか。逆に、お話のつなぎとして入れるシーンは、四苦八苦することが多いです。
「おくりもの」の場合は、ハリネズミ君が編み物をしているシーンは前者。冬眠明けの、みんながハリネズミ君にお花を挿してくれるシーンは後者でした。前者は、ろうそくの炎の揺らぎ、部屋の温度、そんなものまでも見えていましたが、後者は、イメージ云々より、1枚の画面の中に異なる大きさの動物たちをどのように配置して画面に収めるか、という技巧的な部分で苦戦した覚えがあります。
――― 『おくりもの』の森の中の風景が臨場感があって気持ちがいいと感じました。どこかをご取材されての風景でしょうか。
特定の場所はありませんが、ハリネズミが多く生息するヨーロッパ地方の植物や景色は調べました。
でもどれも参考程度に留めています。リアルの再現よりも、そのシーンの伝えたい空気感を絵に乗せるほうに重きを置いています。
――― 動物たちの仕草がとてもかわいらしく、擬人化でありながら自然な感じがするのですが、日頃より動物のスケッチをされているのでしょうか。
また、動物への想いがございましたらお聞かせ下さい。
日頃のスケッチは特にしていないですが、動物で人間のような動きをさせる時は、一応骨を調べます。骨格として可能な動きかどうかを意識するためです。もちろん、不可能な動きを描くこともありますが、わかっていて描くのとそうでないのとでは絵に差が出ます。最も重要なのは、読み手がお話の世界にスムーズに没入できるかどうかなので、違和感を感じさせない範囲の動きを探りながら、描くようにしています。
――― 豊福さんにとっての『おくりもの』の見どころ・注目の点を教えて下さい。
見どころは見る人それぞれの中にあります。どうぞ自由に感じてもらえたらと思っています。
――― 他に作品を御覧になった方にお伝えしたいこと、などがございましたら、教えて下さい。
拙くとも、その時の精一杯の自分をこめて描きました。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
原画展でのミッション
ご来館の皆様には、豊福さんから、展示室にて「探してみてくださいね。」と、ミッションをいただきました。
展示室に、ご来館の皆様に向けたメッセージと共に掲示していますので、ぜひ原画にてお楽しみ下さい。
きっと、いいことがありますよ♪
3/16・土、17・日 在館予定のお知らせ
豊福まきこさんが、森のおうちにいらしゃいます!
3月16日(土)14:00過ぎにご到着のご予定。
3月17日(日)の午前中も在館してくださいます。
在館中は、館内の絵本書店・星めぐりでお求めいただいた絵本に限り、サインをしてくださいます。
これまでご連絡をとると、必ずスタッフへの気遣いのメッセージをくださる豊福さんとお話しできるのがとても楽しみです。
この機会にぜひお越し下さい。
学芸員*米山 裕美
原画展情報
2024年1月26日(金)~4月8日(月)
この期間は、3企画を同時にご覧いただけます。
◆「豊福 まきこ『おくりもの』絵本原画展」
【展示作品】
『おくりもの』豊福 まきこ/作・絵(BL出版)全点
「ぼくのハリにも なにか できることが あるのかな…?」小さなハリネズミくんの心温まる絵本『おくりもの』(豊福まきこ/作・絵)の絵本原画を全点、読める形で展示。
◆「江口 みつおき 詩画集『風の伝言』原画展」
絵画と言葉で紡ぐ大人の絵本
【展示作品】
『風の伝言』(銀の鈴社)※抜粋
『チーコのくれた宝物』、『おそとであそんだ日』、『ふしぎな国のおともだち』、『変身ミーちゃんとおともだち』(すべて、銀の鈴社)※各表紙
』
医師として診療の傍ら、油彩画や絵本を制作してきた、江口みつおきの詩画集『風の伝言』に掲載の絵画作品を中心に、絵本表紙原画も展示。
◆「バーナデット・ワッツ所蔵絵本原画展」
【展示作品】
『マッチ売りの少女』アンデルセン/作 バーナデット・ワッツ/絵
『くつやのマルチン』トルストイ民話 バーナデット・ワッツ/絵
『こまったクリスマス』ラッセル・ジョンソン/文 バーナデット・ワッツ/絵
『リサの小さなともだち』ジョック・カール/作 バーナデット・ワッツ/絵(西村書店)
他(すべて、西村書店)※すべて抜粋
絵本美術館&コテージ 森のおうち
開館時間●9:30~17:00 ※12~2月は16:30閉館(最終入館は閉館30分前まで、変更日・館HP参照)
休館日●木曜、2月のみ水・木曜日 (祝日振り替え有り)
入館料●大人800円(900円※4月1日より) 小・中学生500円 3歳以上250円 3歳未満無料
399-8301 長野県安曇野市穂高有明2215-9 TEL0263-83-5670 FAX0263-83-5885