島日記 スノームーンとスミレ
何度も目覚めて、眠れずにいると、外がやけに明るい。
雨なので満月は見えないはずだと庭に出たら、あれ西の空にぼんやりと出ている。
2月の満月は、6日3時29分に獅子座で発生、2023年で地球から最も遠い満月らしい。
ちょうど出始めに見ることができた。
「スノームーン」の名だ。
街灯があるので私のスマホでも撮ることができた。
スノームーンの他に「ハンガームーン(飢餓の月)」とも呼ばれるそうだ、過酷な条件下での命名だろう。
スーパームーンではなくマイクロムーン、小さな満月。
ほぼひと月で現れる満月、今月も見られたことに感謝、眠れなかったからこそ見られたのだ。
タンカン園で陥没した地面に気をつけるように言われた時、その中に可憐に、ひっそりと咲くスミレを見つけた。
曇り空の中で、ともすれば脚立や足で踏みつけられるから、人間には危険な場所を選んで咲いたのかもしれない。
賢いスミレ、種をたくさん飛ばせよ。
「山路来てなにやらゆかしすみれぐさ」
芭蕉の句は有名だが、青空文庫で「すみれ」という童話を見つけた。
23歳で早逝した北条民雄、ハンセン氏病のため本名も伏せられていたという作家だ。
家族と別れひとりぼっちになったおじいさんが、町へ移ろうとした時、庭の隅に咲いているスミレを見つける。
「体はこんなに小さいし、歩くことも動くことも出来ません。けれど体がどんなに小さくても、あの広い広い青空も、そこを流れて行く白い雲も、それから毎晩砂金のように光る美しいお星様も、みんな見えます。こんな小さな体で、あんな大きなお空が、どうして見えるのでしょう。わたしは、もうそのことだけでも、誰よりも幸福なのです」 (青空文庫すみれ)
北条民雄、文学全集から入らなかった読書なので、名前しか知らなかったが、今読む時が来たようだ。
おやつは昨日持ち帰りの虎屋の羊羹。
苦い緑茶でないと食べられない。
北条民雄の代表作「いのちの初夜」を読む。
他の作品も読もうと思った。
今日もお付き合いくださってありがとうございます。
雨の休日でした。