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【夜の魔法シリーズ「優しい店主の物語」】第一話『森のパン工房』〜妖精たちと不思議なパン屋の物語
皆さん、こんばんは😊
夜の魔法シリーズ第一弾です。
皆さんは、心が温かくなるパンを食べたことはありますか?
焼きたてのパンの香りに誘われて、思わず足を止めたことは?
それとも誰かに「このパン屋さんに行ってごらん」と、こっそり教えてもらったような経験は?
今日はそんな特別なパン屋さんのお話をお届けしたいと思います🍞🥖
***
深い森の中。
苔むした小道の先に佇む、小さなパン工房。
そこでは、夜明け前から優しい火の音が響き、
パンの香りが森の空気をそっと包み込みます。
誰がはじめに見つけたのでしょう?
誰がはじめに噂を聞いたのでしょう?
「心が癒されるパンを焼くおじいさんがいる」
「動物たちと仲良くパンを分け合える不思議な場所がある」
「満月の夜には、妖精たちが訪れるという...」
そんな噂は、旅人から旅人へ。
人から人へと、こっそりと伝えられていきました。
さあ、扉を開けましょう。
森のパン工房の、優しい物語の始まりです。
***
〜森の小さなパン屋〜
深い森の中、苔むした小道の先に一軒のパン屋があります。
「森のパン工房」と書かれた古びた看板が、そよ風に静かに揺れています。
朝もやの立ち込めるなか、パンじいさんは今日も夜明け前から起き出して、大きな石窯に火を入れます。
窯の中で薪が弾ける音と、パン生地をこねる優しい音だけが、静かな森の朝に響いています。
炎が窯の中で踊るのを見ながら、パンじいさんは今日のパンの具合を確かめます。
長年の経験が教えてくれる、絶妙な火加減と焼き加減。
やがて、パンの香りが森に漂い始めると、
小鳥たちが最初のお客としてやってきます。
***
〜森の仲間たち〜
朝日が森を染め始めると、動物たちが次々とパン工房を訪れます。
リスたちは木の実のパンを、ウサギたちは人参のパンを、小鳥たちは粟のパンを待っています。
「はいはい、みんなの分もできあがりましたよ」
パンじいさんは穏やかな笑顔で、ていねいにパンを分けていきます。
キツネもオオカミも、ここでは仲良くパンを分け合います。パンじいさんの作るパンには、
不思議と争いを忘れさせる魔法があるのです。
***
〜パンじいさんの思い出〜
実は若い頃のパンじいさんには、
この森で忘れられない出会いがありました。
月明かりの強い夜、道に迷ったパンじいさんの前に、ふわふわと光る小さな妖精たちが現れたのです。
「こちらへ、こちらへ」
妖精たちは光の粒を散りばめながら、
パンじいさんを安全な場所へと導いてくれました。
その夜、パンじいさんは決意しました。
この森に住んで、心のこもったパンを焼こうと。
それが妖精たちへの恩返しになるはずだと。
こうしてパンじいさんは、
古い製粉小屋を見つけ、パン工房に改装し、
長い修行の日々を始めたのでした。
***
〜満月の夜の魔法〜
満月の夜になると、
パン工房には特別な出来事が起こります。
窓辺に懐かしい光が差し込むと、
そこには、あの日出会った妖精たちの姿が。
「私たち、ずっとあなたのパンが食べたかったの」
妖精たちの願いを聞いたパンじいさんは、
特別なレシピでパンを焼き始めます。
星の粉をまぶした生地に、月の光で温めた水を使い、妖精たちのための魔法のパンを作ります。
焼き上がったパンは、まるで月のかけらのよう。
ほのかな光を放ちながら、ふんわりと香りを漂わせます。
妖精たちがパンを口にすると、その体が虹色に輝き始めます。
喜びのダンスを踊る妖精たちの光が、
工房全体を優しく包み込んでいきました。
***
〜噂の始まり〜
ある秋の夕暮れ、一人の若い旅人が
疲れた様子で工房の戸を叩きました。
「道に迷ってしまって...」
その声には深い疲れが滲んでいます。
パンじいさんは迷い人を優しく迎え入れ、
できたての温かいパンを差し出しました。
旅人がパンを一口食べた時、
思わず目に涙が溢れました。
「こんなに心が温かくなるパン、
今まで食べたことがありません」
三日三晩、旅人は工房に滞在し、
パンじいさんの焼くパンに魅了されていきます。
動物たちと触れ合い、森の静けさに心を癒やされ、知らず知らずのうちに、心の傷が優しく包まれていくのを感じていました。
***
〜広がる物語〜
旅立ちの朝、旅人は深々と頭を下げ、
感謝の言葉を残して去っていきました。
その後、旅人は立ち寄る先々で、森の不思議なパン屋の話を語り継いでいったのです。
「森の奥に、魔法のようなパンを焼くおじいさんがいる」
「そのパンを食べると、心が癒されるという」
「動物たちが列を作って並ぶパン屋だと聞いた」
噂は風のように、人から人へと伝わり、
やがて多くの人々が森の小道を訪れるようになりました。
商人は疲れを癒やすために。
吟遊詩人は新しい物語を求めて。
悩める娘は答えを探して。
病気の子を持つ母は希望を求めて。
パンじいさんは、訪れる人それぞれの
心に寄り添うパンを焼き続けました。
***
〜不思議な出来事〜
パン工房を訪れた人々は、
それぞれ不思議な体験を持ち帰ります。
ある人は、窓辺でかすかな歌声を聞いたと言い、
またある人は、月明かりの中で
小さな光の粒が舞うのを見たと話します。
夜更けには、
パンの香りと共に妖精の笑い声が
森中に響くこともありました。
***
〜永遠の物語〜
こうして「森のパン工房」の物語は、
民話のように語り継がれていきます。
「心の傷が癒される不思議なパン屋」
「動物たちと妖精が集まる魔法の工房」
「迷い人を導く森の明かり」
パンじいさんは今日も変わらず、
夜明け前から大きな窯に火を入れ、
ていねいにパンを焼き続けています。
動物たちは今日も列を作り、
妖精たちは満月の夜に現れ、
そして新たな旅人たちが、
この小さなパン工房に導かれてくるのです。
古びた看板は今も風に揺られ、
「森のパン工房」の文字は
ますます深い味わいを増していきます。
そして妖精たちは、
この小さなパン工房の
永遠の守り人として、
これからもずっと、
窓辺で優しく微笑んでいることでしょう。
***
いかがでしたか?☺️
パンじいさんの手掛ける森の小さなパン工房。
訪れてみたいですね。
この森の小さなパン工房のように、また訪れてみたいパン屋さんはありますか?
よかったら教えてください☺️
そして、またそんな素敵なパン屋さんに出会えますように🍀