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【画家・絵本作家の声】小林敏也さんインタビュー~「森からきこえる宮沢賢治 絵本原画展」によせて

こんにちは、森のおうちの米山です。
2023年の企画展第4弾は、森のおうちが、その精神世界を指針としている宮沢賢治の絵本原画展です。

今回のnoteは、現在開催中の賢治展についてと、3作品の原画を展示中の画家・小林敏也さんへの作品についてのインタビューをお伝えします。


<企画展のタイトルのこと>

 「雨ニモマケズ」や『銀河鉄道の夜』などでよく知られる宮沢賢治が生前に出版したのは、1冊の童話集と1冊の詩集だけでした。
その童話集『注文の多い料理店』の序では、賢治がどのように童話を書いていたのか、どう読んでほしいのかなど、自身の作品について語っています。
その中の一節に「これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらつてきたのです。」という部分があります。

復刻本 (蔵書/今泉ヤス子・森のおうちお話の会)

2023年のすべての企画展に“森”のテーマを付けようと、森のおうちのスタフ皆で考えたとき、宮沢賢治作品は「森からきこえる」だ!と迷いがなかったのは、上記の一節が頭の中にあったからです。

<デザイナー・画家 小林敏也さん>

今回の展示では、1994年の森のおうち開館の時にもお世話になりました画家・小林敏也さんの3作品を展示しています。

小林敏也さんは、紙や印刷効果にこだわり、イラストレーションの周辺も視野に入れたトータルな絵本づくりをめざし、青梅市に“山猫あとりゑ”を営んでいます。

2003年に宮沢賢治賞(花巻市)を受賞しています。
賢治の作品を読み込んでいるからこそ描ける奥深い作品が、多くのコアなファンを引きつけています。

さらに、小林敏也さんとお話をさせていただくと、そのお人柄も魅力的です。
これからお伝えする、インタビューで感じて頂ければ幸いです。

「画本(えほん) 宮沢賢治シリーズ」は小林敏也さんのライフワーク

<小林敏也さんインタビュー>

――― 改めて、敏也先生にとっての宮沢賢治作品とは、どのようなものでしょうか。

なんとなく偉人扱いされていて、けいえん気味でしたが、全集を読んでいくうちに童話というはんちゅうを超えているなと。
当然、その絵本化は、大人も読んでおもしろいものになるという予感と、世界を~人間と自然を考えるヒントになると思った。

――― 今回お借りする作品の内、童話『かしわばやしの夜』の魅力はどんなところでしょうか。

柏の木という里山の代表と、生活者・清作(弟の清六)と、自由人の絵描き(賢治)の三つどもえ、単純におたのしみくなさい。

『かしわばやしの夜』宮沢賢治/作、小林敏也/画 (好学社)

――― 『かしわばやしの夜』の原画のみどころを教えて下さい。

てなわけで、特に見どころはありませんが、一つだけ、洋画家・マグリットから拝借した、彼へのオマージュあります。お探しくなさい。


『よだかの星』宮沢賢治/作、小林敏也/画 (好学社)

――― 次に、童話『よだかの星』の魅力はどんなところでしょうか。

この画本の帯文に、なんだか生きづらい子どもが読んだら、ビルの上からお星さまになるんだと、とび下りてしまいそうだと思って、けいえんしてましたと書きましたが、よくよく読んでみれば、よりよく生きたいという全ての人々のもがきと努力に対する共感でもあるのかなと。

「ずいぶん長い間、このお話は画本にしたくないと思っていた。うっかりすると、いじめられっ子がお星になるんだと、ビルの屋上から空に飛び立ってしまいそうだったからだ。でも、輝こうとはばたくものたちは、少しからずよだかなんだ。そう思ったら、たちまちイメージが浮かび筆をとっていた。」

(画本帯文より 小林敏也)

――― 『よだかの星』の原画のみどころはどこですか。

この画本には、目撃者として、うさぎが登場してます。のちに『貝の火』で目の見えなくなるうさぎでもあります。


――― 今回、展示する作品はどれも、違う技法を使っていますが、それぞれ、どのように技法を選んだのでしょうか。その理由もありましたら、教えて下さい。

『かしわばやしの夜』・スクラッチ
『よだかの星』・紙、油彩
『雨ニモマケズ』・木版

自分のもっているスタイル(技法)、あるいはトライできそうなスタイルの中から、一番合っていそうな技法を選んだだけですので、理由はありません。

展示室では、道具や資料なども見ることができる

――― 作品を御覧になった方にお伝えしたいことはありますか。

賢治童話は、彼の空想したイーハトーヴという仮想世界でくり広げられた出来事ですから、『やまなし』で水にとびこんでくるかわせみは、よだかの親セキですから、それぞれの話が共鳴し、からみ合っております。そんなところもお楽しみくなさい。

<小林敏也さんが演出した展示空間>

今回、『かしわばやしの夜』の原画の展示は、小林敏也さんが考案し、作業も自らしてくださいました。
かしわ林の中にいるような感覚で、物語の世界により入り込めます。

さらに、ここで展示されている原画はスクラッチボード。
どの版が絵本のどのシーンに使われているのかを絵本と見比べて探すことで、小林さんの絵本作りのおもしろさをより感じることが出来ます。

展示作業をする小林敏也さん


<「宮沢賢治の幻燈お話し会」12/16に開催>

小林敏也さんが幻燈技師として参加してくださる、お話会を開催します。
もちろん、サイン会もあります。

「宮沢賢治の幻燈お話し会」

2023年12月16日(土)
13:00開場 13:30開演

会場◆絵本美術館 森のおうち(主催)
出演◆森のおうちお話の会

参加費◆大人2000円 小学生1000円(入館料込)
定員◆50名(完全予約制)
お申込◆お電話にて TEL0263-83-5670(開館日の10:00~16:00)

 ※終了後、絵本作家・小林敏也のサイン会があります。

プログラム◆『よだかの星』、『雨ニモマケズ』、童話集「注文の多い料理店」序文 ほか

ぜひ、様々な面から宮沢賢治の童話をお楽しみください。
皆様のお越しをお待ちしております!

学芸員*米山裕美

<原画展情報>

「森からきこえる宮沢賢治 絵本原画展」
2023年10月6日(金)~2024年1月22日(月)
【展示作品】
『かしわばやしの夜』
『よだかの星』
『雨ニモマケズ』
(以上、宮沢賢治/作、小林敏也/画 好学社刊)
『やまなし』宮沢賢治/作、川上和生/絵 (ミキハウス)

絵本美術館 森のおうち
399-8301 長野県安曇野市穂高有明2215-9
TEL 0263-83-5670 FAX 0263-83-5885

開館時間●9:30~17:00※12月~2月は16:30まで(最終入館は閉館の30分前) ※変更日有、当館HP参照
休館日●木曜日(年末年始無休、2024年1月5~12日冬休み)※祝日振替休有、当館HP参照
入館料●大人800円 小・中学生500円 3才以上250円 3才未満無料

最後までお読みいただきありがとうございます。 当館“絵本美術館 森のおうち”は、「児童文化の世界を通じて多くの人々と心豊かに集いあい、交流しあい、未来に私たちの夢をつないでゆきたい」という願いで開館をしております。 これからも、どうぞよろしくおねがいいたします。