映画『メッセージ』を見た感想
映画『メッセージ』を見ました。
めちゃくちゃ面白かったです。最高でした!
感想書きます! 目次を見れば分かると思いますが長いです!
ごめんなさい!
〇ネタバレなしのあらすじ(途中まで)
主人公は言語学者の女性。
ときおり、娘との生活のフラッシュバックを挟みながら物語は展開していく。
娘とは遊んだりケンカしたりしながらも仲良く暮らしているが、病気で亡くなってしまう。
突然、宇宙人の乗り物が世界12か所にあらわれる。
巨大な宇宙船は、何をするでもなく、ただ悠然とその場にいるだけだが、世界は恐慌状態になってしまう。
そんな中、主人公は軍から、宇宙人とのコミュニケーションをとることを要請される。
そうこうしている間にも、政情不安は増大していき、「やつらは地球人をなめている! 地球の軍事力を見せつけろ!」みたいな過激な意見まで出てくる。
主人公は宇宙人とのやりとりの中で考え方が大きく変わって行き、そしてある決断を下す。
……ここまでがネタバレなしのあらすじ。
ここからネタバレ感想。今後この映画を観るつもりの人は、この先は読まないでくださいね。
いちおう、観るつもりがない人用に、観てなくても分かるようには書きます。でも面白かったのでお金と時間に余裕があれば映画を先に見て欲しい。
〇ネタバレありのあらすじ
……続き。
宇宙人の言語を断片的ながら少しずつ理解していくうちに、主人公は未来予知能力のようなものが得られる。
なぜか。
実は、この宇宙人には過去や未来の感覚がない。使う言葉にも過去や未来の概念がない。
この宇宙人の言語を研究するにつれて、宇宙人の時間感覚が主人公にも伝染していたのだった。
観客はときおり挟まれる娘とのエピソードが言語学者の過去の経験だと認識していたが、実は、主人公の未来の映像だった。
過去に死に別れた娘の記憶ではない。未来に死に別れることになる娘の記憶だったのだ。
主人公は、宇宙人の時間感覚を身につけたことで、未来のできごとをフラッシュバックの形で『思い出す』ようになったのだった。
※ちなみに予告編でははっきりと「娘をなくした言語学者」と嘘をついている。アンフェアです。でも、予告編を作った人が宇宙人言語を理解してしまっていたのなら、未来のことだって過去形で記述してもおかしくないよなと思って納得しています。
各国の政府が宇宙人とのコミュニケーションを試みるが、ある出来事をきっかけに、中国、ロシアなど一部の政府が宇宙人に攻撃を敢行することを宣言。
主人公は戦闘をなんとしても止めたい。そんな時、未来のあるワンシーンを『思い出す』。思い出した記憶の中で、主人公が中国軍を指揮する将軍に感謝をされている。
将軍は言う。(ちゃんと覚えてないので適当だけど)「あの時、私を止めてくれてありがとう。君が、誰も知らないはずの、亡くした妻の言葉を言ってくれたから信じることができた。そして攻撃を止めることができた。これから私の携帯番号を教えるから、過去で思い出して、私に電話してほしい」
その番号に電話をして中国の将軍を説得。宇宙船への攻撃は中止される。
その後、一緒に頑張った物理学者に告白されて、付き合うことになって終わり。
ちなみに宇宙人がきた目的は3000年後に地球人が自分たちを助けてくれるので、その時のために言語を伝えるためだったとのこと。正直、書いてても意味がわからんのやけど、分からんまま終わった。
〇自由意志の有無。
この映画では、未来は決定しているのだろうか?
はたして主人公に自由意志はあるのだろうか?
物理学者の告白を断ることはできたのだろうか?
彼女が自分の未来を拒否することはできたのだろうか?
〇電話番号の矛盾。
もう一つ。
・劇中で主人公は中国の将軍に電話をする。
・電話番号は、未来に将軍自身に教えてもらう。
この2つの出来事は、互いに互いの『原因』になっている。どうしても矛盾しているように感じてしまう。
僕の理解が浅いのだろうか。
彼女の自由意志の問題と、電話番号の問題について、思わず考え込んでしまった。
いちおう自分なりの答えみたいなのは思いついたので、感想がてら以下に書いておく。
〇彼女が最後に受け入れた理由
劇中で彼女個人が未来を受け入れる理由だけなら分かる。
例えば僕は、自分が構成作家の世界に足を踏み入れたことを正解だったとは一つも思っていない。
しかし、仮にタイムスリップができたとして、過去に遡って別の人生を選ぶかというと、選べない気がする。
今、身の回りにいる大事な人間の大部分が「今の人生だからこそ出会えた人たち」である。別の人生を選ぶことは、少ないとはいえ、そこそこの人数との絶縁を意味する。彼ら彼女らが僕のことを好きかどうかは分からない、僕は大好きだという人が無数にいる。
違う人生だったらnoteもやってない。いま、これを読んでくださっている方々がこの文章を読むこともないわけだ。僕はあなた方の大部分を知らないのだろうけど、少し寂しい。
別の人生を決断をしたとき、今のこの僕が愛してやまないあの人もこの人も、別の人生においては全くの他人だ。仮にばったりどこかで出会ったとして、挨拶もできない。そりゃ切ない。そんなことはきっと、選べない。
映画の中では娘との関係しか描かれないが、未来の彼女は娘以外にもたくさんの愛すべき人々と出会ったのだろう。その思い出があるのだろう。その素敵な人々に、これから会いに行くと決めたんだと思う。この映画の原題は「arrival」だ。おそらく「宇宙人が到着したよ」という意味のタイトルなんだと思う。でも、主人公がこれから、愛すべき人々のもとへ「到着する」という意味にもとれる。もちろん、娘のハンナのもとへも。
さて。
彼女が未来を受け入れるからこそ、この映画における『予知』だとか『未来』、『自由意志』、『因果関係』なんかの仕組みが映画の中から見えてこない。
〇未来に合わせて行動したくなる説
原作のウィキペディアによると、
「ヘプタポッド的思考で未来を知ったものは、その未来を誰にも告げてはならず、知ったとおりの未来に合わせて行動しなければならないという衝動が生じる」
という事らしい。
(ウィキペディアより引用)。
(ヘプタボットは宇宙人の名前)
なるほどと思いつつ、不思議な感じもする。
だって、主人公はクライマックスで、中国の将軍に電話を掛ける。未来で知ることになる情報を将軍に伝えている。これは未来の出来事を人に告げているといえるはずだ。
あくまで『衝動』なので、頑張って違反しようと思えばできてしまうという事なのだろうか。
それとも、『中国の将軍に情報を伝えた』という未来に合わせて行動する衝動が優先するという事だろうか。
いずれにしても、「電話を掛けること」と「電話番号を知ること」の両者が互いに原因になっていることは解決しない。
引用部の前段にはこうも書かれている。
『悲劇が待っていると知りながら、バンクス博士は行動を変えることはできない。順次的思考と同時的思考は両立できず、片方で得た知識をもう一方に適用することはできない。』
(バンクス博士は主人公の言語学者女性のこと)
はあ? いったいどういう状態なん? 主人公はあの後、どういうメンタルで生きていくの?
〇分かっていても勝手に体が行動する説(分離脳説)
連想したのは『分離脳』という言葉だった。
ある種の病気の治療のために、右脳と左脳を繋げる『脳梁』という部分を切断する場合があったそうだ。
(いまでは行われていないっぽい?)
この手術を受けた人は、右脳と左脳が分離する。
するとどうなるか。
左目は右脳が担当している。分離脳の人物は左目で見たものの情報が右脳にしか伝わらない。通常は脳梁を通じて左脳にも伝わるが、その脳梁が切断されているためだ。
さて、では、分離脳手術をした人の左目だけにスプーンを見せたとする。
そして「さっき見たものを右手でつかんでください」と指示したとする。
すると、その指示が実行できないのだという。
右半身は左脳が担当しているのだ。「さっき見たものを右手でつかんでください」という指示は両耳で聞いたので左脳にも伝わっている。しかし、左脳はスプーンなんて見ちゃいない。なので何を掴めばいいのか分からない。
ちなみに、言語は右脳が担当しているらしい。なので「さっき見たものを教えてください」と指示された場合は「スプーンです」と応答することができる。
また、分離脳手術をした人は、右手と左手が違う動きをすることがあるという。
『欲しい物に右手を伸ばそうとすると、そこに左手が割り込んできて両手が争う形になりました。』
(natureダイジェスト『「分離脳」が教えてくれたこと』より引用)
右脳と左脳が互いに情報を連携できないため、文字通り「見ている世界が違う」わけだ。
ものの判断が左右の脳で異なるため、右脳にとって欲しいものでも左脳にとっては必要ないということが発生するんだろう。
同じように、二つの思考様式が平行するという説が考えられないか。
〇「未来を知る同時思考脳」「未来を知らない順次思考脳」の平行説。
分離脳に例えるなら、「未来を知っている脳」と「未来を知らない脳」の2つがあるような状態になっているという仮定だ。ただし、分離脳と違って、「未来を知っている脳」は肉体が操作できないとする。肉体の操作は「未来を知らない脳」がすべて行う。
加えて、「未来を知っている脳(同時的思考)」が「未来を知らない脳(順次的思考)」に、行動の判断材料を与えようとしても伝達することができないとする。”片方で得た知識をもう一方に適用することはできない”という条件があるためだ。
「未来を知らない順次思考脳」は、僕たちと同じように順次志向で行動する。その結果、たまたま、「未来を知っている同時思考脳」の予知通りの未来が発生するという仮説を考えたい。
「未来を知らない順次思考脳」は、勝手に、自動的に、予知通りの未来を選択し続けてしまう。もちろん「未来を知らない順次思考脳」本人(本脳?)は、自分自身の過去の蓄積に基づいて判断しているつもりだろう。予定された未来へ向かおうなどとは全然思っていない。
〇体が勝手に電話をしたのだ、という仮定。
この場合、中国の将軍に電話をした件は、「彼女の未来の記憶に情報を得て電話した」のではなく、『未来がそうなっているから、「未来を知らない脳」が自動的に電話をした』ということになる。「未来を知らない脳」は、知らない電話番号に勝手に電話をかけ、知らない妻の最期の言葉を勝手に口から発した。
つまり、「既に決まっている未来の誘引力」が凄すぎるため、過去とは論理的に矛盾してでも(知らないはずの番号に電話をし、知らないはずの言葉を伝える)、体が勝手にそう動いている。
論理的には矛盾しているとしても、物理的には矛盾していない。電話をすることも、言葉を伝えることも、物理的には通常の現象だ。
もちろん『同時思考と順次思考を平行している主人公の主観』としては、未来で聞いた電話番号に電話をして、未来で聞いた言葉を伝えているととらえるだろう。
そして、物理的には体が勝手にやっただけなので因果関係の矛盾は何も生じていない。
いちおう補足する。補助線としていったん「未来を知る同時脳」「未来を知らない順次脳」という考え方を導入したが、あくまでこれは仮定だ。
ようは、実際にそのように脳が分かれていないとしても、『現に物理法則に反していないなら、因果関係なんてどうでもいいという考え方もできるよね』という結論のための補助線である。
なお、この場合、主人公は、「順次思考脳」の判断に従って我々と同じように考えて生活をする。時々、既に決まっている未来の吸引力に従って「順次思考脳」自身にとって不可解な予知的行動を行う。一方で「同時思考脳」は、バスの窓から景色を見続けるかのように、自分の人生に一切の干渉ができない。ラストシーンでは、主人公が未来に待ち受ける離婚と娘の死を受け入れているように見えるが、錯覚である。ある意味では体が勝手にやっているのだから。
まあ、この映画の場合は、「順次思考脳」と「同時思考脳」は分離されておらず、統合されているように見えるので「同時思考脳」のほうも納得して受け入れてるんだと思いますけどね。
〇この宇宙が未来から構成されている説。
「主人公が将軍に電話をした」⇔「電話が掛かってきたから将軍が番号を教えた」
この2件はが互いに互いの原因になっている件について、いくら物理的にはありえるといっても、もうちょっと別の解釈はないものか。
自分で書いておいてなんだが、「物理的に矛盾してなければ別にいいじゃん」では納得度合いが薄い。
別の理屈も考えてみよう。
「実は、我々の宇宙は未来から過去へ向かって順番に生成されているのだ」と仮定してみよう。
因果関係は、実は、逆向きに生成されている。たまたま我々地球人が、生成された順番とは逆方向に時間を感じてしまうだけである。
(おそらく、だいたいの物理法則は、時間にマイナスを代入しても成立するんだと思うし。物理はさっぱり分からんが。)
この場合、できごとは以下の順になる。
・宇宙人を攻撃しなかった未来が先に生成されていて、その未来において、将軍が「こないだはTELありがと」って主人公にTEL番を教える。
なぜ将軍はTEL番を教えるのか? その理由がこのあと、『過去』において生成される
・その理由は数年前に将軍に電話が掛かってきたから。(具体的な年月は描写されてなかったと思うので、数カ月前かも知れない)
ではなぜ電話がかかってきたのか?
・その数秒前に主人公が電話をかけたからだ。ではなぜ電話をしたのか?
・主人公が、すでに確定している未来を予見したからだ。
この順番だったら納得いくような気がする。
なんで過去からじゃ納得いかなくて、未来から順番だったら納得がいくのだろう。
うーん。
主人公が中国の将軍に電話を掛けるためには厳しい条件があり(電話番号を知らないと不可能)、中国の将軍が主人公に会いに行くためにはとくに条件がないからかなあ。
頭がこんがらがってきた。
もちろん「逆順に生成される」という考え方も、単に仮定である。
宇宙の未来が決定しているなら、因果関係はこのように逆向きにも成立するのかもしれないということがいいたいのであって、「この映画の中では宇宙が逆順に生成される」ということを主張したいわけではない。
まあでも、電話番号の件についてはここまでにしよう。2つも説が考えられるなら、他にもたくさん考えられるのだろう。個人的にはわりと納得がいった。
因果関係がループする事もあるのかもね、この広大な宇宙では。
残るは自由意志の問題だ。
〇避けたい未来を避けることは不可能なのか?
主人公の彼女は、どうしても避けたい未来を避けることは可能なのだろうか? つまり自由意志はあるのだろうか。
仮に避けることが可能だとする。であれば、未来は決定しておらず、変更可能であることになる。
主人公がどうしても避けたい未来(未来A)を予知したとしよう。
その未来を避けるため、本来選ぶはずだった選択肢を選ばなかったとする。例えば物理学者とのお付き合いをしないことを決断する。
別の選択肢を選んだのだから、本来の未来(未来A)とは違う未来(未来B)を生きることになる。
その瞬間、そっちの未来が予知されるようになるだろう。そうすると、さかのぼって「過去の自分もこの未来(未来B)を予知していた」ことになるはずだ。
なぜなら、過去の彼女にとって、未来の彼女が選ぶのは未来Bなのだから。
したがって、「未来の自分の選択」は、「耐えがたい未来を避けた結果、思慮の末選んだもの」ということになる。
もしかしたら彼女の人生のいくつかの場面において、未来を変えたいと願った瞬間があったかもしれない。実際にあったとしよう。しかしそのことを、過去の彼女が知覚することができない。
その選択の瞬間にのみ、彼女は未来を変更することになる。
〇選択の変更を知覚できない?
そして、未来を変更した後は、自分が未来Aを予知していたことが知覚できない。彼女の主観的には、最初から、未来Bを予知していたはずなのだから。
なので、彼女は最初っから未来Aを選ぶことができないというわけだ。
先ほど「知覚することができない」と書いたのは実は言い過ぎで。未来Aと未来Bで悩んだことを日記にでも書いておけば、AとBで悩んだことは知覚できる。しかし、日記を書くことさえ、過去の自分にとって「未来の記憶」になってしまう。
すると彼女は「あー、自分は未来Aと未来Bの選択を悩んだ結果、未来Bを選ぶんだな」という事が分かったうえで、結局、未来Bを選ぶわけだ。
つまり、彼女に自由意志があった場合でも「受け入れきれない悲しい人生」を絶対に歩まない。
未来が予見できる同時時間思考の持ち主にとって、「いま目の前にある選択」は常に体験した後の視点で選ばれることになる。
であるならば、さらにちょっとだけ未来の選択も、『既に』体験した後の自分が選んだ選択になるだろう。その先の選択も、同じことだ。人生最後の選択さえ、死ぬ直前の視点で決定されることになる。
逆順にでも同じことがいえる。彼女は人生最後の選択を『既に』決断している。そのひとつ前の選択の決断も、自分の最期の決断を踏まえて決断している。そのさらにひとつ前の決断も同様だ。
なので、未来が変更可能であったとしても、彼女に自由意志があってもなくても、彼女にとっては、予知した未来は変えられないということになる。
〇視野を広げていきたい
ちなみに念の為、仮に彼女が「悪い選択肢を選ばない」としても、それは彼女が「最善の人生」を生きられるという意味にはならない。
例えば映画のラストで物理学者と抱き合ったタイミング。
もしかしたらあそこで、抱きしめるのではなくバックドロップを決めた方が幸せだったかもしれない。そこから石油が湧いてもっとハッピーな人生だったかもしれない。
けど、あの場面でバックドロップをしようという選択肢が思い浮かぶ人間は、恐らく存在しない。
ははーん。なるほど。
『選択肢すら思い浮かばないような最善』というのは我々の人生に常に存在するはずなんやな。だが、我々にそれを実行する事はできない。なぜなら選択肢が思い浮かばないのだから。
思いつきもしない最善の選択肢が今この瞬間にあるのかもしれないですね。
選択肢がたくさん思いつくように、日々勉強したり、常識を疑ったりして視野を広げていきたいいきたいものです。
〇もし全人類がヘプタボットの言語を学習したら?
上記の仮説に従えば、未来が予見できる宇宙人言語の習得はかなりのメリットがあるはずだ。
普通の人でも勉強すれば身につくものなのだろうか。
身につけられるものなら身につけたい。
しかし、人類がみんなこの言語を身につけたら世界はどうなるのだろうか。
……と、想像してみたら恐ろしいことになった。
〇協調と裏切りゲームの最適解
恐らく、「協調と裏切り」が瞬時に無限にシミュレートされるのではないか。
「友好と敵対」と言い換えてもいい。
そして、そのシミュレーションの最適解が未来として確定するんじゃないだろうか。
怖い世界だ。
恐らくゲーム理論でいう囚人のジレンマに類する思考実験になる。ゲーム理論には全然詳しくないので間違ってるのかもしれないが、おそらくトッププレイヤー、ミドルプレイヤー、ボトムプレイヤーの3種類に大別されるような気がする。
なぜそう思われるのか。
まず、ボトムプレイヤーから見てみる。
・ボトムプレイヤー
この世界では、協調と裏切りについて、すべての結果が瞬時に予知される。
具体的にかくと↓みたいな感じ。
「この人と協調するべきか? それともこの人と敵対するべきか?」
「この人に与えるべきか? それともこの人から奪うべきか?」
「この人に真実をいうべきか? それとも騙すべきか?」
「この人を信頼するべきか? それとも疑うべきか?」
こういった全ての選択が全て未来予知され、すべてが判断される。
まず、「あらゆる選択において、どの未来も受け入れられない」という人間が出てくる可能性がある。とても悲しいことだが。
おそらくこの人たちは、未来予知能力を手に入れた時点で自ら死を選ぶことになる。(自らが死を選ぶ未来を予知することになる)
・トッププレイヤー
もちろん、全員が全員に対して、つねに協調を選ぶのであれば全人類がハッピーだ。できればそうであってほしい。
だが、往々にして、抜け駆けをして裏切る奴は発生してしまう。
そういう抜け駆けクズ野郎が一人でも、たった一人でもいる限り、全人類がハッピーになる可能性は消えてなくなる(今、僕らが住んでるこの世界だってそうだ。今日も昨日も一昨日も、「全員が協調を選ぶこと」ができた。毎日そうであるように祈っているが未だに叶わない。今年に入ってだけでも60回くらいがっかりしている)。
まず、抜け駆け野郎は「協調的な価値観を持つもの」から奪う未来を選ぶだろう。
一方、裏切ると自らにダメージがある「力のある相手」とは協調を選ぶと推測される。(「力」は権力や財力とは限らない。人間的魅力かもしれないし美貌や身体能力、性的魅力や知性かもしれない)
こうしておそらく、互いに「協力」を選択しあう、トッププレイヤーと呼ぶべき少数のプレイヤーが発生する。
トッププレイヤー同士は基本的に、常に互いに「協調」する。すべての裏切りは予知されてしまうのだから、「裏切るとダメージがある奴」に対しては常に協調を選択するわけだ。
逆に「裏切ってもダメージがない奴(「奪うモノ>自分のダメージ」が成立する相手)」に対しては常に裏切る。裏切られる側は、裏切られる未来が分かっていても避けることができない。互いに予知したうえで裏切られているのだから。
トッププレイヤーになるのはお金持ちかもしれないし、政治家かもしれない。もしかしたらたまたま偶然、力関係の特異点ともいうべきごく普通の人物がトッププレイヤーになるかもしれない。
何人くらいがトッププレイヤーになるのかは想像もつかない。人口の10%かもしれないし、4人くらいかもしれない。
・ミドルプレイヤー
のこり全員が、トッププレイヤーほどの権益は持たず、トッププレイヤーに収奪されながらも、死を選ぶほどではない人生を送る人たちがミドルプレイヤーになる。
彼らの中にもヒエラルキーが発生する。裏切ることが多い側と、裏切られることが多い側だ。
中には、「25歳までは比較的楽しいから生きてるけど25歳で自ら死ぬ」という予知をしてしまう、ボトムプレイヤーに近いミドルプレイヤーも現れるはずだ。
〇最悪の社会、あるいは最高の社会
最悪の社会やんけ。
なお、瞬時かつ無限にシミュレートされる「協調と裏切りの最適解」において、裏切りによるメリット収奪は、理論上可能な最大限まで膨張すると思われる。
もしかしたら、改心して、「この辺でやめとこうぜ」と奪うのをやめるトッププレイヤーがいるかもしれない。
しかしそんなやつは最初からトッププレイヤーにはならない。これは「奪う事から降りた瞬間に奪われる側になる」という意味でもあり「その未来が予知できるから最初からトッププレイヤーにならない」という意味でもある。
さて、この「協調と裏切り」ゲームにおいて、決定的に不利な存在がいる。
意思決定能力を持たない動物や植物や赤ちゃんだ。そして未だ生まれていない我々の子孫。
無限大に膨張する『収奪』は恐らく、可能な限りこれらの「不利な存在」からも奪う。環境から奪い、未来から奪う。
したがって、この社会はたったの1代で終わってしまうのだ。
……という事を皆が予知する。
なので、みんな、ある程度は協調するようになるんじゃないかな。
ここまで書いたような抜け駆け野郎による収奪最大化モデルだと、世界がすぐに滅んでしまう。
つまり、例えば、トッププレイヤーの中に「人類最後の一人になるやつ」がどうしても出てくる。もしかしたらトッププレイヤーの中に、赤ちゃんやペットがいる人もいるかもしれない。
なので、結局みんな、協調を選ぶ。
あれ? やっぱりみんなが協調する最高の社会になるのかもしれないね!!
この世はゼロサムではない。非ゼロサムなのだ。
……本当に?
〇選ばれた民
恐らく、トッププレイヤーと、人類存続に必要な人員は協調しあうだろう。しかしほとんどの人間が奪われることに変わりはないような気がする。
人類滅亡は避けたい。なので「なるべく長く収奪できるモデル」が最適になるのではないだろうか。予知世界のSDGsですね。
最初にみんなにノーダメージで「裏切り」を選ばれる人間が一瞬で脱落するのは変わらないと思う。
その後、残ったミドルプレイヤーが”人生が嫌にならない程度に”トッププレイヤーに奪われ続ける世界”になるような気がする。
この世界の場合、あらゆる「裏切り」が予見されるので、「裏切り」は「負けない相手からの収奪」としてしか機能しない。なので、中途半端な協調(弱者の団結)に意味がなくなってしまうという気がする。現実には、もっと、弱者の連帯には意味があるはずだと思いたい。というか信じている。
うーん、なんだか悲しい結果になってしまった
映画の中でゼロサムと非ゼロサムが対比されているくらいだから、映画の中の世界ではみんなが協調を選ぶように想定されているのかもしれない。実際、「力」というのは結構多様性があるはずで、『与える力』に優れている人間というのは現にいますからね。そういう人がたくさん居れば、奪い合いのゲームにならずに済むのかもしれない。
あなたの知ってる人の中にも「与えるタイプ」と「奪うタイプ」がいると思います。奪うタイプはなるべく遠ざけましょうね。あなた自身が裏切りタイプなのであれば、僕の人生には関わらないようにしてくださいね。嫌いなので。
まあ、僕自身もある程度は奪う側なんですけども。与えられるように頑張ります。
あとは映画とあんまり関係ないオマケ。
〇時間軸に横たわるヘプタボット
3次元は一般に「高さ」と「幅」と「奥行」の3つの軸で構成される空間のことです。
対して『4次元』という時、「高さ」「幅」「奥行」に加えて「時間」を加えることがある。
『メッセージ』の世界では、未来が決まっているようなので、宇宙はすでに、過去から未来までが決まった形として4次元の時空間として既に存在しているのだろう。
我々のような順次思考の人類は、時間軸を過去から未来にかけて常に移動していることになる。縦や横、前後には行き来ができる。
では作中の宇宙人はというと、時間に横たわっているわけだ。「3000年後」という未来も、宇宙人にとっては「3000km西」という感覚だろう。
「y=3」のグラフはxの値に関係なく、y=3の高さにすーっと直線を引くわけだが、そんな感じで存在していることになる。長さは有限だと思われるが。長い直線が、縦や横、前後に行き来ができる。
〇方向軸と時間を入れ替える。
そういう宇宙人がいるっていうことは、方向軸を我々にとっての「時間」として生きている宇宙人もどっかにいるのかもしれない。
つまり、低位置から高位置に向かって常に移動しており、横や前後や過去未来が行き来できるような。
(宇宙の中で低い・高いというのもナンセンスなんでしょうけど)
もしそんな宇宙人がいた場合、どうやってコミュニケーションをとるのだろうか。
低位置→高位置だと分かりにくいので、沖縄で生まれて北海道まで移動して死ぬ宇宙人としよう。こいつはある意味で日本人ということになるね。でも、まあ宇宙人と表記しよう。
この宇宙人は沖縄で生まれ、北海道で死ぬ。
我々に観測できるのは、宇宙人の時間軸方向の移動が、我々の時間軸と交差する時だけだ。
つまり、我々がうまく北海道方面へ徐々に移動し、なおかつ宇宙人がうまく、我々の時間に合わせて未来方向へ時間軸移動をし続けてくれれば継続的に出会う事ができる。
肝心のコミュニケーションだが、、、ここまで考えてもうギブアップ。
〇時間軸を方向軸に入れ替えたときの音とか光
この宇宙人、音声は伝わるのかな? 発した時間と届く時間にタイムラグがあるので、宇宙人はちょっと未来の方向に移動して聞きに行くのかな。
方向軸と時間軸を入れ替えたときに、波は、波の形をしているのでしょうか。していても不思議ではないがぜんぜん分からん。
波は遠方ほど減衰するし、時間が経つほど減衰する。なので、軸を入れ替えても、いずれにせよ減衰はするのでしょう。こういったなんらかの共通点はあるんでしょうけど。。。波っていったい何なんやったっけ? なぜ僕の耳は聞こえているのだろう。わからなくなってきた。
文字のような視覚情報は光を利用するわけですが、光の性質なんてもっと分からない。なんで自分の目が見えてるのかが不思議すぎて、ふつうに生きているのが怖くなってきた。
もう辞めよう。誰か教えてください。もっと賢くなりたい。僕にもSFが書けるかもと思ったのにな。
まあ、僕が思いつくくらいの事ですから、もしかしたらもう既に誰かがやってるのかもですけど。もしそういう作品があったら教えてください。
〇終わり
なんだかんだでメッセージは最高に面白かったです。
あんまりSF映画は見てこなかったんですけど、面白いSFはこんなにもいろいろ考えさせられるんですね!
ながながと書きましたが、考えるのが楽しすぎて最高でした!
以下の有料部分には、僕の好きな名言しか書いていません。
お金が余っている人がいたらご支援がてら買っていただけると嬉しいです。そうでもない方はご自身や大切な人のために使ってください。
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