受験
高校を卒業して2年が経っていた。
日中は駅ビルの中の本屋でバイトをし、バイトが終わると名画座を梯子して映画を見ていた。
週に1回ほどはバンドの練習にスタジオに通った。バンドは彼方此方に呼ばれて演奏した。元はボブディランのコピーバンドだったがリーダーのオリジナルを演奏するようになっていた。
そんな夏のある日、いつものように昼頃起きて新聞を見ると小さな記事が目に留まった。
哲学者の森有正氏がフランスから帰国し、来年から国際基督教大学で教鞭を採るというものだった。
氏の本は読んでいたので、ぜひ教えてもらいたいと思うようになった。
受験までは6か月しか残っていない。
その日から僕は受験生になった。
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