#549 上手くいく理由について考えた方がいい時、考えない方がいい時
9月12日火曜日、栗東運動公園での練習会における、中学生女子とのやり取りから。現在中学1年生のこの子は、中学生になってからソフトテニスをスタートして、夏頃からよく練習会に来てくれている。まだまだ初級者だが、意欲は高い。
今回の練習は、降雨後の滑りやすいハードコートでの練習だったので、定位置の一本打ちメインで練習を行った。序盤はフォアのストロークで軸を作る練習、中盤から終盤にかけてはバックハンドストロークを打点を確認するところから練習した。その中で、テークバックからスイングに入る際にはヘッドが下がった方がいい、という話になった。
ヘッドが高いところにある状態からスイングしてしまうと、フォア・バック問わずボールをスライス気味に打ってしまうことになり、打球が安定的にコート内に入らなくなってしまう。基本的には、ドライブ回転のかかるボールを打てるようになるのが優先だ。練習に参加している子の中にどうしても上から振り下ろしてしまう子がいたので、そのような話になった。
すると、それを横で聞いていたその子が「え、知らんかった。難しいな」と言った。しかし、彼女はすでに自然にヘッドが下がってドライブ回転気味のボールを打つことができるようになってきている。できているから変に意識する必要はないと伝えたのだが、難しい難しいと繰り返す。これは余計なことを意識させてしまったなと思った。
先日、ここでも紹介した為末大さんの「熟達論」でも、まずは全体の”型”から入り、部分の”観”に入っていき、本質の”心”へと深めていく、ということが述べられていた。現在の彼女の段階としては”型”を身につけるところであり、部分部分の”観”について考えるのはかえって動きをぎこちなくしてしまいかねない。今はまだ、なぜ上手くいっているのかを考える必要がない。
では、いつになったら「なぜ上手くいっているのか」を考えたほうがいいのか。それは、その技術について当たり前のように再現できるところまで身についてからである。”型”が当たり前のように身体に染み付いてから、部分部分についての理解を深めていけば十分だ。
もちろん、”型”を身に付けていく上でボトルネックとなっている部分があれば、その部分的なところについてピンポイントでアドバイスをすることもある。今回の場合でいえば、どうしてもスライスに入ってしまうスイングをしていたもう一人の子、である。伝え方の使い分け、子どもたちの意識の向き方について、今後も気をつけて取り組んでいきたいと思う。
(了)
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