島日記 開いたばかりの
開いたばかりの図書室へ入る。
係の人はギリギリにこられるので、掃除は昨日のうちに済ませるのだろう。
古本の匂いと静寂が飛び込んでくる。
誰かが言っていた。
開けたばかりのバーの雰囲気が好きだと。
あれ誰だっけ。
フイリップ•マーロウだ。
違った、テリー•レノックスだ。
「長いお別れ」(レイモンド•チャンドラー著)は「ギムレットには早すぎる」が有名だが、私は、開けたばかりのバーを語るセリフが好きだ。
長くなるが引用する。
最近は「ロング•グットバイ」として村上春樹が翻訳しているので二とおりある。
「ぼくは店を開けたばかりのバーが好きなんだ。店の中の空気がまだきれいで、冷たくて、何もかもぴかぴかに光っていて、バーテンが鏡に向かって、ネクタイがまがっていないか、髪が乱れていないかを確かめている。酒のびんがきれいにならび、グラスが美しく光って、客を待っているバーテンがその晩の最初の一杯を振って、きれいなマットの上におき、折りたたんだ小さなナプキンをそえる。それをゆっくり味わう。静かなバーでの最初の静かな一杯、こんなすばらしいものはないぜ。」(清水俊二訳)
「夕方、開店したばかりのバーが好きだ。店の中の空気もまだ涼しくてきれいで、すべてが輝いている。バーテンダーは鏡の前に立ち、最後の身繕いをしている。ネクタイが曲がっていないか、髪に乱れがないか。バーの背に並んでいる清潔な酒瓶や、まぶしく光るグラスや、そこにある心づもりのようなものが僕は好きだ。」(村上春樹訳)
清水俊二訳で親しんでいたが、また読みたくなったので注文したら村上春樹訳しかなかった。
ハードボイルドらしい清水訳がいきがっていて面白い。
村上訳は、僕が、喋っているようで雰囲気が違ってみえる。
「To say goodbye is die a little 」というセリフもある。
さよならをいうのはわずかの間死ぬことだ (清水俊二訳)
さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ (村上春樹訳)
引用ばかりになってしまったが、開いたばかりの図書室からの連想だ。
最後までお付き合いくださってありがとうございます。
朝からバーの話で、失礼しました。
寮の人物像はまた後日ゆっくり書くつもりです。
今日も訪問くださってありがとうございます。