島日記 畏怖と畏敬
また新しい日が始まる。
毎日違った日の出を見ると否応なく、非情に、あるいは淡々と時が過ぎていくのを感じる。
よく眠れた朝は、身体も軽いし、雑念もなくピュアな気持ちでいられる。
一日が人の一生を現しているように思うのはこの歳のせいか。
ただ必ず、朝はやってくると信じて眠りにつくが。
今年初めて民宿の掃除に行く。
仕事をしていないと、この緊張感は味わえない。
今回は大幅にリニューアルしていたので余計に張りつめる。
長期滞在のコテージがいくつもできて、仕事も多くなるだろう。
スタッフも増え、慣れるのにしばらくかかりそう。
賄い弁当がなくなったのは残念だが、まあしようがない。
規制が緩み今年は観光客が増えそうだ。
今年になって登山者と動物の研究者が二人も山で亡くなっている。
毎年起きる遭難の知らせを聞くのは悲痛だが、あまりにも安易に山に入る人たちがいる。
畏怖と畏敬を持って望まないと事故が起きる。
日本アルプスなどと比べれば標高は低いが森が深いのだ。
いまだに前人未到のところもある。
島の山の民話は怖い話が多い。
山姫に遭遇したら目あわせてはいけないとか、水の流れている場所では、咳払いして寝ている神を起こし「渡らせてもらいます」と言わねば、怒りをかうとか。
要するに、山に対して敬虔であれということだろう。
普通の観光と違って山行きは十分な下調べが必要だ。
自然は人間を癒してくれるものではない。
いたずらに怖がってもよくないが、畏敬の念を忘れることなかれ。
「畏怖嫌厭」山月記に出てくる言葉があるが、これはただ嫌がって恐れるだけの意味だ。
あまりイダキタクナイ感情である。
恵みの雨が降って、潤いが出てきた。
自然に対して改めて感謝する。
今日もお付き合いくださってありがとうございます。
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