カンボジアの遺跡群を訪れる前に
106 カンボジアの遺跡群を訪れるには
アンコール・トム(王都・大きい)アンコール・ワット(王都の・寺)どちらも現在、寺院の跡である石の塊しか見られない。それで宮殿とか住居とか街はどこにあったの?と不思議に思う。実は、アンコール王朝・クメール王朝の栄えた12世紀頃は、寺は石造、住居は木造だったので、熱帯雨林の中800年以上を経て木造部分は朽ち果て現存していないのだ。また当時のことを書き記したであろう媒体は紙ではなく植物の葉を原料にしたものだったとのことで記録物がこれまた残っておらず、文明の詳細は謎のまま今に至っている。
石の彫刻の素晴らしさを見学するのがアンコール遺跡群の重要ポイントだが、どの遺跡も似ているので、写真を早めに整理しないとどこの何を見たのかわからなくなってしまう。なお、建造された12世紀当時はもっと色があったらしい。石の彫刻は表面を磨いた上に赤い漆を塗り、その上にところどころ金で装飾されていた形跡があるとのこと。この巨大建造物が漆の赤と金で彩色されていたら光輝いて綺麗だっただろうな
遺跡は100箇所以上に点在する。
①アンコール・ワット(参道歩き、第1~第3回廊の壁画)
②アンコール・トム(バイヨン寺院、バプーオン寺院、空中参道、王宮跡地、ピミアナカス、プリアピトゥ、プリアパリライ、クリアン、プラサットプルスラット、象のテラス、ライ王のテラス)
③タプロム 遺跡を巨木が数百年かけてくるみこむように生育している驚異の姿。
④プリア・カン 2階建ての古代図書館が珍しい。
⑤ニャックポアン 絡み合う2匹の蛇と中央の丸い池。
⑥プラサット・クラヴァン ヒンドゥーのヴィシュヌ神、ラクシュミー等の彫刻。
⑦スラスラン クメールの王様が沐浴した池。
⑧トマノン 12世紀に造られた当時の姿のヒンドゥー寺院
⑨イースト・メボン かつては池に浮かぶ寺院だった。ヒンドゥーの彫刻が見事。
⑩チャウサイテボーダ 空中参道がある。
⑪プノン・バケン ⑫バクセイチャムクロン ⑬タケウ
⑭バンテアイ・クディ ⑮プラサット・バッチュム ⑯プレ・ループ
⑰バンテアイ・サムレ ⑱タソム ⑲クロルコー
⑳チャウスレイヴィヴォル
これらはアンコールワット・アンコールトムの近所にある遺跡の名前だ。
郊外に足を伸ばすと、「東洋のモナリザ」と呼ばれる美しいレリーフがある「バンテアイ・スレイ」や、「七段ピラミッド」のある「コー・ケー」などまだまだ魅力的な遺跡があって、密林古代遺跡ファンなら何ヶ月も滞在して見て回りたくなるだろう。
しかし観光客誰もが考古学に傾倒しているわけではない。カンボジアの遺跡群を観光した感想では「素晴らしかったよ感動した。」というものと「ゴロゴロ石ばかりで意味がわからなかった。」というものとはっきり分かれる。特に上記の⑲クロルコー⑳チャウスレイヴィヴォルあたりになると、修復は進まず打ち棄てられた石が無残に置かれているだけなのだから、観光で訪問してロマンチックな気分になれるものではないだろう。
崩れ落ちた石ぐみがそのまま放置されている。
数百年を経て、遺跡は巨木の根に呑み込まれてしまっている。
カンボジアの遺跡群を訪問する前には、どんなドラマがあったのか予習して行ったほうがいいと思う。三島由紀夫の「ライ王のテラス」を舞台で観るなどするのもいいかも知れない。ゴロゴロした石たちを前にして、どこまで自分の中からロマンに満ちた感情が引き出せるのかが、日本からの渡航費が生きるか無駄になるかの境目だろう。
そしてお腹の調子を万全にしていくのは最低限の準備だ…。