島日記 今日の物語
雨の朝である。
青みがかった灰色の空、錆浅葱(さびあさぎ)色。
しとしと雨に似つかわしい。
鳥の飛び交う声もない。
さあ今日一日の物語はどう作っていこうか。
三年寝太郎の寝ている場面が一番楽のようだが、それでは自己嫌悪というリバウンドがやってきそうだ。
架空の物語を読むのが好きである。
他人の現実の物語の一部を覗くのも面白いが、自分の物語は行き当たりばったり、散漫な展開で面白くなさそうだ。
せめて、一日一日を丁寧に作っていけばいいと思うのだが、安易に流されてしまう。
飛ばし読みや早送りの場面が多そうだ。
県立図書館に頼んでいた「武士の娘」(杉本鉞子著)がきた。
長岡藩の家老の娘に生まれ、結婚でアメリカに渡り、生活のために書くことを始めた。
手記、自分の物語である。
同じ頃に出版された「グレイト・ギャツビー」に負けぬベストセラーになったという。
今でもそこそこ売れているようで、手元にあるのは新装版だ。
以前の翻訳で読みたかったのだが、そう、英語で書かれているのを翻訳した本なのだ。
物語になるような生き方に憧れるが、毎日だらだらと過ごしていては何も生まれないし、第一、もう最終章に近いのだ。
有終の美と行きたいがおそらく未完成のまま終わるだろう。
しかし色々な物語を読めることは幸せなことである。
今日の私の物語は、更科日記の少女と同じように人の書いた物語をときめきながら読む日にしよう。
今年初めて見かけたプルメリア。
家のはまだまだ葉が出たばかりだ。
目立たない花が好みだが、プルメリアは別格。
エキゾチックで心踊る。
今日もお付き合いくださってありがとうございます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?