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Photo by
inagakijunya
わたしの日記 「またおいで」
あの子の日記 特別編
きらきら輝く思い出は、美しいままでしまっておきたい。
天国に行った愛おしい彼女と過ごした時間のことも、きっともう会うことはない彼を想った長い月日のことも、ぼやけて消えた記憶がたくさんあるなかで、心がずっと覚えている。
もしも、しゅんと弱った夜に淡く思い出せるものがなくなってしまったら、今のわたしはどうなるんだろう。
繋ぎとめていた過去のみんなを切り離してしまえば、うしろを振り返らずに歩けるようになるのかな。
大切な人からもらった手紙や贈りもの、懐かしい写真を捨てるときには、きっと同じ時を共有した事実も一緒に消えてしまう。
生きた時間の一部を失うなんて寂しいから、ほんの少し温かさを残したような愛を手元に残すのと引きかえに、切なく濡れる夜と灰色に濁る朝をむかえる毎日をゆるした。
過去のきらめきが優しく押し寄せたって「またおいで」と言ってしずかに送り出すだけ。そんなふうにして生きている。
いつも読んでくれてありがとう。本日の主人公はもりみでお送りしました。
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