#599 打つ顔をしている
プロ野球SMBC日本シリーズ、阪神タイガース対オリックスバファローズの対戦は、折返しの第4戦を終えて互いに2勝2敗のイーブン、非常に熱い戦いが続いている。
昨日行われた第4戦は、阪神タイガースが9回裏サヨナラで勝利を収めた。僕も試合終盤の中継を見ていて、思わず声に出して応援せずにはいられない展開だった。試合を決めたのは、阪神タイガースの4番・大山悠輔選手のサヨナラヒットだった。
3-3で迎えた9回裏1アウトランナー3塁の好機、2番の中野拓夢選手と3番の森下翔太選手が申告敬遠となり満塁。この場面で打席に入る大山選手はまさに「打つ顔」をしていた。野球素人が何言ってんねん、と思われてしまうかもしれないが、その眼差し、表情、体全体から溢れる気迫、これはもう必ず打つだろうと確信させてくれる雰囲気だった。結果はその通り、前進守備の三遊間を破るレフト前タイムリーヒットでチームはサヨナラ勝ち。劇的な勝利となった。
今年、大山選手がサヨナラの好機で「打つ顔」をしているのを見たのは今回が初めてではない。8月22日に京セラドーム大阪で行われた中日ドラゴンズ戦、このときは10回裏だったが同じように満塁でサヨナラのチャンス、奇しくもスコアは今回と同じように3-3だった。打席に入る大山選手の表情は、まさしく獲物を仕留めんとする虎の表情。そして奇しくも、今回と同じようにレフト前へのヒットでチームはサヨナラ勝ちをした。サヨナラのホームを踏んだのが1番の近本光司選手だったことまで、同じだ。
今シーズンの大山選手は1年間を通して阪神の4番打者を務め、リーグ最多の四球数99個を記録し、最高出塁率のタイトルを獲得した。そのイメージから打つよりも選球眼で塁に出る「つなぐ4番」の印象が強いが、それだけの四球を選べるということは相手バッテリーに難しい勝負をさせているということでもある。際どいところに投げて勝負をしても粘られるし、甘く入れば痛打される。その怖さがあるからこその四球数だろう。実際、ストライクゾーンで勝負するしかない今回のような場面では、キッチリ仕事を果たしている。
メンタルは目に出る、顔に出る。大山選手はこのサヨナラの場面で、自分で決まらないイメージは一切持っていなかったのだろうと思う。決めなければ、という焦りでもなく、自分がここで決めることを確固たるイメージとして持って確信している、そしてそれを実現する者の顔をしていたように思う。結果を出す者は、良い顔をしているのだ。
(了)
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