旅行ガイドの仕事はなんだろう
109.旅行ガイドの仕事
私は今回の世界一周旅行で「ガイドの仕事ってなんだろう?」としみじみ考えた。クスコの中澤さん、マチュピチュのビビさん、インドのラマナンドさん、そしてカンボジアのMさん。体調がよければ殆どのことは笑い飛ばす私だが、さすがにカンボジアの3日間はエネルギーレベルがいつもの5分の1ぐらいのところで会話が噛み合わなくてダウンした。
「自分がプライベートツアーの客なのだから、もっと早くに希望を明確に伝えればよかったじゃないか。」という人もいるかも知れない。しかし、心細い外国で、体調が壊れて正常な判断力が無くなっている時に、ガイドと運転手と私という3人だけの車内空間で、いやあな雰囲気を自分から作り出すのも悲しいし怖いものだ。そもそも日本語がちゃんと通じていない、…というより人間同士の感情のキャッチボールが全然できていないことが感じ取れたので、もうなんとかやりすごして無事に日本に帰ろうとだけ思っていた。
そしてカンボジアの空港で別れる時には、中澤さん・ビビさん・ラマナンドさんに手渡したのと同じような金額(小林さんに予め教わっていたそれぞれの国に合った金額)のチップを「お世話になりました」という言葉とともにMさんと運転手に手渡した。
チップを渡して「ありがとうございます。」を言わなかったのは全ての中でMさんだけで、これはトドメのビックリになった。受け取りながら「はあ、そうですか。」という答えだった。
結局、このMさんというツアーガイドは「教育が施されていなかった」のだと思う。Mさんの一連の言動・私とのやりとりから察するに、顧客への配慮をするよりも、上司の日本人Qさんが下した命令を全て遂行することの方が優先的になっているのだろう。また、自分が暗記したことを観光地の各場所で日本語で喋りさえすれば、ガイドの仕事が終わっていると思っているようだった。
遺跡内を案内するときも、「ここに立つとよく見えるんです。」「ここが宇宙の中心と言われる場所になります。」と、Mさんが1分間そこに立って暗記した日本語を一気にまくしたて、ようやく私がそこに3秒立つ、すると「じゃ、次いきます。」と歩き出すというリズム。あのガイドでは、顧客は彼女のお尻ばかり見て一日が終わってしまう。私はバルセロナもウィーンもドブロブニクもベニスもローマも、ひとりで調べて見て歩いて、「しばらくこの景色を眺めていたいな。」と思ったら納得するまで佇む、という日々の後にこれだったので、よけいに抵抗を感じたのだと思う。
現地の旅行ガイドには究極の顧客目線が必要だ。日本語能力のレベル云々より先に「わざわざ私の国に来てくれたこの外国人をなんとか喜ばせてあげたい!」という気持ちがない人は、ガイドという職業を選んではいけないだろう。
「アンコール・パス」3日券62ドル。100箇所以上あるアンコールの遺跡に入場できるチケットだ。3日間で100箇所回るのはちょっと不可能だから、アンコール・ワットとアンコール・トムを中心に計画を組み天候を見ながら臨機応変にアレンジするのがいいと思う。
アンコールパスの売り場は、ホテルSOKHAのすぐ近くにある。窓口で顔写真を撮って購入する。最初の遺跡の入場時に、道に立っている係員(どの遺跡も簡単な木製バー程度のものしか入口はない。その近くにうろうろ立っているのが係員)が日付部分に穴をパチンと開けてくれて利用はスタートする。各遺跡のそれぞれのエリアの検札所では必ずパスを提示する。アンコール・パスを持たずに遺跡に入っているのが見つかったら、罰金100~300ドルを支払わなければならない。
回る遺跡を事前に選んできちんと勉強してくれば、自分でパスを購入して、変な日本語を喋るガイドを雇うことなく、ガイドブックを読みながら自力で、全ての遺跡を回ることも可能である。ただし、シェムリアップでは公共の路線バス等がないから、移動手段として、タクシーか、トゥクトゥクか、電動自転車を借りるか…を考えなければならない。欧米人は自転車で遺跡巡りしている人が多かった。アンコールパスを入れるためのケースは百均で購入するなど持参したほうがいい。雨具の準備も必須だ。