世界各国の運転免許事情を考える
97 .インドの運転 日本の免許
オートリキシャは定員何人なんだろうか?時には10人ぐらい大人も子供も詰め込まれている。
路線バスはこれが本当に動くのかというようなボコボコの車体が凄いスピードで走り抜けていく。インドの運転は日本とは別世界だ。
【ビデオ】デリー市内 6車線または7車線もしくは4車線
【ビデオ】デリー 正面からくる車 一般的な運転作法
今回の世界旅行あちこちで日本のことを聞かれた際「日本ではお年寄りの運転ミスで若い人が沢山亡くなって社会問題になっている」話をした。「あなたの国では85歳の人は運転する?」と尋ねると、ペルーでもバルセロナでもローマでも「しない!絶対にしないよ!」という答えだった。「じゃあ85歳の人はどうやって移動しているの?」と聞くと「…85歳。みんな死んでるよ。」そうか。なるほど。
運転免許を取得するための費用についても各国で聞いてみた。以前行ったマルタでは5万円ぐらいだと聞いた。ベトナムでは3万円ぐらいだと聞いた。「ラマナンドさん、インドではどう?」「以前は4,000円ぐらいだったけど今は1万円ぐらいです。」私が、日本では免許を取るのに38万円ぐらいかかると言うとラマナンドさんは変な顔をして「モリさん、数字間違えてますよ。それでは車が買えるよ。」「いや、本当にそうなんだって。」「何の為にそんなお金払いますか?おかしいですねそれは。」「…ほんとですね。」「じゃあ日本人は運転が特別に上手いですね。」「うーん…。」
日本の運転が陸上競技のトラックを走る短距離走だとすると、インドの運転はみんながお団子になって位置をどんどん入れ替えながら走る競輪みたいだ。そして車の間を平気で横断していく歩行者たちがいる。日本人のドライバーが突然デリーでハンドルを握ったらいつまでも前に進めないだろう。それどころか、おそらく初日に2~3人轢いてしまうだろう。
以前、ベトナムのホーチミン市内で、向こう側のバス停に行きたいと思い、車やバイクがぎっしりビュンビュン走っている片側3車線合計6車線の道路を横断したことがある。日本では考えられない危険行為だが、現地の人たちは当たり前のようにやっているし(杖をついたお婆さんも横断していた)、私はその日ひとりぼっちで行動していて、大雨が降り出しそうになっていて、とにかく早くホテルに帰りたかったのでトライしてみたのだ。そうしたら向こう岸に到達する直前に、バイクに轢かれそうになった。「オゥオゥ!ニャニャニャ!」と、バイクの運転手は怒鳴りながら、ぶつかる直前に私の横をブウンと俊敏によけて走り去った。
ようやくバス停について肩で息をしていたら、日本人の高齢男性(現地で長年勤務している)に話し掛けられた。「あんた旅行中?見てたけどさっきは危なかったね」「はい。」「こっちじゃ道を渡るときは犬みたいにならなきゃダメだよ。」「?」「あんた猫みたいに渡ってるんだもん。こっちでも猫は轢かれるんだよ。犬は轢かれない。」
要するに、犬は「と・と・と・と」と同じリズムで坦々と横断するけれど猫は「ぴゅっ」と歩き出して危険を感じるとピタッと止まったり引き返したりするという意味だとのこと。なるほど、垂直の角度からやって来る車にしたら同じリズムで渡っている歩行者のほうがよけやすいのだろう。
私は日本の免許の38万円は、あれも駄目、これも禁止、をひとつひとつ身につけてインドのような運転をしないお行儀よいドライバーに仕立てるための費用だと思った。そして公安利権がある。免許更新の時に渡される冊子の印刷代だけでも凄い利権だ。世界の常識からしたらとんでもなく高額の日本の免許だからこそ、高齢になって返納するときにためらわれてしまうという一面もあると思う。近い将来、自動運転車が実用化されると、いま運転免許利権を甘受している人たちはどうするんだろう。