1ダースの恋 Vol.17
電話口の向こうからは、カツカツと
ヒールが地面を蹴り上げていく
音が聞こえてくる。
「律さん。お久しぶりです。
突然で申し訳ないのですけど、
どうしても
お話したいことがありまして。
本当に急で申し訳ないのですけど、
この前お世話になりました
スターライトダストビルの
屋上に来て頂けますか?」
水香といい、亜美と言い、女て生き物は
どうしてこうも急に俺を
呼び出そうとするんだ。
でも、亜美の様子が電話越しに
少しおかしい気がする。
「ねぇ。何かあった?」
回らない頭を必死に回転させながら
俺はそう聞いていた。
「うん。色々あって。。
どうしても律さんに今会いたいの!!」
懇願しているようにも聞こえる、
そんな声に一抹の不安を感じながら
俺は速攻で服を着替え始めた。
肩と耳にスマホを挟みながら
「急いで行くから、
少しだけ待ってて!!」
そう言い残して壁に引っ掛けてあった
革ジャンを羽織った。
オイルで最低限度のセットを髪に施して、
履きなれた革靴を履いた。
指定されたビルまでは
電車で小一時間かかるが、
タクシーだと20分ほどで到着する。
都会の電車はどうしてこうも
回りくどい構造なのかと
心の中で毒づきながら、
「背に腹は代えられねぇな。」と
独り言を呟いて駅前まで走り
タクシーに乗り込んだ。
移動しながらも亜美にメッセージを送る。
あと20分ほどで到着できると思う。
大丈夫?
急に呼び出してごめんなさい。
来てくれて有難う御座います。
お待ちしていますから焦らずに
いらして下さいね。
ひとまず、待っていてくれるそうなので、
タクシーの席に深く座りなおした。
「お客さん、お急ぎですか?」
タクシーの運転手が声をかけて来た。
少しの煩わしさを感じながらも
無視するわけにも行かないので
返事をすることにした。
「えぇ。ちょっと急に呼び出されまして。」
俺の返答に気を良くしたのか、
運転手が嬉しそうに話を続ける。
「もしかして、彼女さんとかですか?」
彼女、という言葉に
素直に反応するべきか悩んだ俺は
逆に質問することにした。
「何か、急に俺に会いたいって
言ってきたんですけど、これって
どういう意味だと思います?」
タクシーの運転手は少しの間、
「うーん。」と唸りながらも
「その方に何かがあって、
それで一目散に貴方に会いたいというなら、
それは愛でしょうな。」
愛という言葉に少し驚きつつも
頷く俺の様子をバックミラー越しに
確認した運転手は更に言葉を続ける。
「そうして、それに応えようとしている
貴方も僕から見れば
愛で動いているように見えますね」
「ははっ。そうですか?」
照れ臭そうに頭をやおらかいていると
「応援していますよ。」
そう言って運転手は軽やかに
タクシーを止めた。
「有難うございます。」
お礼を伝えて会計を済ませて、
タクシーを降りた。
スターライトビルの屋上に行こうと
ゲートのホールを小走りに歩いていると
後ろから声をかけられた。
「リッツ」