行き合いの空に
今頃の空を表す、行き合いの空(ゆきあいのそら)という言葉がある。
夏の入道雲と秋のうろこ雲やすじ雲の入り混じった雲が行き合っている空のようすをいう。
風情のある言いまわしで、古くから使われている。
「夏衣かたえ涼しくなりぬなり夜やふけぬらんゆき合いの空」 慈円
「夏と秋と行きかう空のかよい路はかたへ涼しき風や吹くらむ」 凡河内躬恒
夏から秋へ移行する時期は、残暑と朝夕の涼しさとのギャップが激しく、うまく調整しないと体調を崩してしまう。
また同じように、陽から陰に変わっていく心情を素直に受け入れないと鬱々となる。
端境期は空洞になるのでしっかり気を引き締めないといけないようだ。
夏の終わりはいつも淋しさ、やるせなさを感じる。
これは夏休みの終わりに味わった名残りがそう思わせるのだろう。
遊びまわったツケが来て、あわてて絵日記を適当に描いている姿が目に浮かぶ。
夏休みに、弟が川に落ちて大人たちが騒いでいる場面の記憶がある。
弟が療養中の頃、思い出話をしていた。
川に落ちたのは私が押したからだという。
記憶のピントはそれぞれ違うようだ。
まだ覚えているだけでも幸いになるかもしれない。
春がやってくるのは希望に満ちて華やぐが、秋が近づくと、涼しくなるのはいいとしても、もの悲しさ、あわれが身にしみる歳になり、できれば避けて通りたいがそうもいかない。
でも秋草が揺れるのは好ましい。
ススキが穂をだしかけている。
行き合いの植物たちを。
今日も読んでくださってありがとうございます。