彼方人の11月
11月は、こちらの国の言葉では ”死者の月” と書く。
第一週目の土曜日は「万世節」で、死者を弔う日であり、ハロウィンの習慣はないが、「万世節」は大切な日とされていて、故人を偲び、墓参りをしたりもする。
だから11月は、彼方人の月だ。
彼方人とは
あの世の者、別世界の人
他国から来た者のことも指すらしく
これは自分のことでもあるな…と思う。
私はこの国では永遠に異邦人だ。
彼方人は
"あっちもの" とも読むらしく
ますます余所者的な響きがする。
11月になると薄曇りの日が続き、日照時間もどんどん短くなり、いよいよ太陽の光は届かなくなる。
雪は何度か降ってもすぐに溶けてしまい、根雪になる程ではないので、まだ雪灯りもない。
雪が降り積もる前の11月が、冬の中では一番暗いのだ。
こんな時は、明るく暖かい日本が懐かしくなったりもするけれど、すでに私は、日本の11月がどんな風だったかも思い出せないほど、日本を離れてからの年月が長くなってしまった事に気づく。
かと言って、この国の冬には未だに慣れもしない。
どちらの国にも距離があり、属しきれないような…“根無草”という言葉が頭に浮かんだ。
好きか、嫌いか、と問われれば、私はこの国が好きだ。
たぶんこの国でなければ、海外へ移住などしなかったとも思う。
こちらの国に住んでから今まで、それまでの人生の数倍、いろいろなことがあった。
予想外な出来事の連続の中で、あっという間に時間が過ぎ去った気がする。
私がこの国へ移り住んだのも、11月だった。
あれから、15年の歳月が流れた。
彼方人の11月が終わり
12月がやってくる
今週末はもう第1アドヴェントで、1本目のキャンドルに火を灯す。
これからクリスマスイブまでの4週間、毎週日曜に1本づつアドヴェント・キャンドルの火を増やしてゆく。
すでに街は、クリスマスのデコレーションに溢れイルミネーションが輝いている。
11月の最終週に入ってからはずっと雪の降る毎日で、窓の外は降り積もった雪の白さで少しだけ明るくなった。