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ワンカップの卵酒
民間療法でお馴染みの卵酒が好きだ。
とはいっても風邪の引き始めといえば葛根湯だったし、インフルエンザだろうが親知らずの抜歯後だろうが食欲は衰えず、卵酒は父親の気まぐれで登場した。
暑い日の風呂上がりにミルクセーキやバナナジュースがあったように、冬はブランデーコーヒーや卵酒があった。特別せがんだ記憶はあまりなく、「飲む?」と聞かれて「うん」と頷くこともあれば、「一口だけでいいかな」と返すこともあった。
ワンカップを使う理由は、単純に手軽だから。冷蔵庫にある生酒はそのまま味わいたい。一時期は実家と同じように赤い紙パックの清酒を使っていたけれど、最近はご無沙汰だ。
火入れをしない生酒や、加水をしない原酒のようにフレッシュな味だけが日本酒だとは思っていない。華やかで香り高い純米大吟醸も、米の旨みを感じられる本醸造も等しく好きだ。一言に日本酒といえども好みが分かれるので、各自で好きなものを使ってほしい。
作り方は、石井好子・水森亜土『料理の絵本 完全版』を参考にしている。
小鍋の中で卵黄と砂糖を混ぜる。日本酒を少しずつ注いで、よく合わせてから火にかける。木べらで混ぜながらとろ火でじっくり。火力を間違えるとモロモロの炒り卵が出来てしまう。それはそれで好きだけどね。
小鍋から大ぶりのカップに注ぐ。口当たりはとろとろで美味しい。猫舌だからちびちびと飲みながらも、お腹から体があたたまるのを感じる。
また気が向いたらワンカップを買って帰ろう。