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心の懐中電灯

ある所に、雨の妖精さんがいました

彼女は雲の上に座りながら
ぼんやりと浮かない顔をしています

心配になった雲の妖精さんが
彼女の顔を見上げながら聞きました

「雨の妖精さん、どうしたの?
浮かない顔をしているね」

雨の妖精さんは、椅子だと思っていた雲が
雲の妖精さんだった事と、急に声をかけられた事で
少し驚きましたが、おもむろに口を開きました

「あのね、わたし、嫌われてるみたいなの。。」

雲の妖精さんは驚きました

「え!?そうなの!?
誰が、そんなひどい事をするんだい!?」

雲の妖精さんがあまりにも驚くので
雨の妖精さんは少し戸惑いつつ
ポソリポソリと言葉を紡ぎました

「なんかね、私がいると
空気がジメジメしちゃって、
嫌な気持ちになるんだって。。

それにね、お洗濯もの?も乾かないらしいし
車の運転?も難しくなるし
歩いてる人もこけやすくなるんだって。。」

「だから、【雨は嫌いなんだ】って、色々な人が
心の中で言っているの。。それが聞こえちゃって
私、とっても悲しいの。」

そう言って、雨の妖精さんは
ぽろぽろと水色の雫を青い瞳から
こぼしていました

ポロポロと鳴いてしまう雨の妖精さんに
どんな言葉をかけて良いか分からない雲の妖精さんは、
それでも彼女をあやす為にゆっくりと
ハンモックのように、その背中を揺らしてあげました

「そんなことないよ!!」
大きな光で雨の妖精さんを包みながら、
今度は太陽の妖精さんが出て来ました。

こちらの妖精さんは、何やら
頬を膨らませて、ご立腹のようです

「私なんて、折角、顔を出してあげたのに
【熱い】【溶ける】【日焼けする】って
文句ばかり言われるのよ」

雨の妖精さんは泣いていて
太陽の妖精さんは怒っていて

間に挟まれた雲の妖精さんは
右往左往しております

そして、彼も心の中で
ぼやいていました

「僕だって、色々な人たちに【うっとうしい】とか
【重苦しい】って言われてて、つらいよぉ。。」

そんな3人の妖精さんの所に
風の妖精さんがあらわれました

「あらあら、みんなして、どうしたの?
そんな顔してたら、楽しい事、とんでっちゃうぞ?」

風の妖精さんは自由な妖精さんで、その奔放さから
他の妖精さん達には「お姉さん」と慕われています

なので、慕ってくれる3人を心配して
彼女はクルクルと回りながら、各々の話を
聞いてあげました。

「ふむふむ、なるほどね。3人とも
自分の存在を人の役に立てたいって思って
日々、頑張っているのに

何だか、悲しい事や辛い事を言われて
落ち込んでいたのね。」

「じゃ、そんな貴方達に、こんな人たちの声は
聞こえてるかしら?」

【わぁ、雨だぁ!雨の音ってメロディーみたいで好き】

【おぉ、晴れて来たぞ!やっぱり太陽をみると、元気になるなぁ】

【曇りの日は、雲の流れを、ゆっくり見れて楽しいわ】

雨の妖精さんは涙を止めて、
太陽の妖精さんは頬を赤く染めて
曇の妖精さんは微笑んでいます

「ほらっ!貴方たちは、ちゃんと
人の役に立っているのよ〇

それでも、聞こえてくる声って、意外と
悲しい事の方が大きく聞こえちゃって
そっちに気が行ってしまうよね。

それはね、貴方達の心の懐中電灯が
その悲しい事を照らしてしまってるから
起きている事なの。

彼らも同じなの。雨は大地に潤いを与えるのが役割だし
太陽は人々に元気を与えるのが役割だし
雲は私達、風を導いてくれるのが役割

そんな貴方達の役割を彼らも心の中では
分かっているのに、ついつい自分の前にある
悲しい事に心の懐中電灯を向けてしまってね。。

その悲しみを、貴方達に押し付けてしまっていたの。

だけど、その心の懐中電灯を嬉しい事に向けてごらん?

改めて貴方たちの役割に気付いて、感謝して
心が満たされる思いになるの

これは、キット、貴方たち3人にも言えるわ

これはね、何も、悲しい事や辛い事を
見なくて良い、と言ってるわけではないのよ

ただね、”心の懐中電灯で見える視野を
もう少し広げてごらん?”って言ってるの

ほら、フクロウさんは、首を回して
360℃見渡せるでしょ?

イルカさんは、空に向けた片目は閉じて、
海に向けたもう片目は開けて寝るのよ

つまり、イルカさんは寝てる時も、
開けた片目で海を見ているって事!
面白いでしょ?

流石に、そこまで広い視野を持つのは難しいかもしれないけれど
ほんの少しで良いから、視野を広げる努力をしてみて!!

そしたら、キット、楽しい事や嬉しい事が
もっと見えて来るよ

それで、自分の努力が、これで良いんだ!って思えて
もっと頑張れるようになるよ!

私も応援しているねっ!!」

風の妖精さんは言うだけ言うと爽やかに笑って
軽やかに去って行きました

雲の妖精さん、雨の妖精さん、そして
太陽の妖精さんは、かけて貰った言葉で
元気になりました

その夜、3人は雲の上で宴を開催しました

人知れず、音もたてず、雨も降らせず
ただ各々が各々の役目を果たすべく
これからも励もうと誓い合って踊りました

音が無かったので、誰も気付いていませんでしたが
その時の空は、煌びやかな光が舞っていました

雲の妖精さんと雨の妖精さんが手を繋ぎ
放たれた光の周りをのんびり眺めつつ
太陽の妖精さんは眠っていたそうです

そんな彼らを風の妖精さんは微笑ましく見つめ
地上に目を向けてばかりいる人たちに、そっと
耳打ちをしました

「面白いものが見えるよ。空を見上げてごらん。
貴方も視野を広げて、心の懐中電灯を楽しい事に向けてみてね」

風の妖精さんの声が聞こえた一部の者たちは導かれるようにして
空を見上げました

自分の周りの人たちは誰も空を見上げていません

ただただ、地面を見つめ、四角い機材を眺め
光のぼけた眼で前を見ているだけでした

空を見上げているのは自分だけ。
風の妖精さんが何か言ってくれた気がしたから。

自分は可笑しいのだろうか。変わっているのだろうか。
普通とは違うのだろうか。。

そんな事を想っていた者たちは、所謂、普通の者たちとは違う
視野や音色を持っていて、だからこそ風の妖精さんの耳打ちが聞こえて

でも、やっぱり、周りとは違うから、心無い言葉をかけられやすくて
そんな言葉に、ついつい心の懐中電灯を向けてしまっていました

ですが、風の妖精さんの声に導かれて見上げた空では
道行く人には見えていない静かな宴が開催されていて

何かが召喚されるのではないか?なんて一瞬ドキドキして
そのドキドキが楽しくって笑顔になって家に帰りました。

彼らは、明日から、心の懐中電灯を少し大きくして
キット、楽しい事や嬉しい事にも向けられるようになるでしょう。

何故って、風の妖精さんの声が聞こえた者たちには
そんな、おまじないがかかっていたからです。

めでたしめでたし

追伸:本当はExcelアートで挿絵を描きたかったのですが
あまりに多忙過ぎて間に合いませんでしたにゃ🎈

にゃので、せめて、物語だけでも投函したくて
ギリギリ滑り込みましたニャ〇

最後になりましたが、仲良くして頂いているダラズさんの
可愛いイラストに感謝ですにゃ🌈

最後までお読み頂き、有難うございますにゃ🌺

8/31/2021/ 23:57

konekoより







日常と非日常を放浪し、その節々で見つけた一場面や思いをお伝えします♪♪ そんな旅するkonekoを支えて貰えたなら幸せです🌈🐈 闇深ければ、光もまた強し!がモットーです〇