また会うための音楽

彼はいつだって、「また会える」と言ってくれる。

HYBRID PHONON 2566 追加公演。

叫ぶ

機械音声がそう告げる。うぉああああ!!!!叫んだ。僕じゃない。彼が。第一声がシャウトというノリは本公演から続いていた。1曲目はBIIIG EYE。

この「叫ぶ。うぉああああ!!!」は、この曲のオリジナル「Screaming うぉああああ!!!!」から。この改変がたまらんのです。

順当に行けば明日の最終公演だけは「叫ばない」。これを見届けるために、また配信用チケットを買うのであった──────

コードはコスタリカ

本公演のセトリを順当に踏襲し、ライブが進んで行く中で、突然ある歌詞に心が揺れた。
「さらばまた会う日まで」
この曲「CODE-COSTARICA」はマイナーで、注目度もそこまで高くはない。油断していたからか、この歌詞にやられた。
漠然と心に抱えていた悲しみや寂しさに大共鳴し、負の感情の津波が起こった。

音源では気がつけなかった、ライブならではの衝撃だった。

「また会う日まで」と、再会を約束してくれる「強く、真っ直ぐな人の優しさ」に、超弱い。
普段現れることの無い、暗い暗い人格に目を向けざるを得なくなる。わけもなく、自分が情けなくなってくる。
「こんな孤独な自分と、また会ってくれるのか、、、、」と、底なのか天井なのかわからない「限界」に達した喜びと悲しみの濁流で、魂が分断された。

またこんど!

彼はほぼ毎日、21時から1時間、Twitterを更新する。もう10年近く続く習慣になる。彼はいつも22時を迎えると、必ず「またこんど!」と言って締めくくる。
普段何とも思っていなかったけれど、彼の「またこんど!」に、いつも救われていたんだと気がついた。
ありがとう、ヒラサワ。

Another Day

最後の曲。爽快感のある、清々しい別れの時。
曲名の「Another Day」は直訳で「別日」といったぐあい。
具体的に別れと再会を示すような詩的表現はないけれど、合言葉を決め、行先を示し、「ちょっと待ってね、今そこまで行くから」と言ってくれる。
不安で寂しい気持ちに応えるのに、こんなにも適したセリフはない。一貫した、強くて真っ直ぐな優しさに、またしても(毎回だが)心打たれてしまった。

歌詞は相変わらず難解で、リスナーが詩世界を解き明かすの不可能。
だからこそ、個人の自由な解釈で、曲は力を宿している。

この力を彼は確信し、再会するために最後の曲に抜擢したんだと思う。
本公演現地では、泣きながら絶叫コールしていた。

最悪のアンコール

Another Dayで感動の曲目を終え、毎度恒例のMCタイム。サポート役の会人を紹介し、アンコールへ━━━━━━━━━━━━━━━━━

「エンディング感の強い曲打線」の4番、「Timelineの終わり」を演奏してくれた。清々しい、晴れ晴れとした気持ちでライブは終了すると思っていた。

「さようなら、それだけです。」

この台詞が聴こえて、ゾッとした。ライブの最初から、ずっと再会を約束し続けていたはずなのに。
ここで突き放された。
「QUIT」。彼が魂を消耗し切っていた頃に誕生した、ソロ作品の中で唯一無二の存在。最も暗く、救いのない、恐ろしい曲。

以前にも、この曲は最後に演奏された事がある。歌唱パートが終わると、ほぼ全ての照明が落とされ、全ての演者が突然退場した。ただ真っ暗な、誰もいない空間で、テスラコイルの演奏が寂しく響き続けた。あの異様な禍々しい光景が、また訪れる。

1人、また1人と舞台から退場していく。全てのスポットライトが消灯し、背面のモニターだけが光り続けていた。気がつくと音楽は綺麗に終わり、泥水で満たされていた心は空っぽになっていた。

目の前の光景を、ただただ受け入れるしか無かった。

危険図書のような扱いを受けてもおかしくない。
それでも、この曲にはやっぱり凄味があって、最後には美しいと思わされてしまう。

こうして、虚無の追加公演1日目を終えたのでした。

オタクの在宅レポート
〜完〜


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