風の戯れ︎︎☁︎︎*.✨
歌を歌っていた
縦縞の膝丈まである
青いワンピースから覗く素足を
大好きな布団の中に隠して
部屋で1人
歌を歌っていた
窓はカタカタと揺れて
外ではぶゅーぶゅーと
春風が強く吹いていた
春一番かしら?なんて
思いながら自分の意識が
微睡んでいく
目が覚めた
「ねぇ!ねぇ!一緒に遊ぼー」
「もっと歌って頂戴よ」
「そのまま手を差し出して〇」
軽やかな声
いたずらっ子のような声
落ち着いた声
相変わらず布団の中に素足を
入れたまま90℃の角度で
座りつつ微睡んでいた私の鼓膜に
そんな声が聞こえた
誰の声かしら?と思って
辺りを見渡しても分からない
そりゃそうだ。
ここに居るのは私1人のはずだもの
キット、気の所為よね
そう思って引き続き
うつらうつらと歌いながら
微睡んでいた
目が覚めた
「仕方ないわねー!」
「特別なのよ」
「さぁ、つかまって〇」
ふと気付くと私の腕が
何かに包まれていた
絹のような柔らかさ
水流のようなひんやり加減
雲のような流動感
へっ?!
私は思わず素っ頓狂な声をあげて
反射的に目を瞑っていた
次の瞬間には
自分の髪の毛を揺らす気配がして
恐る恐る目を開けてみると
眼下には街が広がっていた
羽衣のように感じられる青い風たちが
私の両腕から肩にかけてたなびく
少し驚きつつも「歌って!」という
耳元の声に惹き付けられて
自分の声帯を震わせる
日本語のような
イタリア語のような
フランス語のような
それでいて
そのどれにも属さない
私も知らなかった歌
何故か歌えていた歌
その言葉には
確かに言霊がのっていて
それは喜びと息吹と祈りだった
青い風たちは
満足げに微笑みを浮かべ
瞳を閉じている
私も彼らに見習って
同じく瞳をとじた
目が覚めた
知らないピアノが目の前にある
漆黒の輝きを放つピアノ
私の身の丈ほどありそうな
大きなチェロもあった
私はと言うと
何処かの舞台の上で
淡い桃色のドレスに身を包んでいた
周りには人っ子一人いなくて
呆然と立ちつくす私の鼓膜を
彼女たちが、青い風たちが、揺らす
「ちょっとしたお礼よ」
何かな?と思い小首を傾げていると
彼女たちは人の形を模した影を作り出した
顔はよく見えないが
燕尾服のその影は凛々しく
そして優雅に演奏を始めた
何という曲名なのかは分からない
聞き覚えのない調べ
だけど、それはとても優しく
とても柔らかく少し逞しい
自然と笑顔が綻び
瞼を閉じていた私
目が覚めた。。
リアルだ。
窓がカタカタと揺れて
風がビュービュー吹く
ポリエステル100%の
もふもふ度強めな布団に
包み込まれていた私がいた
余りにも気持ちよくて
その日は珍しく二度寝をした
吹いている風を
子守唄にして🐈