読書記録85 2024年11月の本まとめ
12月に入り今年もあと一月になりました。爆速で過ぎていく2024年。今までで一番早く感じます。
早速読んだ本を紹介します!
1.『怠惰の美徳』(2018)梅崎春生
知人が「60年前の森見登美彦」といって紹介してくれたので読んだ。が、第二次世界大戦や当時の文壇の様子などテーマが切実で、森見登美彦ののほほんとした空気感とは違うのではないかと思った。布団から出たくないという欲求は同じなのだが、布団にくるまりながら考えていることはもっと切実な感じがした。ゆえに胸にくるものがある。
2.『ここはすべての夜明けまえ』(2024)間宮改衣
読み始めたら一気読みしてしまった。名久井さんの装丁が可愛らしい。内容はうって変わって衝撃的というか気持ち悪くなる部分もあった。SF小説でありながら、現代の家族の歪みをテーマにしているので、社会問題を扱う本と同じような重さがある。ひらがなだらけの文体は『アルジャーノンに花束を』を思わせるが、空気感が全然違う。最後の方は『地球の果ての温室で』のような雰囲気がある。上記2つの本+森博嗣のWシリーズが好きな人は多分面白く読めると思う。
3.『本に読まれて』(1998)須賀敦子
この本を何で知ったか思い出せないが、読みたい本リストにずっといた。イタリアに旅行をするのでイタリア関連の本を読もうと思い図書館で借りた。イタリア人作家の本やその作家にまつわる思い出も然り、色々な国の本の感想も書いてあり自分では見つけられない本に出会える。毎月自分で書いていて、本の感想を面白くするのは難しいと感じているが、ぐんぐん読ませるのですごいなとひたすら感心した。
4.『物語 イタリアの歴史II』(2004)藤沢道郎
大学受験で世界史を選択せず、全く何の下地もない状態で読んだが、物語としてとても面白かった。ローマのカステル・サンタンジェロを中心に1世紀から16世紀まで代表的な出来事を短編で読めるので、時代がどんどん飛んでいくが、雰囲気を掴むには良かった。
5.『無人島のふたり』(2024)山本文緒
2021年に亡くなった山本文緒の最後の日々の日記。本好きの知り合いにおすすめしてもらったのだが、今の家族の状況とリンクしていて「なぜこのタイミングで出会えたのだろう」と不思議に感じた。
本自体は薄くて2時間もあれば読めてしまうのだが、何度も泣きそうになった。余命を宣告されて、充実した人生だから余生を穏やかに過ごそうとは思えず、「そんな簡単に割り切れるかボケ!」と思うのは当事者にならないと分からないけど、きっとそうなんだろうと想像したりした。闘病記ではあるけれど、自分が辛いとかなんでこんな運命にとか押し付けはなくて、この日記を読む人のためを思って綴られているなと本全体を通して感じた。
6.『聖なる怠け者の冒険【挿絵集】』(2013)フジモトマサル,森見登美彦
京都に行く数日前にたまたま図書館の棚で見つけて「運命!なむなむ!」と思った。この新聞連載で森見登美彦がバタンキューしたかと思うと感慨深い。フジモトマサルと森見登美彦のコラボレーションはなんて贅沢。連載時の思い出などが絵に一言付け加えられていて、ほっこりする。
7.『穴あきエフの初恋祭り』(2018)多和田葉子
不思議な短編集だった。特に「文通」が面白かった。謎の近未来感があり、とても不思議。不思議しか感想に書いてない。ボトっと突然尻切れトンボのように終わってしまうので、迷子になる読後感が好きな人にはおすすめ。
8.『献灯使』(2014)多和田葉子
こんな日本の未来があるのかもしれないかと思うとゾッとする。大抵の未来想像SF小説は「こんな未来もいいかも」とちょっとした希望を潜ませてくるのだが、この本の描く日本の未来はとても冷たい。東日本大震災が起こって、日本の未来に何も期待していない作者の考え方が投影されているようで、何だか寂しい。
9.『ダヤンの絵描き旅 イタリア』(2015)池田あきこ
ほんわかした絵から南イタリアののんびりした空気か伝わってくる。春休みにイタリアに行こうと思っているが主に行くのは北イタリアなので、南イタリアをメインに描いたこの本を読んで、「南もいいなあ」と思った。とにかく料理が美味しそう。
10.『赤と青のガウン』(2024)彬子女王
オックスフォードの留学記で、とても読みやすかった。ちょうど修士論文が佳境を迎えているので、英国で博士号までとった女王の体験記は背中を押された気分になる。完璧主義で心配性なところに僭越ながら共感し、「やっぱり大変だけど、その中で楽しみも見出せるからやっていけるんだよな」と改めて思った。
Audibleで聴いた本
11.『休養学』(2024)片野 秀樹
土曜日に手帳を開いて、次の1週間どれくらい体力が必要そうか考えて休もうというアドバイスはすぐ取り入れることができそう。休むとはただベッドでぼーっとすることだけでなく、何種類もあることが知れたのはよかった。人と喋ることや運動することも休養になるということは、「同じ気分でずっといない」ことが重要なのではないかと思う。「〇〇しすぎ」は悪である。
12.『愛がなんだ』(2003)角田 光代
マモちゃんという男性に全身全霊なテルコが主人公。誰かにおすすめされた本(映画)でいつか読もう(観よう)と思っていた。テルコのマモちゃん一色の生活にギョッとするものの、「絶対ありえない」と全て突き放すことはできなかった。一途すぎてこんな状況になることもあるかも知れないなと恐ろしくなりながら楽しく読んだ。
13.『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(2024)三宅 香帆
「全身全霊で仕事100%はやめよう、半身で働こう」という主張にとても共感したが、「ではどうしたらそういう仕事の仕方にできるのか?」が難しいと思った。会社に入ってしまえば、その空気感や慣習に従わざるを得ないのではないかと思う。静かな抵抗を進めることはできるのだろうか。
かしこ