短夜 〜みじかよ
8月が終わる。
この国はすでに初秋で、白夜から徐々に日の入りも早くなってきた。
私の住む街では、8月の最後の夜に花火が打ち上げられる。
この国で花火を見られることは滅多にない。花火はいつでも何処でもやっていいわけではないからだ。
とくに打ち上げ花火は、大晦日のカウントダウンの時など限られた日だけで、場所も水辺の近くと決められている。
8月の終わりに打ち上げられる、この花火は、いったい何のためなのかを私は知らない。もう10年以上も毎年見ているというのに。
家の窓から見える暗い海の上に、大輪の花火が、ぱっと咲いては、夜空に残影を残しながら儚く消えてゆく。
まるで短い夏を惜しんでいるみたいに。
花火を人の一生に例えるとしたら、
私はすでに、
激しく燃え盛るような時期はとうに過ぎ、燃え尽きる前の残り火といった感じかもしれない。
人生長過ぎる…と思ってきたけれど、
過ぎてみれば、短かいと感じるのだろうか。
PEARL CENTER × Kan Sano 『短夜』
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたサポートは、日本のドラマや映画観賞のための費用に役立てさせていただきます。