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第46話「連戦連敗」

何故か相性が悪い大会がある。
日本山岳耐久レース、通称ハセツネカップと呼ばれている大会だ。日本を代表する登山家であった長谷川恒男が山で亡くなり、それを偲んで東京あきる野市で毎年10月に開催され今年で31回目を迎えた。初めて出た時にメイさんと一緒に完走しているのだが、ここ3大会連続して、途中でリタイアしている。

この大会の特徴は、エイドステーションがないことで、70km強のコースに必要なすべての水、食糧、山での装備品を背負っていかなくてはいけないことだ。
但し、制限時間が24時間と長く、歩き続ければ、完走は比較的楽にできるはずなのである。

最初のリタイアは、10月にしては猛暑で、最低限必要な水2リットルをもって出走したのだが、あまりの暑さに途中で水が切れてしまった為、元気であったもののリタイア。

昨年は、雨の寒さのために胃腸がやられて、一切の水、食べ物を受け付けられなくなり、とうとう低体温症になり始めてこのままだと死ぬかと思いリタイア。

今年は走る前から体調を崩してしまっていたのが
1番の原因かもしれないが、昨年同様、途中から雨の中の大会になり昨年以上に水分、補給食を早くから受け付けなくなり、吐き気が治らず、自分ではやれる限界と思われたのでリタイアをしたのである。

帰宅して半日は、吐き気が治らず出てくるのは胃液だけで、熱も出はじめる。かろうじて、炭酸水をゆっくりと飲んで徐々に胃を落ち着かせて、リカバリー様の体を温める服を着て一日中寝込み、
体重も4キロ近く落ちてしまった。

事前の練習量は、ネットで練習の記録をつけている参加者1013人中397位で、8割以上が完走する大会だから充分して来たはずと思っていたのであるが、きっと年齢をプラスしなくてはならず、まだまだ練習不足なのかも知れない。

また、胃腸を鍛える方法はなかなか見つからないのだが、補給食の取り方をもっと考えるべきなのかも知れない。
今は、それでもやり切った、あれ以上は無理だと思っているが、数日経つともっといけたのでないか?ゴールできたのではないか?本当に自分は限界まで全力を出し切ったのかと自らに問い始めることになる。

今は、来年の参加を考えられないし、長距離レースからの引退も頭の片隅にちらほらと浮かぶのだが(そもそもアマチュアに引退などないなと思いながら)、きっと数日経つと来年も参加しよう、いやすべきだなどと懲りずに考え始めるに違いない。いつまでも、挑戦者たれである。

そう言えば、物産にいた時に、今思うとまだ抽象的な理想を振り回し事業妄想家であった頃、新しいテーマを探してきて検討して、結局、うまく事業を展開するまでに至らず、何件も何件も検討ばかりしていた。その姿を見て、先輩が半分は皮肉混じりであったけど、本当に諦めず懲りないなと言われた。僕は、それを褒め言葉と受け取った。そして、多くの失敗をしながらもいつしか妄想から構想を描ける様になり連続して幾つもの事業を立ち上げていけるようになっていた。

連戦連敗でも、懲りずに挑戦続けること、それが積み重なって、いつか勝機を得ることができるし、それまでの連戦連敗した経験は、何も挑戦しなかった人と比べて途轍もない見えない財産となる。 

連戦連敗、だからこそ、ひたすら挑戦をし続けたい。

この文章を書きながら、まだ胃腸の調子が悪く吐き気も残っているのに、挑戦する気になっている。
懲りない奴との先輩の声が聞こえる。


森の黒ひげ塾
塾長 早川 典重

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