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アンコールワット
107.アンコールワット
「絶対に蚊に刺されないでください。」(デング熱が流行しているから:from外務省)とのことで、ビデオの中で私が着ている長袖のトレーナーはエアインディアのビジネスクラスで貰った寝巻きだ。
【ビデオ】アンコールワットの第3回廊から
アンコールワットは、12世紀前半に、アンコール王朝のスーリヤヴァルマン2世が30年かけて作った寺院だ。ジャングルの中に突然、南北1,300m東西1,500mの人工的に造られた四角いエリアが現れる。水を張った堀に厳重に囲まれた中に、アンコールワットは浮かんでいるかのように建っている。
ガイドのMさんの説明によると、堀は地球の海、その中は陸地、そしてアンコールワットのタケノコ状の尖塔群はヒマラヤ山脈を表すとのこと。
アンコール・トムのほうは仏教遺跡だが、アンコールワットは最初ヒンドゥー寺院として建立された。ただしその後、為政者の宗教が仏教やイスラム教その他変わるたびに、内部の装飾は少しずつ作り変えられていった。
女神たち一人ひとり顔が違う。
第3回廊から中央尖塔を見上げる
ゾウの門から見たアンコールワット
カンボジアの内戦時、石造りの遺跡群は恰好の作戦基地だった。銃弾の跡が残る。
【ビデオ】遺跡の急な石の階段。登りはともかく降りるのが危険。
【ビデオ】第3回廊から降りるための木製の階段それでも急でスリリングだ。
12世紀の遺跡群を見てひとつ気が付いたことがある。「綱引き」がクメール文化でとても重要なものだったという事実だ。アンコールワット東面壁画の「乳海攪拌」はヒンドゥー教の神話における「天地創造」だが、壁面の左右50mにわたって綱引きの様子が彫刻されている。
神話の中で綱引きの綱は大蛇だとのこと。左から引っ張るのは数十人の阿修羅たち、右からも数十人の神様たち(神様の人数のほうがちょっと少ないらしい)が、大蛇の身体を引っ張り合っている。大蛇の身体は中央で巨岩マンダラ山に数回巻き付けられている。マンダラ山は海底部分で巨大な亀の上に乗っている。そして山の上空ではヴィシュヌ神が指揮を取っている。神様たちの軍の列の最後には、猿の将軍ハヌマーンがいる。この猿の助太刀のおかげで神様軍は阿修羅軍との綱引きに勝てたとのこと。綱引きは神事なのだ。
綱引きの彫刻はアンコールトムの入口の橋でも見られた。石像は建設当時は綱引きしている姿だったが、欄干であったはずの綱の部分が崩壊している。
ここでは猿は神様。沢山の猿の家族が群れになって放し飼いされている。地元の学生が猿の調査に来ていた。
2日目の夜は部屋でぼそぼそと昼の焼きそばを食べた。横になってもいつまでたっても眠くならない。寝られないのなら他のことを考えようと思った。
夕方Mさんに「サンライズ時間のアンコールワットは見られるものですか?」と聞いたら「お姉さん見たいですか?追加申込しますか?」と言っていた。私はサンライズは見たいけれど、もう変な日本語を聞き続けるのもイヤだし、私ひとりのためにあの大きな黄色いバスを明け方手配してもらったら一体何十ドル取られるのだろうと思い断念していた。
ホテルのフロントに行って「サンライズのアンコールワットに行きたいので午前4時半にホテル契約のトゥクトゥクを玄関に手配してください」とお願いした。11ドルで往復してくれて現地で待っていてくれてホテルまで戻るとのこと。
結局一睡もしないまま、暗いうちに出掛けた。朝日に染まるアンコールワットは、美しかった。
【ビデオ】アンコールワット 聖池で夜明けを待つ。
108.どうしたらSOSだと伝わるのか
サンライズを見てホテルに戻ったら7:20だった。最終日の予定表をよく見ると、遺跡遺跡遺跡の連続である。奈良観光に行って、石舞台古墳・石舞台古墳・石舞台古墳・・・と続く感じだ。相変わらずお腹は痛いし生活時間軸も狂ってしまっている。よく考えたら私はひとり旅だったんだ。印刷された予定表は仕事のノルマではない。もう身体に鞭打って遺跡を歩くのはイヤだ。
寝ようと決めた。現地旅行代理店へ電話をかけるためホテルフロントまで降りて来た。お願いして掛けてもらったが、旅行代理店オフィスの電話には誰も出なかった。それでフロントに「9:00にガイドのMという女性がロビーに来るので、1120号室のモリアヤコは、とても病気なので昼まで眠る。すべての遺跡見学はキャンセルしてほしい。昼の12時にお迎えに再度きてほしいと伝えてください。」と英語で伝えて、部屋に戻って11時半まで寝た。
ホテルのチェックアウトを済ませ、12時に黄色いバスに乗った。
Mさんは早速「はい、それではお姉さんいまからランチ行きますね。きょうはクメール料理のフルコースです。」と言う。私は、この人は本当の馬鹿なんじゃないかと思った。食べられるわけないじゃないか。もう会話をする元気すら残っていないので言われるままクメール料理のフルコースのランチに向かった。
クメール料理はこんな感じです。
お店の人に申し訳ないので、全部の皿にひと口ずつ箸をつける真似をして、I think this restaurant is very good. The taste is so nice. But yesterday and today I have been sick in bed, so I couldn't eat too much. I am so sorry. But I will tell my friends about this restaurant in Japan. Would you give me the card of yours? などと言って何とか雰囲気よく出てきた。
バスに乗った。「はいお姉さん、次はペケペケ遺跡です。ここはだいたい30分歩きます。」 ・・・・。
この「お姉さん」というのが無性に腹が立ってきた。だってこっちはMさん、と名前で呼んでるのになんでお姉さんなのよ。「もう遺跡はいいです!ショッピングセンターでお土産買います。屋根のあるお店で1時間フリータイムにしてください。それからどこか博物館に行ってください。そこでカンボジアのことを1時間ぐらい勉強したいです。そのあと私は飛行機に長い時間乗って日本に帰るのでシャワーをあびたいです。さっきのSOKHAでシャワー浴びられますか?」「お姉さん、さっきもうホテルには戻らないと言ってしまったのでシャワー無理です」「それならどこか他で浴びられますか?」「お姉さんスパ申し込みしますか?」「マッサージは要らないです!!」というやりとりのあと、ようやく電話口に、旅行代理店経営者の日本人Qさんが登場した。
日本で大きな地震があったというテレビのニュース。