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回顧手記「去る者は…」 2007.12.28

 よく耳にする「来る者は拒まず、去る者は追わず」は、 「離れていった人はもう関係ない」的な意味で使われるが、中国語の「去」には、日本語の「去る。離れる」だけではなく、「行く。出掛ける」という意味がある。
 たしか、国境を行き来する遊牧民のことを言っていた言葉だと聞いた。人の行動を国境や法律、利害などで無理に束縛してはいけないという意味だったと思う。
 「去る者は追わず」といって、その行動がどんなに本人の強い意志のもとであっても、明らかに間違ったものであれば、引き留めるし、別な道を進めるのも大切かと思う。
 それに夢を追って出て行くのであれば、応援してバックアップしていくことも、かかわりを持った人に対して大切なことだと思う。
 「人は人。自分は自分」と個人主義はいいが、人としてのつながりを考えると「勝手にすれば!」と言い放っているようにも思え、かかわりを持った人に対して、あまりに も冷たい言葉のように感じる。私は常々そう思っていて、あまり好きな言葉ではないの で、ほとんど使わない。
 私は宿屋を営んでいる。今年もさまざまな旅人がここに来て、ここを去っていった。 私は「来る者拒まず、去る者は追わず」を自由な旅人に対しての温かい言葉として使いたい。
 「いらっしゃい」そして「い ってらっしゃい」のように。

北海道新聞 夕刊 えぞふじ 2007年12月28日(金) 掲載

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