「嘘つき」にされたあの日。
悪くもないのに、謝った経験はあるだろうか?
多分誰でも一回はあるはずだ。
こちらに何の罪もなくても、相手が悪くても、とにかく謝らないといけない状況というのは人生何度かある様に思う。
私がそれを初めて経験したのは幼稚園の年長さんの頃だった。
その頃クラスのカースト上位の女子にイジメられ、毎日の様に暴言を吐かれていた。
何を言われたかは覚えてないが、その子の顔は鮮明に覚えている。
そんなある日、そのイジメっ子の母親がお迎えに来た時バッタリと会ったので、チャンスだ!とイジメについて訴え、やめるように言って欲しい!とお願いをした。
その時は「わかった!言っておくね!」と言ったその母親だが、次の日態度は一変した。
突然先生から呼び出され向かうと、そこには仁王立ちのイジメっ子の母親が居て先生は困り顔。
その光景に、怒られる!と咄嗟に私は悟った。
そんな私に先生は言った「〇〇ちゃんにいじめられたって嘘ついたらしいね!〇〇ちゃんのお母さん怒ってるから謝りなさい!」と。
なんだって!?
私は嘘などついていないし、昨日確かにあの子のお母さんは注意しておくね!って言ってくれたじゃないか!
もう、ショックと悲しさと驚きでいっぱいで何が何だかだ。
正直、その母親に謝る義理などない。
むしろ謝ってほしいレベルである。
でもその時こちらを見つめる困った顔の先生を見て、ここは私が謝れば事が済む事を悟った。
何で子供らしくないのだろう。
今となれば騒げ!泣け!もっと訴えろ!
と思うが、そんな事をしても意味はないと子供ながらに思った事を覚えている。
結局この件は、私が「嘘つき」だと言う称号をつけられただけで終わった。
こちらとしては今の状況を打開したい!
という思いから決死の思いでその母親に訴えかけたのだが‥うまく行かない現実に、小さな胸から心が折れる音がした様に思う。
因みにその母親は「いじめたのか聞いてみたけどそんな事してないって言うし、あの子が嘘をついている!」と言ってきたらしいが‥
人をイジメる様な奴が素直にイジメてましたごめんなさいなんて言うわけないだろと言う話だ。
そしてその母親は私が謝って去った後先生に「どういう教育してるんですか!」って怒っていた。
娘を侮辱されたと思って怒り心頭だったんだろう。
娘に大嘘を吐かれているとも知らずに。
その後先生に「どうしてそんな嘘ついたの?」と嘘をついた前提で質問され、私が本当の事を言っても困るだけだなと悟り「わかんなーい」的な事を答えたように思う。
正直5歳とかそこらの話なので発言の詳細までは鮮明じゃないけど、でも、この事は一生忘れられないだろうな。
なんだってこの歳になっても年に一回は思い出すのだから。
これを書こうと思ったのも、思い出したからだし。
なんで思い出したかと言うと‥Twitter(現X)で、人を助けていたら遅刻をしてそれを説明したら先生に嘘つき呼ばわりされた小学生の話を目にした事がきっかけだ。
しかもいつも一緒に登校していた子は怒られたくなくて、人を助けたその子を置いて学校へ行き、その子が人助けしてた事も言わなかったそうだ。
きっとその先生は、何を言っても嘘つき呼ばわりする人なのだろう。
あの幼稚園の先生のように。
自分の考えの範疇から出たり、その場をうまく納めたかったり、大人は子供の言葉を都合よく嘘にしてしまう事がある気がする。
大人の方が知ってるから、わかってるから、自分の知識にない事や都合の悪い事は子供側に非を持たせてしまう気がする。
これは私の意見だが、
そんな気がするのだ。
子供って大人が思ってるより大人だし、思っているよりいろんなことを理解している。
それなのに、子供だからわからないだろうという理由で傷つけたり黙らせたりする人が多すぎる気がしている。
それは本当に良くない。
あなたのその疑いの目が、その子が大人になった時にどこまで影響してしまうのか‥一度は考えた方がいいと思う。
とは言え最初の話に戻るが、私が本当に嘘つきでイジメっ子が本当はイジメられっ子だった場合。
そしてその親が、イジメてないなんて嘘つきやがって!と叱った場合。
同じ事になるので難しいところである。
その見極めは、本当に難しい。
ただ結局はどちらの状況でも、弱い方が嘘つきになる確率が高いように思うな。
それは私の感覚だけど。
言い返せない人を選んでない?
その辺問いたい。
「嘘つき」にされたあの日、私の声は一生誰にも届かないんだと思った。
5歳かそこらの女の子が、大人に絶望した。
誰も助けてくれないと思った。
大人になった今も、そのことを思い出すと沸々と怒りが湧いてくる。
あの日、あの時、こっそりでも、本当はどうなの?って、一言聞いてくれさえすればその思いはなかったのにな。
その子にも、その親にも、その真実が知られなくたって良いし謝られなくたって良いから。
本当の事、ちゃんと聞いて欲しかったな、先生。
そんな記憶を思い出して、なんかそんなこと、思ったりした。
そんだけの話。