アンコールトムはかなり面白い
105.アンコール・トム
2日目の朝8:30、Mさんがホテルのロビーで待っていた。「Mさん、私は今日も、とても具合が悪いです。私はゆうべ10回トイレに行きました。部屋のトイレットペーパーは無くなってしまいました。」と伝えた。「そうですか。ではこれからアンコールトムの観光に行きます。」この人はもしかしたら実は日本語が通じていないのかな?
アンコールトム到着。「Mさん、私はちょっと身体が心配です。なるべく中の見学を簡単にしてください。」しかし基本的にカンボジアの遺跡は中に入ったら最後、1時間以上炎天下を歩くしかなく、トイレはどこにも無いのである。この日は辛い一日になった。元気なら笑い飛ばせることも身体が健康じゃないとマイナス感情ばかりになってしまう。Mさんが一方的にまくし立てる日本語の解説。私は一生懸命反芻して、彼女が何を言ってるのか理解しようと最初は試みていたが疲れてきた。変な発音の日本語を聞き続けなければいけないのが辛い。お腹が痛い。
【ビデオ】ジャヤヴァルマン7世の顔が54個
ジャヤヴァルマン7世は、12世紀末クメール王朝で初の仏教徒の国王である。軍人であり政治家としての能力も人格も賞賛され美貌の持ち主だったが、ライ病にかかって亡くなってしまったという。彼の時代にはクメール王国の領土はインドシナ半島の殆どに拡大していた。アンコール・トムはジャヤヴァルマン7世の治世に完成した仏教遺跡だ。
バイヨン寺院東門のゾウ乗り場
アンコール・トム中央のバイヨン寺院の石造りの壁は、びっしりと壁画が彫刻されていて、そのどれもが強烈なメッセージを送っている。クメール(カンボジア)とチャンパ(ベトナム)との戦争についての絵巻や、宮廷や庶民の日常生活の描写もある。
宴会のようす
調理のようす
船を漕いでいてうっかり落ちる人
水に落ちてワニに噛みつかれる人
水中で大魚が小魚を食べる弱肉強食の図
その脇にはライオンに噛みつかれる人間
これらの図案を考えて彫ったのはどういう立場の人間だったのだろう。権力者から強制されて作画したものとは思えない。ユーモアに溢れ、魚は本当にそこで泳いでいるようで、戦への出発シーンはドラの音と兵士の足音が聞こえてくるようで、庶民の生活を描いたものは笑い声が聞こえてくるようで、生き生きとしている。
中国人の男がクメールの女を口説いている
クメール軍がチャンパ軍に一撃を与える
出産のようす
闘鶏のようす
バプーオン(隠し子の寺院)の空中参道で結婚式の写真を前撮りしていた花嫁と花婿。伝統芸能アブサラダンスを幼い頃から学ぶカンボジアの女性たちは指先の動きがとても優雅だ。
ランチは洋食のコースだった。スープとか果物とか消化できそうなものだけ恐る恐る口にしてみる。Mさんが「お姉さんメイン料理は牛肉のステーキです。」と言う。絶対に食べられないと思った。「Mさん、このあと私はいったんホテルに行くんですよね。それではメインを焼きそばに変更してもらってください。そして夕食用に部屋に持ち帰ろうと思います。」
ホテルに戻り、13:30から15:00まで昼寝タイム。これは予めスケジュールに組まれていたものである。「カンボジア観光では昼寝は普通のことです。」と言われていた。そんなものかな。休みたいのは確かだが、一旦眠ってしまったら起きられないかもしれないと思い、目覚ましを14:45にセットしてベッドに横たわった。今日の夕方には最も重要なアンコールワット見学の予定が入っている。
1時間少し眠って、確かに疲れは取れたのだが、いつもは昼寝などしたこともないので調子がますます狂ってしまった。この中途半端な睡眠の影響で、夜になって一睡もできなくなってしまったのだ。
昼寝を強制するのではなく、「炎天下を歩く時間ではないので、部屋で休む・冷房の効いたショッピングセンターや博物館に行く・ホテルのプール&大浴場で汗を流す、などのオプションがあります。」とすれば良いと思った。